表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/64

話の16:いざ、出陣!(II)

 ああ、私が未熟な所為でアクトレアの進行を許してしまった。

 やっぱり私は駄目。皆みたいに戦えない。

 戦う事の覚悟はしているつもりだった。でも所詮「つもり」でしかなかったんだ。

 話に聞いたり、想像したりで、私は戦いを知った気でいた。その結果がこれ。

 肌で直接感じた戦いは、私のイメージとは全然違う。事前の予想が打ち砕かれて、ただでさえ戸惑っていたのに。そこへ攻撃されて、傷付けられて、頭の中は真っ白になってしまった。

 何をどうすればいいのか判らないし、考えようとしても考えられない。色んな事が滅茶苦茶に思い浮かんで、こんがらがって、何が何だか。

 もうパニックだよ。

 腕に走った痛みが恐怖心ばかりを増長させて、勝手に身を竦ませる。

 その隙を突かれて、越えられて、我に返って追おうとしたら、また抜けられた。

 やる事なす事全部が裏目。望み通りにいってくれない。

 私の失敗を補おうとしてくれた風皇ふおう君は、その所為で敵に逃げられちゃうし。

 私がもっと上手くやってれば、彼がミスする事も無かったのに。

 ごめんね、風皇君。ごめんね、アキさん、霧江きりえ君。

 皆が必死に頑張ってるのに、私は足を引っ張っちゃうよ。

 腕の傷が痛む度、未熟者って言われてる気がする。ううん、事実その通りだわ。

 うう。

 ……でも、だけど。今はクヨクヨウジウジしてる場合じゃない。

 そうだ。まだ戦いの途中なんだから。

 気をしっかり持って、目の前の戦いに集中しなきゃ。

 泣くのも、落ち込むのも、悩むのも、全部後回し。これ以上、皆に迷惑をかけないようにしないと。

 手の中にある愛用の双刃剣センテンツアの感触。余計な思考は全部捨てて、其処にだけ意識を集中する。

 強く、もっと強く握り直して、見るのは前だけ。

 私の腕に傷をつけた奴が、今度は腕を高く振り上げてた。

 やらせない。先にこっちから、踏み込む。


「えぇい!」


 気合い込めた掛け声と一緒に両腕を振る。全力で。

 羽根みたいに軽い剣は、私の腕が操るままに水平へ走った。そのまま一気に、分厚い刃をアイツの体へ叩き付ける。

 刃を介して伝わってくる確かな手応え。次にはもう、センテンツアは敵の体を両断して、反対側へ抜けていた。

 切断面から噴き出る赤い色。血よりも濃い赤を撒き散らし、斬れた上体が飛んでいく。

 上から降り注ぐ真っ赤な液体に体が濡れるけど、気にしない。

 その間にも新手がすぐさま現れる。前と同じ様な外観の奴。

 集中。何も考えないで、今はただ目の前の敵に集中。

 今度こそ通さないように。確実に倒す為に。


「たぁっ!」


 両手で握るセンテンツア、頭上高くへ振り翳す。相手の姿は私の正面。

 攻撃の暇は与えない。敵を捉えて狙いを定め、掲げた巨剣を力の限りに打ち下ろす。

 大刃が縦一文字に走り落ち、正対するアクトレアを頭頂から両断した。

 敵の体は左右に分かれ、断面から赤い液体が迸る。

 髪に、顔に、服に、脚に、怪物の血液が付着してきた。ベタベタでヌルヌルで生暖かくて、この上もなく気持ち悪い。

 でも拭ってる暇はないよ。気にしてる余裕もね。

 次の敵がすぐに襲いかかってくるもの。

 センテンツアの厚い刃を体面に掲げて、相手の突き出してきた腕を防ぐ。

 凄い衝撃に剣が震えて、私の腕も少し痺れた。だけどまだ大丈夫、ちゃんと動かせるから。

 剣を振るって敵の腕を払い除け、構え直して斬り込んだ。刃は相手の肩に触れて、そのまま滑った。

 綺麗に切り裂き、アクトレアの胸上を体から分離させる。

 まだよ。まだ私は戦える。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