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北西の街 マシュカ 2

 青い屋根の、ヨーロッパ風の建築様式の建物がずらりと並ぶ街並に、あいらんは好奇心を募らせた。


「すごい! なんだか、ヨーロッパに来たみたい!!」


 はしゃぐあいらんの可愛さに、夜叉丸はスクショの手が止められない。

 横向き、後ろ向き、斜め右と、さりげなく位置を変えながらも、あいらん撮影においてのベスト距離を把握している夜叉丸にスケは頭痛がしてくる思いだった。


「ここが天国だったか・・・」

「夜叉丸? はしゃいでるあいらんちゃんはともかく、僕ら、最初に冒険者ギルドに行かないといけないからね?」

「冒険者ギルドなら、多分あの建物だろ?」


 夜叉丸が街の中心に近い、大きめの建物を指す。上の方にある看板には、確かに冒険者ギルドのマークが入っていた。


「うわぁ! ここ、お野菜屋さんですか?」

「あら、可愛いお嬢ちゃんだね。いらっしゃい」

「おいしそうなお野菜ですね!」

「うちのは新鮮な野菜ばっかりだよ」

「お料理とかに使えますか?」

「もちろん! お嬢ちゃん可愛いから、おばさん、買ってくれるならおまけしちゃうよ!」

「じゃあ、このキャベとニンジ、それからタマネと、あ! ホレンソウもください!」


 あいらんが嬉しそうに買い物をしていく。夜叉丸が、無表情であいらんのすぐ側に立った。


「夜叉丸さん? 夜叉丸さんも、お野菜買うんですか?」

「んー? いや、ちょーっと気になる視線があったから。あいらんちゃんは、気にせずに買い物してくれ」


 無表情から一転、爽やかに笑う夜叉丸に、あいらんはこくりと頷き野菜屋のおばちゃんと世間話をして盛り上がる。


「こわ・・・」

「オラ、無闇に近づくんじゃねぇって言われてる気がするべ」


 あいらんの姿を自分の姿で隠しながら、夜叉丸は背後の「気になる視線」の方へとガンを飛ばした。慌てて視線の主たちは物陰に隠れるが、夜叉丸はしっかりとその数と気配を把握している。


「・・・・・後で締めとくか」


 自分に言われた訳ではないのに、ガザンとスケはその言葉に込められた冷徹さに震える。


「スケ。夜叉丸って、かなり怖い人間だべ?」

「いや、僕もこんな夜叉丸は初めてみるから。あいらんちゃんに傾倒してるよね、明らかに」

「明らかにどころか、やばい域だべ。あいらんちゃんに近づこうものなら、人でも魔物でも仕留めそうだべ。オラ、命があったことに心からホッとしてるべ」

「反論できないかも・・・。PKはできないシステムだから、そこは助かってるけど・・・」


 頼むから、あいらんちゃんに近づくプレイヤーが居ませんように、とスケは祈らずにはいられなかった。



※※※


「よし! 確かに依頼達成を確認した。ほれ、報酬だ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 買い物を済ませ、冒険者ギルドにやって来たあいらんたちは、依頼達成の報告をした。達成報酬を三等分すると、5000ユルになった。ユルというのが通貨の単位だ。


「これでまた、お買い物が楽しめます♪」

「あー、ちょーっといいか? お前さんたちに頼みたい依頼があるんだが」

「依頼ですか? どんな依頼ですか?」


 あいらんがカウンターに興味津々で乗り出すと、受付係の男は言葉を濁した。


「ここじゃ、ちょっと話しづらい。ギルドの二階に上がってくれるか。依頼の詳細を話すから」

「どうしましょう?」


 問いかけて来るあいらんの瞳がキラキラ輝いている。


「あいらんちゃん、依頼に興味津々だなぁ。二階に上がろうか」


 こうして、二階に上がったあいらんたちは、そこで驚きの依頼の話を聞くことになったのだった。

お読みくださり、ありがとうございます(^^)。

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