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話の53:Interlude3

『ねぇねぇ、君さ、何処の学部?』

『可愛いねぇ。俺達と一緒にお茶しない?』

『いえ、あの……』

『イイ店知ってんだって。なぁ、行こうぜ』

『俺等が奢るからさ』

『あ、えと……いえ、私は……』

『いいからいいから』

『ほら、早く行こうぜ』

『や、止めて下さい』

『大丈夫だって、な? ほら、行くぞ』

『いいから来いって』

『いや、止めて!』

『あんだ、煩ぇなぁ』

『黙ってついてくりゃイイんだよ!』

『ひっ……』

『心配すんなって。俺等は愛に溢れてっからよ』

『そうそう。すっげーハイになれる薬もあっから、ぜってー最高だって』

『うぅ……いや……』

『ちょっと、アンタ達』

『あ?』

『邪魔よ。退きなさい』

『んだよ、テメェは?』

『邪魔はそっちだっての。どっか行け』

『アンタ達、耳が悪いの? それとも脳味噌から腐ってる? 私が退けって言ってんのよ。黙って退きなさい』

『はぁ? 何言ってんだコラ。喧嘩売ってんのか!』

『ナメた女だな。見て判らねぇ? 俺達、これから楽しく遊ぶんだよ、オメェみたいな奴の相手しる暇はねーの』

『生憎と、私はアンタ達みたいなエテ公の目的に興味はないの。モンキー共、邪魔だからとっとと退け』

『んだとォコラァ!』

『調子乗ってんじゃ……オゴッ!?』

『退けって言ったのに、退かないからよ』

『こ、このアマァ! いきなり蹴るかフツー!?』

『うっさい、黙れ』

『ブギャッ!?』

『お、おぉぉぉ……! 俺の、俺の大事なトコがぁぁぁ!』

『フン。私の通行の邪魔をするから。当然の報いね』

『あ、あの……』

『何?』

『えと、その、あ、有り難う御座います』

『別にお礼されるいわれもないわ。私は私の邪魔をしたゴミを、実力で排除しただけだから』

『あ……』

『別にアンタを助けた訳じゃない。たまたま進行形路上に連中が居た、それだけよ』

『それでも、有り難う』

『フン。……1つ忠告しとくけど、アンタみたいに世間知らずそうなお譲ちゃんは、こういうのの格好の的よ。精々、注意しとくのね』

『あ、待って…………行っちゃった』

『ママ、ママ、ぼく、ぼく、潰れちゃったぁぁぁ』

『おぉぉぉ、あぁ、で、でも、これはこれで、か、快感かも』

『え、え〜っと、大丈夫、ですか?』




『あ、貴女は』

『ん? ああ、この前の』

『良かった、また会えて。ちゃんとお礼が言いたかったんです』

『別にいいって言ってるでしょ。しつこい女ね』

『でも、あの時は危ない所を助けてもらって、本当に有り難う御座いました。私、こんな性格だから、はっきりと断り辛くて』

『フン。私は人助けなんて馬鹿げた事はしない。邪魔者を排除しただけ。そんなんで礼を言われて迷惑よ』

『あの……ごめんなさい』

『だいたい、あんな連中に絡まれて逃げ出せないような馬鹿な女を、どうして私が助ける必要があるの。時間の無駄以外のなにものでもないじゃない』

『……そう、ですよね』

『まったくその通りだわ。アンタみたいな見るからに温室育ちのお嬢へ、手を差し伸べてやる暇なんて私にはないの。アンタと違って、私は忙しいんだから』

『あ……の……ごめん、なさい』

『判ったら2度と私に近付かないで。でないと、今度はアンタを蹴るわよ?』

『……ぅ』

『じゃあね、お嬢さん』

『……だけど、本当に嬉しかったんです』

『なに?』

