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初めての友達

 「冒険者コースですね。受験手数料大銅貨一枚になります」


 金額を提示してくる受付のお姉さん。


 「えっと、、、」


 亜空間から取り出した袋の中を探る。運良く一枚だけ入っていたので取り出す。


 「すみません。こちらは銅貨になります。次の方!どうぞ!」


 受付のお姉さんに返却された銅貨を握りしめて、二日酔いと寝不足で痛む頭を抑えて、列の最後尾まで下がる。


 か、金が……


 「金がねぇぇぇ!!!」

 「金がねぇー」 


 私の魂の叫びとシルフィののんびり声が受験申込者達の喧騒にかき消えていく。


 なぜだ!なぜ金がないんだ!


 私は1ヶ月の豪遊生活を振り返る。


 まず、この街に来た初日はギャンブルで大勝ちして所持金が金貨500枚はあった。


 「よし!高級宿で1番高い部屋に泊まろう!」


 BARのマスターが教えてくれた街の中心部「行政区」に程近い、A級冒険者や大商会の会長などが利用する5階建高級宿泊所「ロイヤル」という所のスイート?を1ヶ月貸し切った。

 

 「ありがとうございます。金貨400枚になります」


 まあ、金貨100枚残るし、いいか。

 躊躇なく1ヶ月分の宿泊費を払った。


 とにかく高級というだけあって外観から違った。

 古代神話に出てくる神殿のような建物に白磁の彫像が水を垂らす噴水とバラ庭園のある中庭、古代のテルマエと類似した大理石の浴場、50畳の部屋ーー

 

 「うおう」

 「おおー気持ちいいねーベッドー」


 聖国の象徴たる聖女を13年やってきたけど野宿か大聖堂の石壁四畳部屋しか経験したことがない私は高級部屋でどう過ごしていいかわからず、とりあえずソファに姿勢よく椅子に腰掛けて過ごす。


 「よし!夜になった!いざ、出陣!」

 「出陣ー」


 高級宿を後にし、昨日と同じポーカー&BAR「スミス」に行き、昨日と同じおっちゃんと酒を飲む。


 「へー!おっちゃん。冒険者なのかー!見えねぇ!」

 「おお!心外だな!見せてやるか?わしの本当の力を……ポーカーで!」

 「ははは!上等じゃん!」


 互いに顔を叩き、真剣顔で席に着く。

 結果は……


 「くそー!ノーペア!」

 「あっはっはっ!フルハウス!」

 「だよなぁ!なんで俺ってノーペアばかりなんだ!」

 「では、金貨10枚貰いまーす!」


 おっちゃんをコテンパンにまかしてやった。

 その後、朝日と共に宿泊所に戻り、ベッドで死んだように眠る。そして、夜になるとBAR「スミス」でポーカーをする。

 金貨5枚は毎日のように勝っていた。


 「えへへへ!お姉さん!!!ーーナイスおっぱい!」


 所持金が金貨300枚以上まで増えホクホクだった。

 しかし、街に来て10日が経った時、リサから請求書が届いた。

 結界魔道具及び学園の壁、修理費合計、金貨1000枚。支払いは3月の頭から1年以内となっていた。

 

 「ーーはは、あははは!!見間違いだな。寝よう」

 「現実逃避ー」


 4日後……


 「返済金を受け取りに来ました」

 

 リサの擬似巨乳秘書が部屋を訪ねてきた。

 二日酔いと眠気による幻だろうと思って、ベッドに戻ろうとした。

 しかし、肩を掴まれる。

 

 まぼろし……


 「返済金!」


 おおう!幻じゃねえわ!


 「えっとーーつけで」

 「飲み屋じゃないので」

 「はははぁーーですよね!冗談です!」


 亜空間から金貨300枚の入った袋を取り出す、その瞬間、手に持った袋を擬似巨乳に全て奪われた。


 「ーー金貨300枚。確かに受け取りました。来月の返済は金貨50枚減ります。それでは」

 「ははは」


 秘書さんは爽やかな笑顔を浮かべて帰っていった。

 秘書さんがいなくなって……


 「それではじゃねぇ!なに爽やかな笑顔浮かべて全部持ってってんだよ!」


 部屋で一人で叫ぶ。


 「残りはーー銀貨3枚」

 「さっそくピンチだー」


 私の座右の銘は「一発逆転」

 こうなったら増やすしかねぇ!

 

 「まあ、なんとかなるっしょ!」


 ーーーー現在


 「なんとかなんなかったぁ!」


 私は頭を抱える。


 「金がねぇぇ!!!」


 そんな私と同じ叫びが隣から聞こえてきた。

 思わずそちらの方に目が動く。


 「え?」

 「へ?」


 風に揺れる緑の長髪、抜群のスタイルに整った顔、そして素晴らしいお胸様!ばんざい!


 そんな美女と視線が重なる。

 目を見た瞬間にわかった。


 あ!同族発見!


 「よかった!間に合った!」


 そんな私たちの後ろに遅れてやってきた様子の太ったメガネ男子が並ぶ。


 見るからに高そうな服と革靴、腕時計ーー


 「ゴクリ……」


 その男子は並んだ瞬間に私と同じ叫びをした美女の谷間を舐めるようにじっと見つめる。


 「でかい……」


 その男子を見た私と美女は頷きあう。


 「ちょっとお兄さん!そんなに私の連れの胸ばっかり見て……セクハラじゃない?」 


 私は男子の肩に腕を回す。


 「きゃあ!……ちょっと!どこ見てんのよ!」

 

 美女は阿吽の呼吸で私に合わせて、あたかも気づいていなかった振りをして、顔を赤らめて腕で胸を隠し、メガネ男子に迫る。


 「え!?僕は見て、見てませんよ……」


 メガネ男子は否定しようとしたが、美女の胸をガン見しながら消え入りそうな声で最後に否定した。

 

 よし!これはいける!いけるぞぉぉ!


 「あんた……このことが試験官にバレたら……どうなるんだろうね?」


 私が問いかけると震え出す眼鏡男子。


 「ううぅ……どうすれば許してくれますかぁ」


 メガネ男子は美女の胸を見たまま話す。


 見られていないことを確認し、私と美女は頷きあう。


 「大銅貨2枚!それで許す!……どう?」

 「わ、かりました」


 メガネ男子は懐からドラゴンの皮?で、できた財布を取り出して、金貨2枚を取り出す。


 「ええ!」


 まさか金貨が出てくると思わなかった私と美女は驚愕する。


 「金貨しかなくてーーこれで許してください!」

 

 メガネ男子は私たちの手に一枚ずつ金貨を渡してきた。


 「「あ、ありがとうございます!」」


 私と美女は90度よりも深い深いお辞儀をして震える手で金貨を受け取る。


 「そ、それじゃ!」


 メガネ男子はチラッと美女の胸を見てから受付に走っていった。

 

 やっふー!金貨だ!金貨や!

 美女と向かい合い握手する。


 「ナイスおっぱい!」

 「ナイス金貨!」


 互いに笑い合う。


 「私、クミ・スグロ。冒険者コース。よろしく!」

 「お!私も冒険者コースだよ!エマ!よろしく!」


 その後2人仲良く受付を済ませ会場へ向かった。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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