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No.93





 No.93




 『霊魂(みたま)分け、ですわね『だな』』


 話が終わり、ドリルのお方と金髪男が出した結論はそんな言葉だった。


 「霊魂分け?」

 『ええ、本来は術を用いて自らの魂を一時的に複数に分け。別の器となりうる物に乗り移させ、遠隔操作などを行うものなのですが。それの術を行った時に失敗すると、複数の人格ができる場合がありますわ』

 「失敗……」

 『ですがあの子の場合、話の総合からすると。術としてそれを行ったわけではなく。自己防衛として無意識にそれを行った可能性がありますわね。勿論これは(わたくし)の意見ですが』

 『可哀想に俺っちが慰めてあげたい!』

 『貴方ね……その両手をわきわきさせるのをやめなさい! 卑猥ですわ!』


 精神の分裂。解離性同一障害。所謂、二重人格と言うことだろうか。


 「この場合はもとに戻ったと言うことなのか? それとも」

 『今のあの子(無垢な子)も、貴方があったその子(無感動な子)も、どちらもあの子(トウカ)であることに変わりはありませんわ』

 「じゃあ、今後はあの状態でトウカは安定すると言うことなのか?」

 『(わたくし)は医術にはそれほど詳しくはありませんからなんとも言えませんが。もうひとりの無感動(あの)子が再び出る可能性もありますし。このまま無垢な(あの)子の状態のまま続くかもしれません。他の可能性だって有るかもしれませんわ。どうしても気になるのでしたら、医術に詳しい子がいますわ。その子を探してみるのも良いかもしれませんわね』


 そうか、取り急ぎトウカの事はどうこうなると言うわけではないんだな。良かった。

 そしてそう言い終わったあとのドリルのお方は、口に手をやり小さく笑いながら。


 『ふふ、大分(わたくし)にも砕けた口調で話せるようになってきましたわね』

 「あっ! すいません馴れ馴れしかったですか?」

 『いいえ、寧ろ(わたくし)としてはそちらの方が嬉しいですわ』


 今日はあの口調でいたから疲れてきたところで出てきたんだな。本人も言ってることだしそのままでいくか。もう面倒臭いし。


 「そうか、じゃあこのままで話させて貰う。出てきてる間に聞きたいことがあるんだが」

 『まったく、(わたくし)助言者(アドバイザー)じゃあありませんわよ。庭師なんですからね』


 そのオーバーホール(服装)で庭師と言うならわかるが。その髪型(ドリル)で庭師? ああ、木の剪定や穴堀に向いてーー


 『向いてませんわよ! 人の髪型を揶揄するのはやめてくださいまし』


 むっ、また口に出てたようだ。これからは気を付けないと。


 『それで何が聞きたいんですの? 言っときますが(わたくし)だってなんでもは知りませんわよ。知ってることだけですからね』


 おっふ。まさかフリもせずに、そのセリフを言うとは。


 『なんですの?』

 「いいえなんでも。それで聞きたいことと言うのはひとつは自分が使っている光の魔法に関してだ」

 『魔法ですか……専門外ではありますが少しくらいならアドバイスは出来ますわよ。それでどんなことですの?』


 見て貰った方が早いと思い。加護状態(獣化)にして、いつも使うように魔法を作り出す。


 「こんな感じに作り出すことは出来るんだが、如何せん威力やら何やらが弱い。これをどうにかできる方法を知っていたら教えてくれ」

 『鍛練しかありませんわよ、それ』


 にべもない。


 「……いやそう言う事じゃなくてな……」


 もっとアドバイスはないのか。


 『どんな問題事かと身構えましたが、貴方が使っている魔法は問題なく術として構成されていますわ。あとは純粋に貴方の力量が足りないだけですわね』


 むう、そうなってくると。【魔力操作】を鍛えるより『魔力』そのものの数値を上げた方が良いのか?

 オルテガさんの件もあるから仕方がないが。結局あの門へ行ってレベル上げをしないと、自分の魔法は使い物にはならないと言う事か。


 『それにしても貴方は面白い術の使い方をしますのね。使い方は法式なのに組み方が法式より術式に為っているなんて』


 えっ? なにどう言う事? 


 「自分の魔法の威力があんなんだったから色んな人の意見をまとめたり。特にあなたの魔法を見てからああ言う風にしたんだが」


 それで合点が言ったと言う顔をして。


 『なるほどですわ。術文の組み立て方が(わたくし)に似ていると思ったら、真似をしていた訳なんですのね。まったく意味ありませんわよ、それ』


 えっ!? えぇえええ!? ど、どゆうことですかぁああ!!


 『今言ったように(わたくし)が使っているのはあくまでも魔術であって、貴方が使っているのは魔法なんですのよ』

 「ええっと、その違いがわかりません……」

 『()()に聞きませんでしたの』


 恍惚な笑みを浮かべている下に居る()()を指差した。


 「要らないと言って加護を押し付けて。その後、ピンクサル達(あいつら)を通して説明があっただけで詳しいことはなにも」

 『なんで説明ぐらいしないんですの貴方は……』


 ため息を付き。()()に思いっきりひっぱたくと『ア、フゥ~ン❤』と、ため息のような声を漏らした。


 『ひぃぃぃいいいですわ!? もうほんと嫌ですわ、この男は!!』


 身震いする自身を抱き締め、心底嫌だと言う顔をしている。


 「あのーそれで魔法と魔術の違いって……」


 話が進みそうで話が進まないな、この人達といると。














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