ステージ0(C)
レ:お前、めっちゃ強いんだな! 旅のお供としては最高の守り人だ!
コ:いやあ、それほどでも……
死闘を乗り越え、彼らはようやく森を抜けた
安堵したのもつかの間
今現在、彼らの目の前に広がる光景は……
ビュオオオオオオオオオオオ
コ:ひょぇぇ……
吹雪に見舞われる雪原だ
モーレツだった
コ:……かえろうかな
レ:お前に帰る場所なんてないがな!
コ:なんだと! 冗談では済まないことを、貴様は……もう一回言ってみろ!
レ:よせよコクメ。お前の気持ちを理解してやれるのはオレだけだぜ……?
コ:レンゲぇ……
レ:よしよし。コクメは温かいなあ……
互いのぬくもりを感じ、漢泣きする
人生の終わりを悟る
LOST LIF……、
?:おう、まさかこんなところに人がいるなんてな⁉
コ:え、レンゲ以外の声がする‼
レ:オレにもコクメ以外の声が聞こえたぞ!
?:何ボケたこと言ってんだ
コ:初めまして、あなたを抱きしめてもいいですか!
?:マジでボケてんのかこいつ⁉
暖かい服装をした山男が登場する
コ:ぼ、ボク……その、人に会うのが初めてで。あ、記憶喪失なので正確には初めてではないというか、あなたに初めてをあげるわけではなくてですね
レ:おい、待て。俺は人外扱いなのか
山:わかったからとにかく俺の股間から顔を離せ
コ:……股間? いやああ、出たああマンチカン!
山:痴漢と言いたいんだろうが、問答無用で黙れ
げんこつ一発
コ:…………
山:それで、おまえさんたちはいったいどうしてこんなところにいやがる
二人:こいつのせいです(互いを指さす)
山:あん?
コクメは山男に事情を話した
山:…………わりいが急用を思い出したんでここでさよならさせてもらうよ
コ:圧倒的関わりたくない感!
レ:おじさあん、おねがあい
山:気持ちわりい。おまえらみたいなやつに関わるとロクなことにならねえんだ
コ:そんな……初めて人に出会えたのに……
レ:だからオレは?
山:当たり前だ、こんなところに誰もいるはずねえよ。人間にとって都合の悪い環境だ。いたとしても自殺志願者か、けったいな物好きくらいだ
コ:えっと……それじゃあ、あなたは?
山:どう見える?
コ:…………
コクメ、答えられない
山:まあ、こいつも一期一会ってやつだ。同行しない代わりに有益な情報をくれてやる
コ:有益な情報?
山:この吹雪を越えた先に『天使』と呼ばれる存在が眠ってるそうだ
コ:て、天使……?
山:こんな俺より、そいつのほうがよっぽどおまえさんの役にたてるだろうよ
コ:そんなことはないですから
山:……喰い気味で言ってくれるな。ただし、天使の眠る場所に辿り着けた者はいないそうだ。大方、獣人にでも出くわしたんだろうよ
コ:獣人……か
山:命を刈り取る残酷な力を持ち、人格は壊れ、人々を喰らいつくす悪魔……みんな、口をそろえてそう言うぜ
コ:……
山:おまけに獣人は感染するときたもんだ。ある日、突然、なんの前触れもなく身体に変化が訪れる。そうして、人を食い殺す。まさしく平和を壊す悪魔そのものだ
コ:感染って……あの獣人もそうだったのかな
山:あの獣人……? おまえさん、獣人と遭遇したことがあるのか?
コ:一応、はい。倒したけど
山:獣人を倒しただって……⁉
コ:う、うん
山:あっはっはっはっ! こいつは面白い話を聞けた! 獣人を倒したやつがいるとはな。普通、一方的に惨殺されるだろうに
コ:そうなんだ……
山:おう、おまえさんならきっと『天使』に出会えるだろうぜ! 俺たちがこうして巡り会ったみたいにな
コ:う、うん、ありがとう
山:ほれ、これは餞別だ(二本の金属製のビンを渡す)
コ:えっと、これは……?
山:栄養ドリンクみたいなもんだ。味に難ありだが、飲めば元気になれるぜ
コ:……ぷはあっ。え、なんか言った?
山:迷わず飲み干したな
レ:こんな貴重なもん、オレたちに譲っても大丈夫なのか?
山:気にすんな。お前たちのおかげで踏ん切りがついたからな
コ:踏ん切りって?
山:なんでもねえよ。それじゃあ……もう会うことはないが、達者でな!
コ:うん、そっちこそ!
大きな背中を見送り
真っ白な大地の上に足跡をつけ始める
レ:…………
男の姿が見えなくなるまで、レンゲはじっとその背中を見つめていた
ステージ0、クリア