俺の高校ライフにようやく春が来たと思ったら...。
第2章 修羅場ほど冷や汗をかく時はない。
イアの登場から数分後、ようやく落ち着いた雰囲気になったので、何でも言うことを聞くと言ったイアに俺は早速色々なことを聞いてみることにした。
「まず、俺以外の家族の人とコンタクトはとらないでほしい。これだけは守って欲しい」
俺がそう言うとイアがコクコクと頷いた。本当に分かっているのかと心配になるがそんなことを言っていたらきりがない。
次に俺は質問に移った。
「いきなりで申し訳ないんだけどさ、種族はエルフ...で間違いないですよね?!」
するとイアは恥ずかしそうに
「はい!エルフで間違い..ない...です///」
うぉぉー!!可愛い、なんか萌える...。
次の質問に移る
「じゃ、じゃあその羽で空を飛べたりとかって....」
「ああ、これはですね。」
そう言って何やらモゾモゾしだしたイア。数十秒後「スポンッ!」と音とともに背中についていた羽が取れ
「見ての通り、ただの飾りです!この羽を付けている方がエルフっぽいって聞いたことがあるので。」
(あれ?俺が想像してたのとちょっと違う.....。しかもスポンッ!って、百均か何かか?まさかとは思うがエルフの格好したただのコスプレイヤーでした!何てことは無いよな...。その場合すぐにポリスメンを呼ぼう。)
若干不安になった俺は直接聞いてみることにした。
「な、なぁー、お前本当にエルフなんだよな?スポンッ!つって羽取れたけど」
そんな俺の疑問に対しイアは
「心配しなくてもちゃんとしたエルフですよ!何なら魔法を使ってみせましょうか?そうですねぇー、透視魔法なんてどうでしょう?」
「透視魔法!?そんな魔法使えんのか!羽取れたけど」
「つ・か・え・ま・す!エルフ=羽が付いている、という概念はやめていただきませんか?後、羽のくだりしつこいです。」
それもそうだな。俺も女の子と話せないからと言って男が好きなんだと勘違いされるのはやめて欲しい。でも、やっぱエルフって....。いや素直に謝ろう
「イア、済まない。エルフ=羽がある何ていう概念をもっていたせいで俺は...」
そこまで言うとイアは
「大丈夫ですよ、私は知っております。悲しい事に主の知能はトロルと同じぐらいのレベルって事は。ですからあまり自分を責めないでください。」
彼女はそう言って女神の如く微笑む。
おい、慰めっていうよりかは8割ぐらい俺への悪口に聞こえるんだが。トロルと同じくらいの知能?
ふざけんな!1+1くらいならできる知能はあるぞ。
まぁ今回の所は俺も悪かったし百歩譲って許してやる。
そんな事を思っている間に、何やらイアは黙々と楽しそうに俺の部屋の床に何かを描いているではないか。
(魔法...陣?え、嘘だろ。)
俺は深夜にだせる限界ギリギリの声で
「アホかぁー!!!何勝手に人の部屋の床に魔法陣描いてんだよ!!透視魔法はどうした!?」
俺は魔法陣を描いてるイアに向けて怒鳴りつけたが、そんなことに耳も貸さずポツリと意味不明なことを言い出した
「お絵かきしたくなったもので。」
何で今の流れでお絵かきしたくなるんだよ!(泣)。
しかも、お絵かきで魔法陣書くとか飛んだ趣味してやがる。と色々ツッコミたい所はあるけれど何より先に聞きたいことがある。
「消せるんだろうな、これ。」
俺は魔法陣に指を指した。
すると彼女は、何を言ってるんだ?みたいな顔で
「消せるわけないじゃないですか。魔法陣ですよ?簡単に消されるようなものは魔法陣とは言いません。そんなものはただの落書きです」
俺からしたらお前が今描いているその魔法陣も落書き程度にしか見えないのだが。でも確かにイアが言ってることは間違ってない気がする。なんだぁーこの敗北感は、返す言葉もないじゃないか。
「あはははは...、そうですよねぇー...。」
この後、ものっすごっく綺麗な魔法陣を描かれ3ヶ月もすれば消えると言われた。これだけは思った、異世界人に軽い気持ちで絵を書かせたら、ろくなことにならないという事。俺の場合勝手に書かれたんだけど。
そしてようやく透視魔法を見せてくれる時が来た。
「それでは主いきますよ!!!!」
それはいつになく真面目な声でイアが俺に向かって言ってきた。その緊張感から少しばかり手に汗握る。
俺も意を決して返事をする。
「お、おう!」
イアは大きく息を吸い込むとこう言い放った
