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03

いつの間にか気を失っていた私は豪華なベッドの上で目が覚めた。


左手に感じる温もりに気付いて目をやると、殿下が手を握ってベッドに頭を乗せて眠っていた。


気を失う前、殿下に言われた言葉が胸に響く。


そう、好きだと、愛してると言われたのだ。


虫除けだと思った。


諦めなければと思っていたのに。


でも5年前に会ったとはどういう事だろう?


殿下とは婚約の申し込みをされた時に初めてお会いしたはずなのだけれど?


5年前と言えば私はまだ12歳。


その頃に殿下と出会っていた?


私は記憶力はいい方なのだが、どうしても思い出せない。


思い出そうと記憶を辿っていると「ミーヤ?気が付いたの?!」と殿下の声がして、間近に殿下の顔が迫ってきた。


「は、はい、気が付きました、すみません」


「謝る事はないよ。僕の方こそごめん。君に慕ってると言われて舞い上がってしまって、ついついやり過ぎた」


「これは現実なんですよね?」


「現実だよ、僕のミーヤ」


「ぼ、僕の?!」


「そう、ミーヤは僕のだ。そして僕はミーヤのもの」


「私の...」


「そう、君だけの」


どうしよう、また気を失いそうだ。


嬉しい気持ちと、何処かでまだ信じられないような夢のような気持ちが混じり合っている。


「それよりもミーヤ?君に虫除けなんて言ったやつは何処のどいつかな?」


「そ、それは...分かりません。立ち聞きをしてしまっただけなので...はしたないですよね」


「立ち聞きか...因みにそれは何時何処で聞いたの?」


「前回のお茶の日に、お庭に向かう廊下で」


「あの日か!やっぱり泣いたんじゃないか!君を泣かすなんて!しかも虫除けだと思わせるなんて万死に値する!」


「で、殿下?落ち着いてください!」


「ミーヤ?ライル、ライルだよ?」


「...ライル、様」


「様もいらないんだけどなぁ」


「...それは、お許しください」


「もう一度呼んでみて?」


「...ライル様」


「うん、僕のミーヤ」


どうしよう、恥ずかし過ぎる。


今までよりも確実に甘くて蕩けるような声と笑顔の殿下にずっと見つめられ続けていて、体中の血が沸騰しそうだ。


「真っ赤になったミーヤも可愛い」


ほっぺを指でツンとつつかれ、心の底から嬉しそうに笑う殿下。


あまりの笑顔に心臓が止まってしまいそうだ。


「ラ、イル、様...心臓が、壊れてしまいそうです...そんなに、見つめないでください」


「それは無理だ。こんなに可愛いミーヤから目を離すなんて事は出来そうにないよ」


このまま気を失ってもいいですか?


殿下の甘い言葉に本当に目が回りそうだ。



それからの殿下は周囲の人達すらも驚く程に私に甘々になった。


お茶の時間にはピッタリと私の隣に座り、手を握ったり頬にキスをしたりするし、会う度に必ず「好きだ」「可愛い」と連呼するし、私にも「好きだ」と言って欲しいとお強請りしてくるし。


以前とはすっかり変わってしまった殿下に私はタジタジで、だけど甘い殿下が愛おしくて可愛らしくて困ってしまう。


「ミーヤ」


私の名を呼ぶだけでふにゃりと顔がだらしなくなってしまう殿下にこちらまで顔がだらしなくなってしまいそうになる。


でも流石にくっつき過ぎな気もして「少し離れてください」と言ってみたら途端にシュンとして、泣きそうな顔で見つめてくる。


「僕はずーっとミーヤにくっついていたいのに、ミーヤは違うの?」


上目遣いでそんな事を言われると心臓がキュンとなる。


「わ、私も、くっついていたいですが、その、どうにも恥ずかしくて」


「来年には結婚するんだよ?これよりももっと凄い事だってしちゃうんだ。ミーヤ、慣れようね?」


す、凄い事?!


言われている事は分かるのだけれど想像が追いつかず顔だけが真っ赤に染る。


「ミーヤは恥ずかしがり屋さんだなぁ。まぁ、そこも可愛いんだけど」


おでこにチュッとリップ音を立ててキスをすると、殿下は私の体を引き寄せてすっぽりと腕の中に包み込んだ。


「ミーヤ、大事にする」


「はい」


5歳年上の殿下だけれど、時々甘えん坊で、時々意地悪で、何時だって私に甘く優しい。


「ライル様...私を好きになってくださって、ありがとうこざいます」


「それはこっちの台詞だよ。ミーヤ、僕を好きになってくれてありがとう。愛してるよ」

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