前準備 2
「やった! 来たー!! うわぁ!! 嬉しい!!」
蘭が予約していた、VRゲームの新規アカウント作成のための封書が届いた。メールだと、たまに迷惑メールに入ることもあるため、予約者に必ず届く形での発送は素直にありがたい。
蘭は狂喜乱舞で、早速ネットを立ち上げて、事前準備のための必要情報などを打ち込んでいく。
あいちゃんは、今は寝ているようだ。
それもそうかもしれない。ハムスターは、通常夜行性であり、今はまだ朝の九時なのだから。
蘭はゲーム準備を万端にして、パソコンを閉じた。そろそろ出勤の時間だ。蘭が働いてるのは飲食店のホールのため、出勤時間は大体11時が多かった。
「よし! 今日も一日がんばろう!! あいちゃんのために!!」
そして、蘭は元気いっぱいに家を出ていくのだった。
「ただいまー」
一人暮らしの蘭は、帰ってきても出迎えてくれる人はいない。けれど、出迎えてくれるペットはいる。
「あいちゃーん! ただいま。元気にしてた?」
早速ケージの中に声を掛けると、ガサゴソと巣から出てくるあいちゃん。つぶらな瞳で、餌くれコールのように、ケージの扉にひっついている。
「可愛い! あいちゃんが今日も可愛い! 尊い! あいちゃん最高!! 今日はプロテインゼリーあげるね!」
あいちゃんが可愛い。あいちゃんが生きていてくれる。あいちゃんが、側に居てくれる。
それだけで、蘭は働いて帰ってきた疲れも、吹き飛ぶのだ。
プロテインゼリーを舐め始めたあいちゃんショットを撮りながら、蘭は幸せに浸っていたのだった。
あいちゃんショットをスマホからパソコンにデータ移行しながら、蘭は別のサイトを開いた。
実は、蘭はVRゲームをするのは初めてで、周辺機器もVRゴーグル以外は揃えていなかった。
VRゴーグルを揃えていたのは、可愛いあいちゃんの動画を、迫力ある形で鑑賞できるので、購入していたのだ。どこまでも、あいちゃん大好きな蘭であった。
「ひとまず、周辺機器としては、延長ケーブルだけ要る感じかな」
VRゲームをする場合、寝ながらすることを推奨されている。だが、リビングと寝室を別々にしている蘭は、パソコンから寝室までの距離が遠い。パソコン自体はギリギリ寝室まで運ぶこともできるが、VRゴーグルのコードだけでは、寝ながらプレイができないのだ。そのため、VRゴーグル用の延長ケーブルだけ購入することにした。
着々と準備が整う中、蘭はベッドに入って自分のキャラメイクを妄想しては、笑ってしまう。
(楽しみがあるっていいなぁ)
蘭はゲーム発売日当日がたまたま休みであったことに感謝しつつ、就寝したのだった。
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