『私、口下手で、昔から暗くて、それに、魔導法士ソーサレスだから友達も居なくて……あんな風に助けられた事、なかったから、それで……だから……』

『アンタ、魔導法士ソーサレスなの?』

『あ、はい。……気味悪い、んですよね……普通じゃ、ないですから……私だって、好きでこんな力持って生まれたんじゃないのに……望んで、そうなった訳じゃないのに……』

『望んで、そうなった訳じゃない、か……』

『ごめんなさい。私、もう行きます。……さようなら』

『……フン』




『アンタも、生体構造学派だったのね』

『え? あ、貴女は……』

『私は遺伝子工学を専攻してるんだけど、アンタは?』

『あ、えと……精神心理学、です』

『ふーん』

『あの、ごめんなさい、私、行きます』

『この前は悪かったわね』

『え……』

『別にアンタへ同情した訳じゃないわ。アンタが馬鹿な女って評価は今も同じよ』

『ぅ……』

『でもね、自分の意思とは無関係に科せられた事があって、それが嫌いで疎ましいって気持ちは判るのよ。だからそこだけは、アンタに共感してあげる』

『……貴女も、魔導法士ソーサレスなの?』

『違うけど……まぁ、自分じゃどうにも出来ないって点では同じようなものよ』

『同じ……』

『アンタ、名前は?』

『え、あ、静江、です。綿津御わたつみ静江しずえ

『そ。私は霧江きりえ光瑠ひかる。ま、よろしく』

『あ……は、はい!』

『それと』

『はい?』

『敬語使わなくてもいいわ。普通に話しなさい。でないと蹴るわよ?』

『はぃ……うん』




『このクソアマ! もういっぺん言ってみやがれ!』

『何度でも言ってやるわよ、低脳のド腐れが。そんな阿呆みたいな理論が通用すると思ってるの?』

『ふざけろ! 俺のは綿密な実験結果によって得られたモンを下地にしてんだ』

『それが何? ゴミはゴミでしょ。そんなゴミみたいな案は犬にでも喰わせてやればいいのよ。私の方がずっといいに決まってる』

『おめぇの論文のがトんでんだよ! そっちが使えねぇぞ!』

『ふざけるんじゃないわ。私の構想が理解出来ない馬鹿は、死ねばいいのよ』

『黙ってろ! おめぇみてぇな奴がチームの足を引っ張んだ!』

『アンタみたいなジャンキーのがよっぽど迷惑だわ』

『誰がジャンキーだ! ガセ流すんじゃねぇ!』

高木たかぎ、落ち着けよ』

『ウルセェぞ亮治りょうじ! 今日という今日はこのクソ女を許しちゃおけねぇ!』

『光瑠も、止めてよ』

『口出し無用よ静江。私は前からコイツが嫌いだったの。いい機会だから、ここで白黒ハッキリさせてやろうじゃない』

『2人共止せって』

『そうよ、喧嘩は止めて』

『上等だコラァ! 泣いて謝っても許してやらねぇからな!』

『フン。いちいち鼻息が荒いのよ』

『はぁ〜、どうしてこう何時も何時も喧嘩出来るんだ』

『本当に、ね』

『綿津御さんも大変だな』

『ふふ、阿南あなん君も』

『まったく、お互いに気苦労が絶えない』

『でも、私はこんな風に賑やかなの、嫌いじゃないから』

『確かに、こいつ等と居ると退屈だけはしないか。ははは……はぁ』

『うふふ』




『よーす、ひっかる!』

『何よ』

『いや〜、実はねぇ、ウチの研究室が潰されちゃってさ〜』

『知ってるわよ。院内で爆発物の実験なんてしてるからでしょ』

『爆発物じゃなくて、新型のポップコーンなんだって。ちょっちアレな薬品を混ぜすぎちゃったのは認めるけど。まったく、教授会の連中はユーモアってモンが判らない石頭ばっかでカナワナイわよね』