「異界聖見世界!」
するとイアの手から、凄まじいほどの光が解き放たれる。しかし突然イアがどことなく不安にさせることを言ってきた
「あ、しまった...」
おいおい、何がしまったんだ
「なーイア、しまっ、眩しっ!..」
"しまった"ってなんだと聞こうとしたその瞬間、光は俺とイアを包み込んだ。
少したって目を開け周りを見渡すと、そこは建物一つない草原の上に俺とイアがポツリと立っていた。妙な事に、草原にそびえ吹く風の感覚、空気の匂い、草を踏みしめる音など明らかに透視魔法ではない効果が発動していた。
「すっげぇーや!!これが透視魔法かぁー。リアリティー半端ないっすね!イアさんよ。」
俺はもう全ての事を把握した上でイアに聞いてやった。そう、嫌味というやつだ。
するとイアは慌てた様子で
「そ、そうですねぇー、凄くリアリティーに満ち溢れてますね!この世界。」
もう言ってしまってるじゃねぇーか。
「それで、ここはどこなんだ?」
「見て分かりませんか?異世界ですよ。」
こいつ何開き直ってんだ。さっきツッコめばよかったと後悔する。
「んで、どうすんだよ、朝までには家に戻らないと色々と大変なことになるのだが」
イアにそう伝えると
「そうですねー、すぐに戻ることは出来るんですが、ちょっとだけ遊んでいきませんか?」
確かに悪くない提案だ。さっきはあんなふうに嫌味を言ったけど、異世界系アニメなどを見てきた俺からすると正直元いた世界には戻らずここで一生暮らしたいところである。でも、そうなると家族の皆や総司に一郎に....。
て、あれ?そういや俺、一郎とゲームしてる途中だった....。こりゃますます帰った方がいいな。
「なーイア、遊ぶのもいいんだけど一旦家に帰らせてくれないか?ちょっと用事を済ませたい事がある。それから又こよう」
そう伝えるとイアは頭をコクコクと動かし、再び同じ魔法を発動する。凄まじい光に包まれると俺達は元いた世界に戻ってきた。時刻を見ると5:50と書いてある。(あれから大体3時間が経過したのかぁー。)
そんな事を考えながらゲームをしていた机のそばに行きヘッドホンとマイクをつけ
「なぁ、一郎。待たせてすまんかったな、ベランダの後色々あって...、ん?」
ヘッドホンから聞こえてきたのは一郎のイビキ声。
「一郎の奴寝落ちしてる....。」
まーこれはこれで良しだ。俺はゲームの電源を切った後、色々あったせいか一気に疲れが出て眠気におそわれる。イアも疲れているのか、さっきから口数が少くない。
「なぁ、イア。俺眠いから寝るわ。ベットはお前が使っていいぞ。」俺はベットを背にして床に寝転がる。
すると小さな足音をたてながらこちらに近づいてくるイア。寝転がっている俺にこんな事を言ってきた。
「主、そんな硬い所で寝ては疲れがとれませんよ。主がいいと言うのなら一緒にベットで寝ますか?」
「喜んで。」
俺は光より早いスピードで答えてやった
「それでは私が壁側で寝るので主は外側で寝てください」
そう言ってイアは壁側に行き眠りにつく。俺も外側を向いて寝る体勢をとった。イアとの距離は10センチメートルほど。初めて家族以外の女性と添い寝をする。でも何故か平然としてられる俺。心はネズミでも外見だけは悪くない彼女がいるというのに。何だこの感じは、例えるなら飼い犬と一緒に寝ているぐらいの気持ちだ。そういえばイアがもっていたあの石の効果なのかもしれない。
そこで俺は考えた、
イアからあの石を取ったらどうなるのだろうと。
流石の俺でも、ちょっとぐらい刺激が欲しい
女性恐怖症であるこの俺が危険承知の上でやってみることにした。
(確か見せてくれた後ポーチに直したはず...。)
だが、そのポーチはイアが大事そうに抱きしめながら寝ている。
この状態から取るのはかなり難しい。しかも、持ち主からどれだけ離れると効果が切れるのかも分からない。
俺はそぉーっとポーチからイアの手を外すと同時に俺は目を瞑った。
(何とかポーチを奪い取ったぞ。)
でも何だろう、ちょっぴり良心が痛む
その後、手探りで見つけた椅子に座りポーチの中を覗き込んだ。するとやはりそこにはやたら綺麗な石が入っていた。
「コレだ!」
俺は意を決してイアが寝ているベットの方を見た。
「あ、やっぱ俺には刺激が強すぎ....」
イアの顔面偏差値が高すぎたせいか、俺は頭の中が真っ白になると椅子に座ったまま気を失ってしまった。
1時間後...
