半日で終わったよ!初めてのC級ダンジョンへレッツトライ!②
「2人で戦うのってあの時以来だな」
「ええ。2人で下水に住んでいた。あの時、以来ね」
ワイバーン3体を前に2人は不敵な笑みを浮かべる。
2人がまだサキと出会う前、下水でその日暮らしをしていた頃、孤児達をさらい、奴隷商人に売りつける闇ギルドの下っ端に襲われた時があった。
「あの時もちょうど3人だったよな」
「ええ。あの時と同じ……」
2人の頭上を旋回する3匹のワイバーン。
「グワァァ!」
そのうちの一体が、エマたちに向けて「ヒュン!」と風切り音に奏でる程の素早い速度で突撃してくる。
「ユリ」
「エマ」
2人は、互いに頷き合い、ワイバーンの鋭いくちばしが当たるスレスレの所でそれぞれが左右にずれて、
「グワァァ!」
突撃した地面から起きあがろうとするワイバーンを挟み撃ち。
「ダブルスラッシュ!」
「クラッシュ!」
エマは十字にワイバーンの背中を切り裂き、ユリは長杖でワイバーンの心臓を砕く。
「ぐわあぁぁ……」
血を吐き出し倒れるワイバーン。
「グワッ!」
「グワグワ!」
臆病で知られるワイバーンは、仲間の1匹がなす術なくやられてしまった光景を目にして慌て出す。
「向かってくるなら、こいつのようにしてやるぞ?」
倒したワイバーンをエマは指差して、残りのワイバーンたちに殺気を送る。
「グワァァ」
「グワ!」
一体のワイバーンは怯え、もう一体のワイバーンは迷わずに巣を捨ててどこかへと飛び去っていく。
「グ!グワァァ!」
残されたワイバーンは飛び去ったやつを見て、追いかけるように逃げていった。
「……ほらね?私達でもこれくらいなら余裕なんだよ?」
「どんなもんだい!」
ユリとエマはクミへと振り返って笑う。
「……はは……あははは!」
頼もしい2人を見てクミは笑う。
確かに……いつまでも引きずってちゃダメだよな。
「母ちゃんの言った通りだわ。笑ってれば、いつか幸せな瞬間が来るって……私が怖がってただけで、私を受け入れてくれる仲間ができてたよ」
空を見上げていた私は、そっと目を拭い、2人の元へ走る。
「さあ!お宝が待ってるよ!金の亡者は、今日も!」
私は、いつものダンジョン前で行う合言葉を叫ぶ。
「ようやくいつものクミだな……
がっぽり!」
エマはにっこりと笑い。
「稼ぐよ!」
ユリはノリよく拳を天に突き出して、飛び跳ねる。
やっぱり教会を出てよかったわぁ
*****
「うほー!こんなに黄金!金貨!
ざっくざくぅ!」
気合いのあまり垂直に天へと伸びる50mの巨木を駆け登り、1番にワイバーンの巣へとやってきた私。
鳥の巣のようなワイバーンの巣の真ん中には赤色と金色のラインのが入ったいかにも宝箱と言ったものがあった。
「すげぇ!出現頻度は2%の宝箱!普通の剣とかが出現している場合はハズレって書いてある!」
すっげぇ!どのくらいすごいかわからないけどとにかく喜んでおこう!
「それに……」
私はエマたちの声がする方を見る。
「オラァ!……やっと着いたぁ!」
「はぁはぁ……ワイバーンは雑魚だけど登るのに捕まるところが少なすぎて大変!」
私に遅れること数分、2人が息を切らしながらもなんとか50mの木を登ってきた。
「あははは!だらしねぇ!」
疲れ果てて、座り込む2人を見て笑う。
「くそぅ……こんな垂直の巨木を駆け上れるお前がおかしいんだよ!」
「ちょっと、この先ついていけるか不安になってきた……」
怒るエマと早くも心が折れそうになるユリ。
「そんな2人には明日から特別メニューを組んでやる!心配するな!私が世界最強にしてやるから!迷わずに着いてこい!」
私は鼻息荒く、今後の予定を語る。
「……そこまでは目指してない」
「私も遠慮したい。もう少しくらい人間でいたいから」
私の申し出に嫌そうな反応をする2人。
「……なんだ?もしかして……ビビってんの?2人とも……なっさけねぇ」
私は2人を煽る。
その煽りにピクリと反応する2人。
……しめしめ
「……あ?誰がビビってるって?」
「別に逃げてないから」
私の安い挑発に乗ってくれる2人。
ぐふふふ……2人も私の扱いに慣れたように私も2人の扱いには慣れたからね!負けず嫌いの2人なら乗ってくると思ったよ!
「よーし!ならば!明日から!エマユリ人類最強化計画!始動!」
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