『で?』

『そんでねぇ、ほら、あたしって今無所属じゃない? このまま行くと色々ヤバイ訳よ』

『研究室の表題テーマがこなせないから、卒業が危ういわね』

『そーなのよぉ! もすっっっごくピンチなんだって!』

『ご愁傷様。じゃあね』

『待って待って待って待って!』

『何よ?』

『単刀直入に言うわ。そっちのチームにあたしを入れて! 御願い!』

『嫌よ』

『即答!? そこを何とか……友達じゃない』

『前に席が隣り合っただけよ。アンタなんてただの知り合い。それじゃあね』

『待って待って待って待って!』

『しつこいわね』

『神様、仏様、光瑠様! どうかどうか、御願いします! この通り! マジでマジで! この借りは絶対返すから!』

『嫌よ』

『そんなぁぁぁぁ!?』

『他を当たりなさい。アンタの面倒なんて見るわけないでしょ』

『……ネイド教授のUPCSからパクった医学論文、見たくない?』

『なんですって?』

『教授が構築したテロメア遺伝子の新規性モデルもあるんだけど、欲しくない?』

『私を買収するつもり?』

『そんな人聞きの悪い〜。これは友人としての、お・ね・が・い』




『ちわーっす、今日から此処で御世話になる西園寺さいおんじ日和ひよりでっす! よっろしく!』

『ぼかぁ、小池です。小池こいけ正義まさよし。テキトーにぃ、よろしくぅ〜』

『あ、ああ、よろしく。阿南亮治だ』

『えーっと、静江です。綿津御静江』

『どうして此処には何時も変な奴ばっかり来るんだ! 霧江ぇぇ! どういう事だこれはぁ!』

『……私だって、オマケがついてくるとは思ってなかったわよ』

『いやぁ、日和ちゃんには感謝しないとねぇ。ぼかぁ、研究室がなくなって途方に暮れてたんだぁ』

『なっはははは、この日和様にまっかせない! 但し、貸し1だかんね』

『はぁいはい。ぼかぁ、研究が出来ればぁ、なぁんでもいいさぁ〜』

『霧江ぇ! 今日という今日は!』

『なによ、やろうっての』

『あぁ、また、カオス濃度が増していく』

『でも賑やかになって楽しいよ。私は歓迎だな』




『ガレナック社?』

『うん、そうみたい。学院長がね、推薦状を書いてくれるんだって』

『マジで! 凄いじゃん!』

『いいねぇ、大手も大手の最大手だぁ。う〜ん、思う存分研究が出来そうだなぁ』

『で、俺達に何やらそうってんだよ?』

『どうもな、極秘の研究らしい。詳しい事はまだ何も聞かされてない』

『向こうに着いてから説明があるんだって』

『ふーん。……ま、卒業後の就職先が決まったんならいいんじゃない。確かに研究は良く出来そうだし』

『おっしゃー! ガレナックで名前を売って、セレブ暮らしを目指すのよ』

『ぼかぁ、動物実験専用の個室が欲しいねぇ。多少汚れてもいいよぉにぃ、個人部屋をさぁ』

『どいつもこいつも、気楽なもんだぜ。何やらされるか判らねぇんだぞ? 最悪、口封じに消される可能性だってある』

『高木は心配性だな。そうならないよう、色々と準備していくさ』

『このまま皆で一緒に働けるなんて、うふふ、嬉しいね』




『静江』

『うん、なに?』

『アンタ、亮治と付き合ってるんだって?』

『え? えぇっと、誰に聞いたの?』

『あのお喋りよ』

『あ、前の休日、亮治君と一緒に居る所を見られちゃったから』

『ふーん、本当なんだ』

『うん。……別に隠してた訳じゃないんだけど、今は忙しい時だから。プライベート話は、よしておこうって亮治君が』

『ふん。アイツの場合、日和だか高木だかに根掘り葉掘り聞かれるのが嫌なだけでしょ』

『そ、そうかな?』

『ま、いいわ。アンタみたいなトロイお嬢は、相手が浮気してても気付かないでしょうから。ああいう真面目くさった隠し事も悪さも出来ない男が丁度いいわね』

『うぅ、私って、そんなにトロイかなぁ』

『そりゃもう大トロよ。寿司屋に持ってってネタに出来るぐらいのね』

『なに、それ』

『それぐらい、アンタは危ういって事。ま、アイツならそれなりに大事にしてくれるでしょ。精々、仲良くやるのね』

『あ……光瑠ったら』




『どうかしたのか、霧江。今日は会議があったからこんな格好だ。堅苦しいのは嫌いでね、早く脱ぎたいんだが』

『安心なさい。すぐに済むわ』

『だったら有り難い。それで?』

『至極簡単な話よ。1度しか言わないから良く聞きなさい』

『お、おい、苦しいって。ネクタイを、離してくれ』

『黙って聞け』

『わ、判ったよ。なんだって?』

『静江を泣かせたら、アンタ、殺すからね』

『な、に?』

『それだけよ』

『うぉ……っと、おい、霧江』

『私はやると言ったらやる女よ。憶えときなさい』

『あ、おい! なんなんだ……言われるまでもないさ』

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