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さーて、どうしてくれようか?!


ミーヤに虫除けだなんて勘違いをさせたやつらを許してやる気なんてさらさらない。


この婚約を僕の我儘だと言うやつらにどう仕返してやろうか。


「分かりましたよ、殿下!」


「で、何処のどいつなんだ?」


「セヴィ伯爵とザイル子爵ですね、話していたのは」


「セヴィ伯爵とザイル子爵か...宰相の取り巻き連中だな」


「噂の元は間違いなくブロイド侯爵ですね。恐らく自分の娘が選ばれず、娘よりも格下のミーヤ嬢が選ばれた事が気に入らないんでしょう。そしてアリアンヌ嬢が嫁いだミューラ公爵家も関わっているようですよ。大方宰相に頼まれた口でしょうが、殿下を敵に回すとは怖いもの知らずですよねー」


「チッ!あの狸め!」


「で?どうします?黙って放置なんて事はなさらないんでしょう?」


「ミーヤを傷付けたんだ。それ相応の報いは受けてもらわなければ気が済まない」


「ですよねー、殿下はそういう人ですよねー」


イーサンが呆れたようにそう言っていた。



「フロイライル殿下が婚約者を溺愛している」と噂が流れ始めた。


と同時に本当に婚約者を溺愛するフロイライルの姿が頻繁に目撃されるようになった。


そしてそれと同時期にアリアンヌが嫁いだミューラ公爵家の奇妙な噂が流れ始めた。


「ミューラ公爵家の長男が厩舎働きの下男と出来ていてアリアンヌ夫人が離縁されるのは時間の問題だ」


この噂を流したのは勿論フロイライルである。


しかも噂は嘘ではなく真実が含まれているのだから質が悪い。


アリアンヌが嫁いだミューラ公爵家の長男スラッガーは昔から男色家の噂の絶えない男だった。


フロイライルがその事を知ったのはスラッガーに求愛されたからなのだが、フロイライルはそちらの気は一切なかった為に冗談として受け流した。


しかしミーヤへの嫌がらせとも取れる噂をミーヤ自身の口から聞いたフロイライルはスラッガーの噂を利用しようと考え、イーサンに調べさせた。


するとアリアンヌとスラッガーは初夜以外は閨を共にしていないという事実と、頻繁に厩舎で働く下男の元へスラッガーが足繁く通っている事実を突き止めた。


離縁までは考えられていないようだが、この事実を宰相が知ればどうなるか見物である。


実際にはスラッガーは下男を口説いているだけでそういった関係にはないのだが、この際徹底的にやらせてもらおうと考えたフロイライルはあたかも何かあるかの如く噂を流した。


この噂を何とか消そうと宰相は色々と手を回したようだが、センセーショナルな噂程人の口に面白おかしく広まるのは早く、大きく口にしなくとも皆が知る公然の事実として語られるようになった。


「やってくれましたな!」


怒り心頭の顔で宰相がやって来たのだが、フロイライルは何処吹く風。


「何の事かな?」と知らぬ存ぜぬを通した。


大恥をかかされたアリアンヌだったが、離縁などすれば「やはりあの噂は事実だった」と公言してしまうようなもので離縁など出来るはずもない。


スラッガーもまた然りで、何とか口説き落とそうと考えていた下男との接触を禁止され、その上噂を聞いた友からは「自分もそういう目で見られては敵わん」と距離を置かれた。


公爵家の評判もガタ落ちで、今では平民ですらも「あの家のお坊ちゃんは男色家」と口にするまでになった。


ミューラ公爵はフロイライルに平身低頭謝罪したが、そこでもフロイライルは「何の事だ?」と言わんばかりの態度で知らぬ存ぜぬを貫き通した。


「殿下を敵に回すと痛い目を見る」


そう口にされるようになるのに時間はそれ程要しなかった。


身内の恥を晒された宰相は今までしていた大きな顔が出来なくなり、その勢力は立ち所に萎んで行った。


以降、ミーヤを陥れようと考える者もいなくなり、フロイライルは心置きなくミーヤを溺愛した。


「僕は何を見せられているんでしょうね」


あまりの甘々ぶりにイーサンは砂糖を吐きそうになりながらも何処か羨ましさを感じながら2人を見ていた。


王族や貴族の婚姻は基本的に政略的な要素が強く、フロイライルとミーヤのように相思相愛な上に溺愛されているなんて関係は非常に珍しい。


「僕にもあれ程愛せる女性が現れるだろうか?」


ふとそんな事を考えたイーサンだったが、そのイーサンも数年後、フロイライル顔負けの溺愛ぶりを発揮する婚約者が出来るのだが、それはまた別のお話。


━━完━━

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