序章
その日、広島県呉市の工業地帯で爆発事故が発生した。
死者120、重軽症者が300以上、工業地帯は火の海と化しまるで戦争が起きた惨状であった。
爆風によって工業地帯から離れたエリアでも建物の窓ガラスが割れたり、トラックが横転する事故が多発していた。
この速報が流れて世間を震撼させた。
この曝発事故を引き起こした一人の青年は、爆心地にもかかわらず奇跡的に軽症で事なき終えたが、辺りの惨状に絶望していた。
ーまさか、こんなことになるなんて、、、
恐怖で立ち上がることすらできず、この成り行きを傍観するしかできなかった。
やがて、消防車のサイレン音が聞こえてきた。それも複数の音が重なり周囲を入り乱れて散っていく。
上空にはヘリが3機飛んでいるのが見えた。恐らく消防ヘリや撮影ヘリと言ったところか。
あれだけの大爆発があったのに、なぜ俺だけが軽症で済んだのか分からなかった。
曝発する瞬間、眩い光に包まれたことだけは記憶にしてる。
あれは新型爆弾が曝発した際に発する閃光だった。
俺たちは隣国の脅威から守る為に、国の極秘プロジェクトで密かに開発をしていた新型爆弾セイレーン、実験も最終段階へ差し掛かっていた時、俺は誤って新型の遠隔起爆装置のレバーを押し下げてしまった。
少し冷静さを取り戻せたのか、起爆しないようセキュリティーロックは複数されてたはずだし、レバーを押し下げても曝発はしないはずだがどういうことなんだ。
自問自答を繰り返しても答えが見つからなかった。
ようやく一人の消防隊員がこちらへ向かってくるのが見えた。助けて欲しいと大惨事を引き起こした罪から逃れたい複雑な思いに駆られる。
体は動かない、地面と一体化したような感覚で自分の意思が身体に伝わらない。
消防隊員は勢いを落とさずそのまま自分へ向かって走ってくる。
ー俺が見えないのか!ぶるかるぞ!!
そう思った瞬間、周囲が暗くなった。何が起きたか分からないが目を開けると、消防隊員の姿は見えなかった。
そして、身体中が何かで覆われているのが分かった。消防隊員が着てる服を身に纏っていた。
さっき俺に目掛けて駆けてきた消防隊員と同じ服だ。