ステージ1(はじまり)
そこは氷雪が踊る白の世界
コクメの意識は朦朧としていた
コ:ちょま、ちょまって……。これ、どこまで続くの? ボクの足、そろそろ限界なんだけど。カクカク震えるの、寒さか疲れかもはやどっちなの……?
レ:サムいこと言うなよ
コ:何が寒いのか主語を明確にしてくれるかな
透明な剣を杖代わりにし、生まれたての小鹿状態
震えるのなんの
コ:あのおっさんめえ、『天使』なんてどこにもいないじゃないか。……はっ、もしかして死ぬ寸前に見られるとかっていうオチですか? そうなんですか?
レ:遭難です
コ:冗談言ってる場合か! このままじゃ本当に凍死するよ
レ:本当なら、このあたり一帯は暖かな気候なはずなんだがなあ。春には桜が満開に咲く絶景スポットなんだぜ?
コ:花吹雪じゃなく、本物の猛吹雪に襲われてるんですがね。ホントにこれは……ヤバイかも……
レ:お、おいコクメ
コ:視界が……かすんで……
ぐらりと身体が揺れる
次の瞬間、針のような冷たさに包まれる覚悟をした
コ:…………はれ?
顔面から雪に埋もれるはずが、何も感じられない
コ:ぼ、ボク倒れてない……。というか、浮いてる……?
実際、彼は宙に浮いていた
地上から三メートル近く
コ:す、すごい。ボク、目覚めたんだね! いやあ、わかっていたのさ。ボクには秘められた真の力があるんだって
レ:こ、ここ……コクメ、後ろ……ッ‼
?:キエエエエエエエエエエエエエエ……
コ:キエエエエ~…………え?
背中に違和感を覚えて振り返ってみる
バケモンでかい蜘蛛が彼を咥えていた
コ:ちょっ、ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ⁉
蜘:キエエエエエエエエエエエエエエ……ッ!
コ:もしかしてボク食べられかけてねというか背中の服が溶けとる‼
ズバッ!
不意打ちが幸いしたのか、蜘蛛から離れることに成功する
睨み合いになる
コ:なしてこんな雪国に蜘蛛がいるかなあ!
レ:んなこと知るか! ……なんか、その服が溶けた感じ、親近感湧くわ
コ:唐突に共感してくるなこの馬鹿!
蜘:キエエ……
コ:それにしても……洒落た大蜘蛛だね。八本の足がそれぞれ違うカラーリングで、目も同じようにレインボーで、それにうん、お腹のまだら模様がキレイ!
レ:なんだ、お前意外と虫とかいけるクチ?
コ:自然が描いたシルエットだもん。もはや芸術の原点だと思う
レ:キモイわあ
蜘:キエ、キエ~…………
コ:まあボク蜘蛛は嫌いだけど。気持ち悪いよね
蜘:キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ‼
コ:ヤバイキレた!
この世にはキレさせてはいけないものが二つある
普段は穏やかなのにキレたら何するかわからないクラスメイトと痔だ
コ:うおおおおおお、どうしようどうしよう‼ ここで逃げるべきか、戦うべきか。逃げたとしてもこんな雪の中で逃げ切れるかわからない。だからといって戦って勝てるような相手じゃない……っ
レ:あばよっ‼
コ:お前は速攻で逃げるんかい!
蜘:キエエエエエエッ‼
コ:くそっ!
興奮する蜘蛛
迅速な決断が迫られる
戦うことを選択する……ステージ1(A)へ
逃げることを選択する……ステージ1(B)へ