No.91
No.91
「トウイチロウ、トウイチロウ。あれは何?」
「あれですか。あれは、【ギョウジャニンニク】ですね。食用にできる野草です。こんな所に在ったのか。見てるようで見てないんだな」
「食べられるの?」
「食べれますよ。独特の匂いがありますが。そうですね、少し持って行きましょうか」
「うん!」
目覚めてからのトウカは本当に子供の様な性格になってしまっていた。
色々なものに興味を持ち。今もギョウジャニンニクを抜き取り笑顔でこちらに寄ってくる。
「トウイチロウ、採ってきたよ。はい」
「根は残して置きたかったんですが、まあ明日になればまた生えてるか。ありがとうございます」
「にゃ~ん……」
「だから独特の匂いが在るって言ったろう」
頭の上のトラさんが前足で鼻を押さえて抗議してくる。
そんなトラさんには我慢をして貰い。トウカからギョウジャニンニクを受け取り。頭を撫でてあげると「えへへ」と、はにかみながら喜んでいた。
わがままになってくださいと言った覚えはあるけど。子供になってくださいとは言ってない気がするんだが。一体彼女の心境に何が起こったんだろう?
まあそれでも今の彼女は会った時と比べ。笑顔が増え、幸せそうではあるのだから。暫くはこのままでも良いと思ってしまう。
「もう暫く行けば家に着きますね。疲れていませんか?」
「にゃ~ん」
そりゃあ、トラさんは頭に要るから疲れんでしょう。
「ううん、大丈夫。ねえねえ、トウイチロウのお家はどんなお家?」
「自分の家ですか? 先程通って来た竹と言う植物を使って、大きな木にくっ付く様に建てた。二階建ての家ですね」
「大きな木? くっ付く?」
「見た方が早いかもしれませんね。ほら、あれがそうですよ」
指差す方向には今朝出たばかりなのに、随分と久しぶりな気がする我が家があった。
「わぁああ、すごいトウイチロウ! 家の真ん中から木が生えてるよ!」
「ははは、あれは生えてる要るんじゃなくて、木の回りを囲うように家を建てたんだよ」
「にゃ~ん」
いやだか違うって。木と建物じゃ種類が違うでしょう。
プレハブ小屋だった家を増築していった結果。まだ未完成だが、ドーナツ型の様な形に為っていった。
大きな木に関してはある程度剪定して整えた。
流石に無作為に伸びた枝を、そのままと言うのはどうかと思ったので。
それ以外では一切大きな木に手は入れていない。
この世界に来て一番最初の家。多少の思いは有る。なので出来るだけそのままの形で残したかったのだ。
「家に荷物を置いたらうちのピンクサル達を紹介しましょう」
「……怖い人?」
どうやら今のトウカは人見知りがあるようだ。
「トラさんと同じ賢獣ですよ。賑やかな奴等なので、すぐ友達になれる筈です」
好奇心旺盛な奴等の事だ。トウカやトラさんをほっときはしないだろう。
「にゃーん」
「この子と同じ……」
頭にいるトラさんを見ながら何やら頷いているトウカ。
自分の中で何か納得できるものがあったようだ。
「誰が居るかは会ってからのお楽しみで。さて家に行きましょう」
それにしてもいい加減このしゃべり方も戻したいな。ずっと喋っていたから慣れはしてきたけど、疲れることには代わりはない。だからと言ってタイミングがなぁ。
「うにゃ~ん」
「トウイチロウ。あっち側から音が聞こえるよ」
考え事していた自分に二人の声が自分を呼び戻す。
そして言われてそちらの方に意識を傾け耳を澄ますと。川原の方でピンクサル達が何やら楽しげに騒いでいた、
「ああどうやら、うちのピンクサル達が川原で騒いでいるようですね。あの様子だと、宴会でもしてるのか?」
「宴会?」
「にゃ~ん?」
「えっと、つまり沢山の食べ物や飲み物を出して、食べたり飲んだりして楽しむ催しですかね」
「楽しいことなの?」
「楽しんで貰う為の物ですよ」
そう言うと笑顔を見せるトウカ。頭の上でもトラさんが、たしたしと人の頭を叩き早く行くよう催促する。
二人に「荷物を置いてから行きますから」と、家に荷物を置き。それから川原へと向かった。
宴会か……。朝の予想では、高速羽根つきモドキで壊れたボールに意気消沈したピンクサル達を、予想していたんだけどな。
見事に外れたか。まあ暗い奴等より騒いでいる方がらしいと言えばらしいけどな。
そして川原へと降り立ち、川原では騒ぎ通りに宴会をしていたピンクサル達と。それから予想にもしなかった人物が、その宴会には混ざっていた。
「何であんたがまたそこに居るんだよ!」




