真神聖……ブリブリ王国 -3-
「……って、違うだろ」
問題は年齢じゃない、ステータスだ。
あまりにも《《低すぎる》》。が、考える。
俺のステータスは全て『999』。少女のステータスは平均して『80』くらい。
どちらが一般的なステータスかと言えば——それは常識的に考えて少女の方。
「ハスミ様。あの倒木を殴り付けてくれませんか?」
「ウッ」
少女が俺と同じ考えをしているということは、俺のステータスの数字が信じれていない証拠。
俺のステータスが高すぎるのか、少女のステータスが低すぎるのか。それを確かめるにはステータスの項目のどれかで試すしかない。
俺の攻撃力は『999』。なら、何かを攻撃して試せばいい。
「……分かりました」
俺は歩いて倒木の前に立つ。
めちゃくちゃ嫌だ。倒木は俺の頭くらいの太さで、本気で殴ればこっちが痛い目を見る。
本気じゃなくていい。けど、力は込める。
「……ふんっ!」
俺は六割ほどの力で拳を振り下ろした。
バギャン、ズボッ。
「……」
「……」
説明しよう。
拳を打ち付けた瞬間、倒木はいとも簡単に折れた。あまりの脆さに勢い余り、地面を抉って前腕の半分が埋まっている。
スポッ、と俺は腕を抜いた。
「……」
「……」
呆気に取られた表情で見つめ合う俺と少女。
これではっきりした。
俺のステータスは、《《高すぎる》》。
「ハスミ様。取引しませんか」
呆気に取られた表情から一転、真剣な声調と表情。
立ち上がった少女と正対する。
「知識の教授、金銭の確保、必要であれば——夜伽も。私にできることならなんでもします」
少女の手は震えていた。
それは無念か、恐怖か。どちらにせよ、十六の少女が身売りでさえすると言っている。それがどれほど恐ろしいことなのか、理解しているつもりだ。
「私は亡きお父様の為に、真神聖ブリフィリス王国を復興させなければなりません」
ただ、そうまでして少女は祖国を復興させようとしている。
精悍な表情と真剣な瞳から感じるのは強い意思。十六歳の少女とは思えない、崇高な願望。
「私と共に——真神聖ブリフィリス王国を建国してくださいませんか」
俺は、ただ平穏に生きていければいい。
変わらない日々。変わらない日常。
年を重ねると、平穏を求めるようになる。
——が。
「……俺で良ければ」
少女の強い意思が、あまりにも美しかったから。
気づけば、俺は頷いていた。