No.98
No.98
「……ぐぉおお……ふくらみが………ポヨンポヨンが……」 バッフン
トウカの無邪気なアタックにより、眠るように気絶した自分のベットに。誰かが横になる気配を感じ目が覚めた。
「…………だれだ? またピンクサル達かっ!?」
「……すぅ……すぅ」
ピンクサル達かと思い目を開けてみれば、そこにいたのはトウカだった。
「ーーーぅ!?」
声にならない声とはこの事だろうか。
声がつまり叫び声すら出なかった。
(なんでトウカが!? ちゃんとベットは用意したのに!?)
「……すぅ」
混乱する頭で考えようとしたがまとまる筈もなく。さらに混迷を極めそうになったが、相手がただ寝ているだけだと気づき。寝ぼけてこちらに来ただけかと、ほっと息をついた。
「まったく。見た目は大人、中身は子供。迷探偵の少年かって言うの」
無邪気に眠るトウカを見つめる。
「少しは自覚してくれ、お前さんは美人なんだ。そんなのが自分の近くで無防備な姿をさらされたら、こっちの心臓が持たんよ」
「……すぅ……かあさま、トウイチロウ……」
寝言に自分の名前が出ていることに半ば苦笑しながら。
「今日会ったばかりの人間なのに、よくまあそこまで信頼を寄せられるかね」
そんな無邪気に慕われるトウカの頭に、手を持っていこうとしたときに。
「ウキキ?」
トウカの向こう側、つまりピンクサル達が寝ている方から声がした。
「*▼#§%♂ゑ!?」
言語にすらならない声が出た。
(お、脅かすな! 誰かと思っただろうが! それと小声で話せみんな寝てるんだから)
声をかけたピンクサルに小声で話す。
「ウィキィキキィ?」
それでも意に返さず聞いてくるピンクサル。
何やら白い目で見てくるピンクサル。
おい、なにか誤解してるな。こっちとらヘタレに定評がある人間だぞ。お前とこのハルシオンと一緒にするなよ。
(トウカが寝ぼけて自分のベットに来たみたいだから起こそうかと)
「ウキキ?」
(本当もなにも事実だよ!)
完全に自分が良からぬ事をしようとしていたと思っていやがる。
そして暫くじぃ~と見ていたピンクサルは、ため息をつき。
「ウキキィ」
と言って再び寝に入った。
「おいちょっと待て! それは本当に誤解だぞ!」
思わず小声にするのも忘れ声を大にして言った。
「むぅ……トウイチロウうるさい……トウカねむい……」
今の声でトウカは少し目を開け文句を言ってきた。
「ああすまん。寝てていいからな、静かにしてるから」
「うん…………すぅ」
トウカは再び目を閉じると再度寝に入ったのだ。
「ふぅ……なんで自分がこんなに慌てなきゃいけないんだ?」
妙な汗もかいてしまった。
「風呂も入らなかったし、水風呂だろうけど入るか」
トウカを起こさないよう、そっとベットから抜け出て外へと向かう。
川原まで降り風呂を確認すると、やはりもう水に変わっていた。
服を脱ぎ、風呂へと入ると水の冷たさが体に染みた。
「おぉう!? 冷てぇ! 日が上ってからにすれば良かったかな。ああでも朝だとトウカが起きてるか。その辺も考えていかないとな」
異性がいる生活と言うのを改めて考えなくてはいけないな。
しかし今日はなんとも濃い一日だった。
新たな資源場所とファンシー動物が確認できればなあぐらいの気持ちでいたのに。ふたを開けてみればトラさんとの出会いに始まり。トウカやオルテガさんの問題。帰ってくればエヴァとハルシオン、そして新しいティグリスに出会った。
「言葉にすればこれだけなんだがな。濃かったわ、特にオルテガさんとの約束ごとはどうすっかな」
気分的にはあまり門の向こう側へは行きたくないが、約束はしている。一月はあると考えるか。一月しかないと考えるかだ。
「門の入り口近くでコツコツやれば何とかなるかな。そうとなれば明日は準備を整えておこう。前回みたいなヘマが起きないようにしないと、あんな幸運は二度とないだろうし」
門の中で必要そうなものをリストアップしていく。
「いやだ何だ言ってた筈なのに、結局門へ行くことになるか……。ハルシオンが言っていた通りになったな。あいつもしかして予知とかでも使えんのか?」
もしそうなら持っちゃいけないタイプの奴が得てしまった力じゃないか?
うーんでもあいつそんな自慢気な事は言ってなかった気がするし。ただの偶然かな。
「まあ考えても仕方がないか。少し忙しさは出てくるだろうが、明日はのんびりとした一日にしたいな」
水風呂に入りながら、明日は明日の出来ることをしよう考えたのだった。




