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緩く書いています。
日間ランキング100位(73位とか。今日見たら上がってました)以内に入っておりました。
週間ランキングにも下の方ですが入っていました。
読んで下さりありがとうこざいます✿感謝(人´ω`*)感謝✿
「殿下の我儘ぶりにも困ったもんだ」
「ああ、あの婚約か!数多来る見合い話を避ける為だけに結ばれたって言う」
「婚約者となったミーヤ嬢も気の毒だよな!殿下に心から気に入った令嬢が見付かったら捨てられる、なんて事も知らずにな」
「でもあのチェーチル伯爵家の令嬢だろ?古くからある家門ってだけで何の功績もないパッとしない家柄なんだ。一時的にでも婚約者の座に就けたってだけで僥倖なんじゃないか?!」
「確かにな」
男達の話を私は泣き出しそうになるのを堪えて聞いていた。
男達の話題に上っていた令嬢こそが私ミーヤ・チェーチルだ。
突然降って湧いた王太子殿下との婚約話。
そんな訳がないと家族みんなで会議まで開き、父は登城までして確認もし、紛れもない事実だと分かってからも「何処か別の家門の令嬢と間違えているのではないか?」と信じられず、王太子殿下自らが我が家を訪れ私に婚約を申し込むまでは本当に信じられなかったこの婚約。
婚約してからも「騙されているのでは?」とずっと思っていたのだが、蓋を開けてみたら殿下に本命の令嬢が現れるまでの虫除けとして選ばれたのだと分かり、やはりそういう事かと納得する反面悲しかった。
殿下は優しい。
その優しさに『もしかしたら...』なんて淡い期待を抱いてしまっていた自分がいたのだ。
婚約を申し込まれた際に殿下は「君しかいない」と仰った。
その言葉を丸ごと信じた訳ではないが、婚約者となって半年、常に優しく、会う度にスマートにエスコートしてくださり、いつだって温かい言葉をかけてくださり、私の話をにこやかに聞いてくださるそのお姿に私はいつの間にか恋をしていた。
「馬鹿みたい...そんな訳なかったのに...」
涙が止まらなかった。
何処かで分かっていたはずなのに、心が苦しくて堪らない。
何時か捨てられる婚約者だったなんて知りたくなかった。
知ってしまった今、私はどう殿下と接すれば良いのだろうか?
きっとこれまで通りになんて出来ない。
私はそれ程器用ではない。
どちらかと言えば不器用な質だ。
自分の気持ちにも殿下の気持ちにも気付いてしまった今、私はどんな顔をして殿下の前に立てばいいのだろうか?
恥知らずにも殿下に抱いてしまったこの恋心は早急に捨ててしまわなければならない。
捨てられるのだろうか?
私にとっては初めての恋。
その恋がこんな形で散ってしまうとは思ってもいなかった。
「でも、そうよね...私と殿下では元々釣り合わないのだし...殿下の虫除けとして役に立てるのならばそれだけでも良しとしなければ...」
自分自身に言い聞かせるようにそう呟いてみたが、心はジクジクと痛み、涙は止まってはくれなかった。
*
「ミーヤ」
泣き腫らした目を何とか冷やし、見られる顔に整えた私は殿下の待つ四阿へと向かった。
私を見付けると立ち上がり眩しい程の笑顔を見せた殿下。
その笑顔にまた泣きそうになるのを必死で堪えた。
「お待たせいたしまして申し訳ありません、殿下」
「殿下とは呼ばないでと言っただろ?僕の事はライルと呼んで欲しい」
フロイライル・エチカドーラ王太子殿下。
エチカドーラ王国の第一王子であり、私の婚約者でもあるその人は、私がまた勘違いしてしまいそうな程に優しい声でそう言った。
『もう勘違いしてはいけない』
そう思うのに、笑顔と優しい声に心は揺れ動く。
こんなに優しい人が私を虫除けの道具として利用し捨てようとしているなんて...。
そう考えると心がズンと重くなる。
息苦しくて逃げ出してしまいたくなる。
だけど、もう少しだけ何も知らない顔をして隣にいる事を許してもらえるだろうか?
何時か終わりが来る関係だとしても、恋をしていてもいいだろうか?
『いけない!自分の役割をきちんと弁えなければ!』
ニコリと微笑み「殿下」と呼ぶと、フロイライル殿下は困ったように眉尻を下げた。
「今日は何時もと違うね?何かあった?」
「いいえ、何も...」
「もしかして泣いた?君を泣かせたのは誰?」
「泣いておりません。目にゴミが入ってしまって少し擦ってしまいました」
「そう?それならいいんだけど...もしも何かあったら僕に言うんだよ?君は僕の大切な婚約者なんだからね?」
「はい、ありがとうこざいます」
「大切な婚約者」という言葉が胸を抉る。
もういっその事「大切な虫除けの道具だ」と言ってもらえればこの気持ちもキッパリと捨てられるだろうに...。
架空の国の架空の時代のお話なので設定など緩めです。