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「幸運」スキルが仕事をしない! ~ 裏ギルド出世街道  作者: 三上康明
第4章 裏路地の暗闘

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爆発、そして

 全身が痺れるような衝撃波が俺の身体を襲うと、足が地面に着かなくなって、前へ前へと吹き飛ばされるのを感じた。

 フェリとつないでいた手が離れた。

 何メートルも吹っ飛んだ俺の身体は、薄汚い路地裏に落ちて、ボールのように転がった。


「がほっ、がっ……!?」


 息が止まる。

 すさまじい暴風が逆向きに吹き荒れて、マーカスのほうへと俺の身体を引っ張っていく。

 なんだ。

 なんだ。

 なんなんだ!?

 そのとき、雷光のように俺の脳裏をかすめたのは、


(炎。爆発。——鼻が曲がるような、ニオイ……!?)


 これ……もしかして、ガス(・・)か?

 下水道に溜まっているっていう。

 この一帯には、ガスが漏れていたということではないのか。

 俺がサボッたせいで下水の詰まりやトラブルが起きていたのなら——そこにガスが溜まっていた。

 そのガスが地上に流れ出た。


「——フェリッ!」


 気を失ったのか、ぐったりしたフェリがすぐ近くに転がっていた。

 爆発が起きて、その後どうなったのか全然わからん。

 炎と衝撃波が発生して、俺の耳もバカになったみたいに聞こえない。

 爆心地に向けて強風が吹いていたけどそれも止まって、後は砂埃と煙が視界を悪くしている。

 ただでさえ薄暗かったのに!


「フェリ!」


 俺はフェリのところへ——唯一俺の味方であり続けた彼女のところへと這って進み、手を伸ばす。

 彼女の手をつかむ、という瞬間。


 ドシャッ。


 俺の手がつかんだのは、空から落ちてきた()だった。

 血まみれ、煤まみれ、つまるところそれは生首(・・)で。


「……ァ……」


 その生首は、なにか声を発した気がした——マーカスの(・・・・・)オッサン(・・・・)の、最期の言葉だった。


「うっきょおおおおおおあああああああああああああああああ!??!??!?!?!?」


 飛び上がった俺は生首をぶん投げる。

 え、なに、なに、今の爆発で、マーカスのオッサンの首が吹き飛んだの、いや、ていうか何人がこれで死んだ――。

 びびりすぎて俺は飛び起きていた。

 なに。

 なに。

 なになになになになんなの!?


「お~~~、やるじゃねえか、小僧!!」


 キーンとしてバカになっていた俺の耳でも聞き取れた言葉。

 爆発の現場からさらに向こうから歩いてくるひとりの男——その男が纏う空気がなせるわざなのか、砂埃や煙が消し飛んでいく。


「うっ……」


 倒れ伏した人たち。

 血まみれで苦しむ男。

 バラバラになった手足。

 そんなのが見えてきて——俺は思わずゲロを吐きそうになった。

 だけど男は意にも介さず、足元に転がっていたマーカスのオッサンの首を蹴り飛ばした。いや、そこまで転がってたのかよ!?

 青い髪をリーゼントにし、柄物のシャツにくたびれたジーンズと合わせている。

 ぎょろりとした目が印象的なそいつが立ち止まった瞬間、俺の横にフェリが現れた。


「さ、下がって……ニア……!」


 腹を押さえ、顔は薄汚れていたけれど、出血は見当たらない。


「フェリ!? お前、大丈夫なのか」

「アイツ……強いよ……!!」

「!?」


 あのフェリが、バカの申し子であるフェリが、真顔で男をにらんでいる。

 ケンカとみれば後先考えずに飛び込むようなフェリなのにこの反応ということは……俺にはわからないだけど、マジでアイツは強いのか。

 ていうか男が出てきただけで俺の全身がぞわりとなにかを感じ取り、それまでぼんやりしていた耳も鼻も明瞭に感度を増していく。

 そうか、これは——俺の本能が危険を感じているんだ。

 だってアイツの格好、ジーンズを穿いたその姿は、


「『青々虎々』……!?」


 トップギルドのメンバーだ!


「お~ん? ようやく気づいたのかよ。俺もちっとは有名になったかと思ってたんだが、まだまだだな——なあ?『龍舞』の娘よ」

「!?」


 俺たちの背後から迫る気配。

 それは、確かに、


「——久しぶりね、『紺碧の牙(アズールファング)』」


 レイチェルティリア様だった。


(「紺碧の牙」……聞いたことがある、確か)


「青々虎々」きっての腕っ節で、「王都最強のケンカ屋」と名高い——「青々虎々」の本部長(ナンバースリー)だ。

 そう思うとウチのクソピンクゴリラとは違う、風格が漂っている。


(メチャクチャやべえヤツじゃん!!!!)


 銃弾を剣で斬るレベルの化け物だ。剣を持ってないけどたぶん銃弾くらい余裕でかわすんだろう。


「まぁたこのガキか……お前、つくづく騒がせてくれるな?」

「へー、ここいら吹っ飛ばしたのがアンタなの? ただの粗チン野郎じゃねーってことかよ、やるじゃん」

「……お嬢、引き金を引いても?」


 レイチェルティリア様の後ろから、マッスルオジサンと、ツインテールの少女、引き金中毒の人——「七若龍」の3人が現れる。

 なんなんだよ、俺はどうしたらいいんだよ?


「レイチェルティリア様……お、俺は」

「下がっていなさい、アレは私たちの客よ」

「は、はい!」


 下がっていていいのなら大喜びだ。でもレイチェルティリア様はちらりと俺の股間を見た気がする……するけど、さすがにそれはないよな? このシリアスな場面ではな?


「フェリ、フェリ! 下がるぞ!」

「…………」


 俺はフェリの腕を引いたけど、フェリは渋い顔で仁王立ちしていた。

 まさかこいつ……悔しがっているのか?

 あの男を前にして、「勝てないかも知れない」と思ったことが?

 いや、俺にはよくわからんけども。


「……しょうがねえ、じゃあ俺もここにいるわ」

「!」


 言うと、フェリが驚いて俺を見た。


相棒(・・)を置いて下がるわけにはいかんだろ……ふつう」


 あ~あ……「蜥蜴とピッケル」なら余裕で裏切れるけど、フェリだけはな……。

 たぶんだけど、このバカを裏切っちまったら、俺はいよいよ行くところまで行くクソッタレになるんだろうなと、そんな気がするんだ。

 すると、


「——うん」


 フェリが満面の笑みでうなずいた。

 それを見て一瞬ドキリとしてしまった俺が悲しい。こいつ、見た目は美少女なんだよ、見た目は!

 あとなんかケンカでも始まったら俺は逃げるからな。それは裏切りじゃない。はず。うん。


「ほお、いっちょ前に腹が据わってるじゃねえか」


 マッスルオジサンがにやにやするが、そんなんじゃない。

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