No.92
No.92
『ウキキッ。やあ久しぶり兄ちゃん。元気してた?』
「ウキ」
沢山の食材を囲みピンクサル達が思い思いに食べているなか。主賓席に座るが如く居たのは、以前自分に加護を与えた金髪エロ男である。
『兄ちゃん、なんか形容詞が増えてない』
「人の心を読むな! 人が要らんて言ってるものを無理矢理寄越しやがって!」
『だけどそのお陰で助かることもあったろ? ウキキッ』
「ぐっ……確かに」
特にオルテガさんの件は、カツヲの時の様ならなかったが、あれはあれでトラブルではあった。
「ってかお前。すぐには起きられないみたいな事言ってなかったか」
『うーん、それなんだかな』
『その件については私が説明いた済ますわ』
そう言っていつの間にか現れたのは、ドリルのお方。この人は以前門へと行った時に助けて貰った人だ。
『だからどうして私の事をドリルと言うんですの!』
この人も平然と人の心を読んでくるな。以前はこんな事は無かったんだが。
「トウイチロウ、トウイチロウ。みんなお口から出てるよ」
「にゃ~ん」
「なっ!?」
なん、だと……!? まさか今までの考え事ががすべて聞かれていたと!?
『はぁ、たまに口から漏れてますわよ。ほんと貴方はあの子に似てますわね』
『ウキャキャッ。な、言っただろ。この兄ちゃんあいつそっくりなんだよ』
ため息を吐きながら頭痛がすると言わんばかりに額に手をやるドリルのお方と、腹を抱えながらこちらを指差し笑う金髪男。
『まあ、それで何で私達が居るかを説明いたしますわ』
この先ドリルのお方から長ったらしい説明が入るのだが、割愛して簡単に言うと。どうやら原因は自分らしい。
更に正確に言うと【陣地作成】の影響のようだ。
聖地は膨大で様々な星力と呼ばれるエネルギーが渦巻くほど有る場所。
そんな場所で力を溜めようとしても、必要のない力が入って、それを処理するので時間が掛かるらしいのだが。
この場所だとその渦巻くほどの星力が無く。自分に必要な力だけを選び取り溜める事が出来るそうだ。
うーんそれにしても。
「どうしてこう、星力だの、精力だの、魔力だのと言い方が違うんですか。もっと統一してください」
『それは仕方がないですわ。私達が生きてきた時代はそう言っていましたもの。どうしてもお嫌でしたら、貴方が一つの言葉に統一するように仕向ければ良いんですわ』
「そんな面倒臭い事したくないです……」
『なら慣れるしか有りませんわね。今回は貴方に合わせて言葉を変えて差し上げますわ』
それは助かる。しかし意味合い的には分かるからいいが、その内多く出てきたら分からなくなりそうだな。
取り合えずその土地の方言と思って我慢しようと思っているところに。袖を小さく引っ張られる感覚があった。
「トウイチロウ……」
「ああ申し訳ありませんトウカ、ほっといてしまって。ピンクサル達こちらはトウカ、今日から隣人になる人だ。で、頭の上に居るのが遊びに来た、風天虎だ。それぞれ挨拶!」
「「「「ウキキー!」」」」
声を揃え挨拶するピンクサル達。その中には手を上げたり叩いたりして、歓迎を表している者もいた。
「うにゃ~ん」
「……ええっと、ええっと、トウカです」
互いに挨拶がし終わると、ピンクサル達はトウカの方へより。食べ物を進めたりして接待し始めた。
トラさんも頭から降りその輪の中に入り食べ物を摘まみだした。
『ヘエ~この男の守護する獣とは思えないほどの優秀さですわね』
「まあこいつらはこいつらで、元々好奇心旺盛な上に世話好きでもあるみたいですからね。その男とは違って」
『ヴギャギャッ! ボインちゃんが、新たなボインちゃんがそこに! うぉおおおお! 退いてくれ姉さん! 姉さんの尻に座られるのは俺っちとしても本望だが。まだ見ぬ乳を制覇したいは男のロマンなんだ!!』
『私だって嫌ですわよ! 貴方なんかお尻に敷くのわ。ですが、こうでもしないとあの無垢な乙女に飛び込んでいきかねないでしょうが!』
『おおぉおおお!! 姉さんが乙女と断言した! たぎる! たぎるぜ、俺っちはぁあああ!!』
『何度も言いますが。乙女の意味を卑猥な意味で捉えないで下さいまし!』
背中に乗られ、振り落とそうと思えば振り落とせる筈なのに。それをしないところを見ると。胸も尻も捨てがたいんだろうな。理解は出来るけど今はしたくない……。
『まったく、少し黙っていてくださいまし! 貴方のせいで話が進みませんわ。ええっと、それでどこまで話しましたかしら?』
「あなた達がこんなに早く出てこられる理由が分かったところですね。次はどうして出てきたかが分かればなお良いですが」
『そうですわね、だから大人しくしていなさい! ただでさえ座り悪いんですわよ!』
じたばたしている金髪男の尻を叩くドリルのお方。叩かれると『アヒィー!?』と変な奇声を上げる金髪男。だがあの顔はどう見ても喜んでいる顔だ。うん、あれは自分には理解出来ないものだ。
「あのー続きは……」
『ああ、申し訳ありませんわ。続きですわね。私達が出てきた理由は、そこのおさるさん達が何か良く分かりませんが酷く落ち込んでいましてーー』
「ああはい、結構です。何となく察しました」
『あら? そうですの?』
やっぱり落ち込んでいたか。どうせこの金髪男が力が溜まったことで出てきて、なんやかんやで宴会が始まったんだろ。
出てきた理由としては落ち込んだピンクサル達を心配してと言ったところか。その辺は誉められるんだが、あれじゃなあ。
『あの名峰を思わせる山脈の如き胸も捨てがたいが! こちらの程よい弾力を持つお尻も捨てがたい! 俺っちは、俺っちはどっちを取ったら良いんだぁあああ!』
『ああ! 気持ち悪いですわ気持ち悪いですわ!! でもここで我慢しないとあの乙女が! 葛藤ですわ!』
なんと言うか、この二人が揃うと愉快だな。見ている分には楽しいと言うやつだ。
「ところで今も言っていましたが、トウカの事を無垢な乙女だと」
ドリルのお方はこちらをキッと睨み付け。
『貴方も卑猥な意味で捉えますの!』
「違います違います! 少しトウカの事について気になることがあったので。もし何か分かればと思いまして」
ドリルのお方は少し考えてから。
『そうですわね。あの無垢さはあの子の年ではあり得ないモノなので、気にはなっていたんです。貴方が話せる限りで構いませんわ。話してくださいますか?』
頷き、今日出会ってからのトウカの様子を話した。




