No.99
No.99
「……ぅう、もう朝か、ふぁああ、ねむ……」
木漏れ日が顔に当たり。それにより目が覚めた。
風呂から上がった後。家に帰りもう一眠りしようと考えたが。トウカが自分のベットにいることを思い出した。
トウカ用に作ったベットで寝てもよかったのだが。夜中にまた寝ぼけてベットに潜り込まれる可能性もあると思い、外で寝ることにした。
「野宿なんてこの世界に来たとき以来じゃないか」
眠い目を擦りながら顔を洗い。火を焚き食事の準備をすることにした。
火を焚き始めた頃には、ピンクサルが起きたのか、川原へとやって来た。
「おっす。おはよう」
「ウキキキィ」
「ちげよ!? なに言ってんだお前!?」
どうやら昨日の奴のようだ。本格的に誤解しているようだ。
その後も準備をしながら言葉を尽くし、なんとか誤解を解くが。完全には解けていないような気がした。
(これもきっとあのハルシオンのせいだな)
あいつが出てくると余計なトラブルが増えるような気がする。
本人が聞いたら『俺っちなにもしてないよね!?』と言いそうだが。そんな事は知ったことではない。ただの八つ当たりだ。
そうこうしている内に他のピンクサル達や、昨日作ったデカティーを着たトウカが起きてきた。
「おっす。おはよう」
「「「「ウキ!」」」」
「…………おはよう、トウイチロウ……ふぁ」
手を上げ元気に返事をするピンクサル達と違い。トウカはまだ眠そうだ。
「まだ眠いのなら寝ててもいいぞ」
「ううん、おきる……」
起きると言っているがまだ半分寝ている感じだな。
トウカに顔をでも洗ってきなと促し。ピンクサルに一緒に付いて行ってやってくれと指示も出しておいた。
そして竈の火を確かめ。パンでも焼こうかなと考えていると大きな声が上がる。
「わぁああ! トウイチロウトウイチロウ! これすごいよ!」
跳び跳ねるようにこちらに来るトウカ。
(ええい跳ねるな! その服を着ていてもお前さんの隠しきれん胸も一緒に跳び跳ねるわ!)
平静を装いながらトウカを落ち着かせ、何があったのかを聞く。
聞くとどうやら水車の事を言っているようだった。
「あのね、くるくる輪っかが回って、水を運んでね。その水が木でできた道を通って、石のお盆に溜まるの!」
まあ一応説明しておくと。
米や麦を製粉するために水車を以前作ったのだが。作ってすぐに【製粉加工】の習得技が取れてしまったので。他に使い道がないかと画策してた処に、思い付いたのが洗面台を作ろだった。
今トウカが言ったように。水車で上げた川の水を、【木材加工】で作った木の水路に流し込み。これまた【石材加工】で作った、円柱型の石柱の天辺に深皿を作り。そこに水が貯まるように作った。
貯まりすぎた水は、少しずつ川に戻るよう作ってある。
一応ピンクサル達も使いやすいように踏み台も作ったのだが、あいつらは顔を洗うためではなく。飲み水場として使用している。まあそれも間違った使い道ではないとは思うんだが。
「ここすごいね! いっぱい物があるよ! 全部トウイチロウが作ったの?」
大はしゃぎである。
昨日も見てると思うのだが、どうやら昨日は緊張していてあまり気に取れなかったようだ。
色々見て回ってもいいが。一応火の側や川の近くへは、近づき過ぎないように注意をしておいた。
「さて、朝飯は何にしようか? トウカはなにか食べれない物あるか?」
「ううーん、ないよー」
ピンクサルに案内されながら、あちこち見て回っているトウカに聞くと。手を大きく振りながら答える。
「冷蔵庫の中を見て考えるか」
冷蔵庫と言っているが、みんなが思っているような、電気で動くあの冷蔵庫では無い。
石を四角くくり貫き。その中を川の水が循環し、中を冷やすよう作った。
後は日の当たらないような場所に設置してあるので、以外と涼しくできた。
「中に在るのは野菜と、なぞの肉が少しか……ん? この肉そろそろ食べられなくなるのか、じゃあ処理がでらに食っちゃうか」
【万物の瞳】で確認したら、もうすぐ食べられなくなると記載されていた。
しかしこの肉、冷蔵庫の中に入れてあったとは言え。一週間以上持つな。普通こんだけ持つものなのか? まあ食えるならなんでもいいや。
で、あったものは肉、玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモ、ピーマン、ブロッコリー、トマトか、ピザでも作るかな。
そうと決まれば後は作るだけ。小麦粉を取りだし、塩と水を加えこねて生地を作る。
出来上がったら【成熟加工】を使い発酵させる。
「時間を待たない上に、イースト菌とか入れてないのに膨らむから楽だ」
少し待ってる間に具材を切り、火の通りにくいものは少し火を通しておく。
そしてトマトを切り、潰してソースのようにする。
完全に潰しきれないが良いだろう。
それが終わる頃には膨らみきるので、打ち粉用の粉を撒き、麺棒で伸ばす。
職人さんの様に手でくるくる回したいが、一度やってあらぬ方向へ飛んでいったので二度とやらない。
丸くはないが一応できた。
切った具材を乗っけて窯の中へ入れる。
この窯も耐火用作りではないから何度も壊れた。そしてその度に直した。
(これで何十代目だっけ?)
十から先は数えるのをやめた。面倒臭くなったし。
焼いてる間にピンクサルに、今日は魚が罠に入っていたかと聞いたら、いないと言う返事があった。
残念だ。朝は一品オカズがない。
ピザだけじゃ物足りないので、何か作ろかとも思ったのだが。残っていた野菜類も全部ピザに乗っけてしまったので何も残っていなかった。
「しゃあない。ピザだけで我慢だ」
暫くすると香ばしい匂いがしてきたので、もう少しかなと窯を覗く。
満遍なく焼けてるようには見えないので、熱の場所が悪いのかと位置をずらす。
そうするとムラもなくなく焼けてるような気がするので、そのまま焼き続ける。
「よーしそろそろいいかな」
一応【万物の瞳】で出来上がりの確認をする。
【あつあつ手作りピザ】:余り物の具材で作ったピザ。チーズが使われてないので、星二つ。あれば四つをあげるよ。
今製造中でねぇよ。まあ出来栄えとしてはそれなりかな。
「朝御飯できたぞー」
「はーい」
「「「「ウキキー?」」」」
「今日はピザだ。ところでトラさんは?」
「「「「ウキ~」」」」
さいですか。腹が減ったら起きるだろう。
んじゃ、先にいただくか。