ようやく意識を取り戻した俺は気を失っていたことに気がつく。手元にはまだポーチがあり、イアに返そうとベットの方を見るとまだ目を覚ましていないイアの姿があった。又もや頭の中が真っ白になり俺はポツリとセリフを言い残す
「リスキルはせこい..よ...。」
2回目の気絶が確認された。
1時間後...
目を覚ますと、椅子に座っていたはずの俺が何故かベットへ移動していることに気がつく。身体を起こして辺りを見渡すと、椅子に座りどことなく怒っている姿のイアがいた。
俺が勝手にポーチを取ったからであろう。この事に関しては本当に申し訳ないと思ったので謝ることにした。
「あのぉー、イアさん。ポーチのことは本当に悪いと思っています。勝手に取って悪かった。すまん、このとおり!」
俺は新人サラリーマンの如く深々と頭を下げる。
するとイアは
「本当に悪かった、と思っていますか?」
「あぁ、思ってる」
すると彼女は
「そうですねぇ、今回のところは許してあげます。次からは声をかけてからにしてくださいね?」
そう言って彼女はにこやかに笑った。
それを見た俺は「ホッ」と一息をついた。
「でも何でポーチなんか取ったんですか?」
不思議そうに聞いてきた彼女に対し俺は正直に話す。
「石の効果がない時にイアを見たらどうなるのかな?て思ったんです...はい。」
その事を聞くと彼女はお腹を抱えて笑い出した。
目に涙を浮かべながら
「それで?見た後主はどうなさったのですか?」
「二乙しました...。」
「ぶははははは!!」
その事を聞いて更に笑いだすイア。
クッソー!言い返してやりたいが返す言葉が見あたらん。仕方ない、これが現実なのだ。女性恐怖症であるこの俺の...。いかん、早く話題を変えなくては!
「あのー、イアさん。異世界に行きたいんですけど今ってぇ...行けますかね?」
何となく頭に思いついた言葉を俺は言ってみた。
「ええ、何時だって行けますよ。何ならすぐにでも行きますか?」
何!?予想外の返答でーす。異世界って何時でも行けるような所なのか?なんだろう、この友達の家に遊びに行く感じのノリは。俺からしたら異世界なんて夢のような世界なんだけどなぁ。でも、心のワクワクは増す一方だ。
「行きます!宜しくお願いします!」
「分かりました!それでは普通に行っても面白くないのでここで一つ掛け声でもしましょうか。」
普通に行っても面白くないっていうのがよく分からんが掛け声自体は悪くない。
「で、なんて掛け声するんだ?」
「そうですねぇ。私が"異世界行くぞー!"と言いますので主は、"おぉー!!"と言ってください。」
ベタだなぁー、まぁいいか。
「それじゃあイア、掛け声よろしく!」
「はい!では、いきますよぉー?!」
俺とイアはもうノリノリだ。
【せーの!】
「異世界にー行くぞー!!」
「おぉー!!!!」
俺達は手を軽く握り天高く真っ直ぐにあげる。そして二人の声は部屋中に響き渡った。すると部屋の扉がガチャっと開き、
「朝からお兄ちゃんは何馬鹿なことをいって....、お兄ちゃんその人...誰?」
さっきまでにこやかだった俺達の顔が一瞬にして喉にお餅を詰まらせた時のような顔つきで見つめ合った。
【........】
それまで活気に満ちていた異世界行くぞ雰囲気が一瞬にして絶対零度へと変わる。
俺とイアは腕を上げたまま恐る恐る扉の方を見る。
やはりそこには真冬の姿が。 そう、これが世間でよく聞く修羅場というやつだ。この先俺とは無縁だと思っていたんだが、まさか初の修羅場が自宅でなるとはな....。
俺の高校が男子生徒ばっかとかいう事よりも笑えない。
恐る恐るまふゆに聞いてみる
「お兄ちゃんはこれからどうなるんだ?まふゆ」
「どうなるって決まってんじゃん。今宵魔女裁判にかけます」
それを聞いた瞬間、体全身の力が抜け床に膝をつき目に涙を浮かべてまふゆにこう言った。
「御手柔らかにお願いします。」
第3章に続く
今回は「俺の高校ライフにようやく春が来たと思ったら...」の第2章を読んでいただきありがとうございます!第2章から読んだ!という人も是非第1章から読んでいただけるとより面白くなると思いますので良かったら読んでください。さて、今回話の内容としてはさほどストーリーは進んでいないと思います。何故か、それはやギャグを入れる事によって寄り道しまくるからです(笑)ですがしっかりストーリーもこれからは書いていきたいと思います!と言っても日常系なんですけども。
第3章はいきなり魔女裁判から始まるのでお楽しみに!それではまた次章出会いましょう。