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8. 姿見のなかから 【ホラー】

□◆□◆




「この子かわいいでしょ、おかあさんが買ってくれたんだよ」


 5才になった美月ちゃんがわたしに話しかけてきた。

 今日は美月ちゃんの誕生日。プレゼントしてもらったというぬいぐるみを自慢してくる。

 ピンク色のウサギさんを抱える美月ちゃんは、嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。このお気に入りのぬいぐるみを、彼女はしばらくの間どこへ行くときも持ち歩くのだろう。


「美月、お食事に行くから早くいらっしゃい」


 おかあさんが部屋の入り口から美月ちゃんを呼ぶ。

 美月ちゃんは元気よく返事をして立ち上がり、おかあさんへと駆けて行った。


 部屋を出る時、美月ちゃんは振り返ってわたしに「行ってきます」と手を振る。

 だからわたしも「行ってらっしゃい」と手を振り返した。


「誰とお話していたの?」


 部屋から駆けて行った美月ちゃんを見送りながら、おかあさんは部屋のなかへ目を戻す。

 そして、ギョッとした顔でおかあさんが凍りついた。


 おかあさんの目に、姿見に映るわたしはどんなふうに見えているんだろう?

 美月ちゃんが立っていたから、美月ちゃんの姿に見えているのかな?


「そんな――な、なんで……」


 顔を強張らせたおかあさんが尻餅をつき、唇を震わせながらわたしを見ている。


 わたしはこのおかあさんが大好きです。だって、いつも優しいし毎日わたしをきれいに拭いてくるもの。

 だからね、わたしは『美月ちゃん』になろうと思います。次に美月ちゃんが来たら、わたしは鏡から出て美月ちゃんと交代するの。

 その時は――



「わたしにもぬいぐるみを買ってね、おかあさん」



□◆□◆

 読んでくださり、ありがとうございました。


 子供の頃、鏡が嫌いでした。特に三面鏡が怖くて怖くて……。鏡のなかの誰かと目が合ってしまったら……そんな想像に震えていたのです。

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