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先生の剣って……

 4月7日……学校に入学して1週間が経った。


 「ーーと光雷草は発光草と類似している所が多いためよく見極めてから触らないと麻痺状態となって動けなくなったところを魔物たちに襲われてしまいます」


 今日のグレース先生はタイトなスカートと白シャツ、伊達メガネ、編みタイツといったセクシーな格好。


 そんな格好で教室の端にいる生徒まで見えるように木箱の上で必死に手を上げて薬草を見せている。


 「実際に毎年のように数十のパーティーが壊滅、その中にはB級冒険者PTも含まれます。充分に気をつけてください!」


 グレース先生は説明が終わるとプルプル震えた手を下ろして一息つき、木箱から隣の教卓に戻る。


 「惜しい!あと少しで見えそうだったのにぃ!」


 薬草ではなくグレース先生の今日のパンツが気になる私は「気配遮断」「透過」「索敵サーチ」のスキルの多重使用により床を歩腹前身で進んでいた。


 A級冒険者でも3つも同時に使えば体への負担が大きて倒れてしまうこともあるのに、それでも構わずに使用する。


 「私は諦めないぞ!絶対に先生のパンツを毎日覗く!」


 決意を新たに前進を再開する……


 「……何をしてるんですか?」


 目の前に立ちはだかる誰かの足が見えた。


 誰か確認するために顔を上げていく。


 「あ!紫パンツ!勝負かけてるねぇ……あっ!グレース先生!おはようございます!いいパンツ日和ですね!」


 目の前に立っていたのはグレース先生だった。


 とりあえず爽やかな笑顔で対応する。


 なぜだぁぁ!「透過」は完璧だったはず!それなのになぜわかったんだ!

 

 そんな私の疑問に、


 「ふふふ……それはですね。教室の床にあらかじめ私にしか視認できない塗料を撒いておいたからですよ♡」


 可愛らしいウインクを披露してくれる。


 「く!……バレてしまったなら仕方がない!ーーーーテレポート」


 短距離空間移動で自分の席へと避難し、着席する。


 厚底レンズの眼鏡をかけてノートを開く。


 「真面目に授業を受けるのみ!さあ!先生!勉強の時間ですよ!授業を始めてください!」


 黒板の内容をノートに写していく。


 「はぁ……あなたを相手にしているとどっと疲れますね……」


 グレース先生はため息をついて教卓に戻っていく。


 教卓に戻っていく先生に向かって、


 「あ!お礼を言うの忘れてた……先生!」

 

 と大きな声で手を上げる。


 教卓に戻った先生は、


 「何ですか?」


 と、ちゃんと反応してくれる。


 「んーー!ナイスパンツ!」


 席から立ち上がってサムズアップ。


 「うるさいわ!」


 しばらくして頬を赤らめたグレース先生に怒られた。


 うおお!見える!私には見えるぞ!スカートの中で踊り狂うパンツの姿が!


