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アルマ  作者: のぶ
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1 神の国の訪問

 アルマが、神を謁見した日、聖なる死者が鏡の奥で最後の審判を待つところだった。鏡に、アルマは映らなかった。それは何を現すかもわからない。死も生も駆け抜けた、あの鮮やかな夜を、アルマは今も覚えている。

 アルマの部屋に陽が差し込み、アルマはそれをもとに今日も目覚めた。ダレかが死に、ダレかが生きて、そしてダレかを愛でた希望の朝に、死者はいつまでも天国への旅を待つこともなかった。

 アルマが街に出て、外を歩いた。外にはいろんな建築物があった。ことごとく神は瀕死の重病人の最期を、見ようとはしないのだ。そして神は人の死を待った。太陽が降りたのと同時に重病人は死者の書に名を書かれて弔いを待つことになった。行旅死亡人の集まりだった。それはダレを宥めるのかもわからない。まだ朝は夢を壊すことがなかった。

 アルマは空を見た。空は紺碧にくれない、そして朱い夜の訪れをもう少しの楽で音を切るのだろう。

「いつくしみには正義に新しい内容をもたせる力があります。それは、ゆるしとなって表現されます」

 という、教皇ヨハネ・パウロ2世の祈りが空からささやかれた。

 世界が壊れるにはまだ時間が足りない。アルマは世界を修復する係りを名乗り出た。それは死を知る人間が最後まで待ち望んだマボロシなのかもしれない。

 アルマが謁見した鏡の奥に神が存在した。そして神に仕えるトマス・アクィナスが神の存在証明を神学の文書として信者に配っていた。それから少ししてある修道士によりヴィッテンベルク城の教会の扉に提題が張り付けられた。宗教改革の始まりだった。帝国議会もその修道士を呼び、修道士は「ドイツ国のキリスト教を信ずる貴族へ」という演説を帝国議会で行った。修道士は「魂は贖宥状では救われない」と演説した。少しして神聖ローマ皇帝カール5世が現れた。「1415年にフスが火刑に処されたことは知っているだろう。主張を取り消しなさい」と修道士に勧めたが、修道士は拒否した。次には教皇レオ10世が出て修道士に破門を言い渡した。最後には煉獄で魂の浄化を待つ最後の東ローマ皇帝コンスタンティヌス11世が夢から覚めてアルマを修道士に導いた。アルマは薔薇を修道士に渡した。その瞬間、光が満ち溢れて讃美歌が鳴り響いた。清らかな国で熾天使が斉唱した神の歌を、まだアルマは聴いたことがなかった。

 こうしてアルマは初めての神の国の訪問を日記に記載した。


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