 朝のホームルーム後の座学の二時間はいつものように過ぎ去っていき、今度は実技。


 それぞれが動きやすい格好に着替えてから演舞場と呼ばれる。


 武舞台とその四方を観客席に囲まれた武道大会会場のような場所へと移動する。


 「よし!そうだ!体の軸と全身の連動を意識して!1、2、3、4……良いぞぉ!」


 クラウドの指示の元、拳闘士は正拳突き、剣士は木剣による素振りと職業別に様々……


 しかし、基本は変わらない。軸をぶらさずにいかにして効率よく体力の消耗を抑えて攻撃をするか……それが生死を分ける。


 クラウドも生徒達と混じって一緒に剣を振り、汗を流す。


 「ふふぅ!軸を意識して剣を振るうのはきついですね!……私の素振りはどうですか!師匠!」


 クラウドは観客席でゴロ寝をして鼻をほじるクミへと視線を向ける。


 「……へ?なんかいったぁ?」


 暖かな日差しと座学のスキル多重使用による疲れから半分寝ていたクミの意識がクラウドによって現実へと戻る。


 「いえ!なんでもありません!」


 尊敬する師匠に気を遣える「できた弟子」A級冒険者のクラウドは白い歯を太陽の光で輝かせ素振りを続ける。


 「ふぁぁ……素振り1000回追加ー」


 クラウドとの会話が終わってからも鼻をほじり続けていたクミは、ほじりながら気の抜けた声でクラウドへと指示を飛ばす。


 「聞いたか!師匠からありがたいメニューの追加だ!やるしかないぞ!……俺はやる!俺ならできる!俺は必ずやり遂げる!」


 クラウドは自らテンションを上げてアドレナリンを分泌させ、体の疲労感を麻痺させる。


 「おーおー熱いねー」

 「暑苦しいねー」


 シルフィとクミの声が重なる。

 やはり似たもの同士の2人。


 「懐かしいなぁ……私が教会に入れられた頃は毎日のように帝国の勇者に舐められないように!この国のために強くなれ!って素振り10000回とかやらされたなぁ……」


 クミは過去を懐かしむように空を眺める。


 「ふぁぁぁ……もうやらないけどねぇ」


 うおおおお!と叫ぶクラウドの暑苦しい声を子守唄がわりにして眠りにつく……


 「……おーい!起きろー!」

 

 エマの声……と遠くから聞こえる授業の終わりを告げるチャイムの鐘の音。


 「……ふぁぁぁ」


 疲れたが取れて軽くなった体を起こし、固まった肩周りの筋肉を伸ばす。


 「よく寝たー」

 「それはよかった……こっちはクミのおかげで腕が上がらないけどね」


 エマが小刻みに震える腕を見せてくる。

 

 「大丈夫だよ。慣れれば一分で終わるようになるから……」


 木剣を握り、


 「いくよー」


 と素振りを始める。


 素振りを始めて10秒してから遅れて素振りの音がエマの耳へと聞こえ始める。


 「……と。はい終了!ね!慣れれば誰でもできるようになるよ。午後も同じメニューでいくからお昼休みはよく休んでおいてね」


 木剣を置いて無料で食べられる学食へと向かう。


 「よーし!お腹に詰め込めるだけ詰め込む!」


 行儀など関係なく食べられる時に食べる!


 「誰かに追われてる人みたいな食べ方だよね」

 「うん。脱獄でもしてきたのかな?」


 学食に集まる人たちの視線がクミへと集まる。


 「うぅ…やっぱり恥ずかしい」

 「わかるぞ。お前だけじゃないから心配するな」


 一緒に食べるエマ達は他人のふりをしながら黙々とお昼を食べる。


 「……ぷはー!食った!食った!」


 クミは膨らんだお腹を手で叩く。


 「聖女の面影ーなしー」


 亜空間から頭を出すシルフィ。


 いいんだよ。辞職してきたんだから!これまで食べられなかった分!美味しいものをお腹いっぱい食べるんだ!


 その後、再び演舞場へと行き、午後の担当の担任の「ヨハネス」先生を交えて素振りをする。


 「お疲れ様でした」


 先生は素振り1000回を開始から5分程度で終わらせて、クミのいる観客席へとやってくる。


 「君のおかげで僕は自分の限界を越えられそうです。ありがとう」


 寝転ぶクミの横に腰掛けたヨハネス先生はクミに心からの感謝を伝える。


 ヨハネス先生もクミ同様に裏表がないので言葉一つ一つに心がこもっているのが伝わってくる。


 「はは……みんなからは苦情ばかりですけどね」

 「それでもみんな愚直に続けているのは成果を実感してきているからでしょう」

 「そうですかね」

 「はい」


 会話はそこで途切れる。

 それでも気にしいのクミとヨハネスだが、不思議と気を使わないでいられるので互いに楽ちんだと感じている。


 クミは起き上がってチラリとヨハネスの剣を見る。


 「……前から思っていたんですけど。先生の剣ってミスリルですか?」


 クミは気になっていたことを尋ねる。


 「え!わかるんですか!」


 クミの予想と反してヨハネスが目を輝かせてうずうずし始める。


 ああ、これは面倒臭いスイッチを入れてしまったかもしれない。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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