No.88
No.88
「構いません……。ですがどうして私にそんな事を話してくれたのですか? 黙っていれば良いだけなのに」
何かを探るように、然れど何かを期待するかのような目でこちらを見続けるトウカさん。
「始めにも言いましたが。奥に来れば、そこが異様だと言うことがすぐに分かると思います。隠していても隣人に為るのであれば、互いに不信感が募るでしょう。であるならば先に打ち明け。理解をされておいた方が、互いのために為ると思ったからです」
彼女が自分の保身のために、この情報を売らないとも限らないが。何となくそんな事はしそうもないと思っては要るんだよね。まあただの勘だけど。
「…………私はあなたの様な秘密が有る訳ではありません。この対価はどう払えば良いのですか?」
ああそう考えちゃったか。
「対価は要りません。あ、いえ必要ですね」
自分はトウカさんの顔を真っ直ぐ見る。
顔を強張らせ、若干赤くなっている。
別に変なことは言いませんよ。
「対価は…………隣人の方と仲良くと。それと出来ることなら、今の話はなるべく内緒にしてください」
呆けるトウカさん。
「そんな簡単なこと…………いえ分かりました。あなたの秘密は死んも話しません」
「死んだら元もこうもないでしょう!? その時は素直に話して良いですから!」
「ですが……」
まだ迷い渋るトウカさんに。
「自分の秘密なんかはオルテガさんや海人族の方にも少し話しているんです。勘の良い方や察しの良い方が居れば、いずれは辿り着くことですよ。そうですねどちらかと言えば、トウカさん自身をを守るための情報を得たぐらいで良いんですよ」
「それはどう言う……?」
これ言うと余計に気にしそうだけど仕方がない。
「トウカさんの術士としての力より、自分の力の方が有用性が高いんと思うんです。だがらその情報を売ってトウカさんはーーー」
「駄目です! それは駄目です!」
少し涙目になり強気に言うトウカさん。
「他人の為に自分を犠牲にしては……駄目です」
何か辛い記憶を思い出したかのように俯く。
そう言えば鬼の国は男尊女卑の強い国だったな。もしかしたらそこでトウカさんの母親は……。
迂闊な受け答えだったな。…………駄目だな、やっぱり女性との会話は上手くいかない。
「……例えの話ですよ」
イヤイヤと首を振り耳を塞ぐその姿は、幼子の様にに見えた。
「…………すみません。何か辛いことを思い出させてしまったようで」
トウカさんの頭に手をやり、あやすように頭を撫でる。
この人は感情表現が少ないんじゃない。表現の仕方を知らないんだ。
だから極端に行動したりすることが多いんだ。
どうすれば良いのか。
どう行動すれば良いのか。
それが分からないから耐えてしまうんだ。そしてトウカさんの知ってる唯一の感情の時のみ、こうやって爆発するように現れてしまうんだろう。
「トウカさん。先程の秘密の条件に一つ、足させてください」
溢れる涙を拭きながら頷きこちらを見るトウカさん。
「今度の条件は難しいとは思います。ですがあなたの生涯を掛けても、必ず成し遂げてください」
言葉は出ないが何度も頷く。
「その条件はーーー」
彼女の目を見る。
かなり、いや、かなり何て言葉では表せないほどの苦労や困難な人生を歩んできたんだろう。
だからこそ、自分の手の届く範囲にいる間はーーー。
「もっとわがままに生きてください。自分のしたいこと。やりたいことがあったら我慢をしないでください。それが手伝える範囲であるなら自分は喜んでそれを手伝います。そして、必ず幸せになってください」
クサイセリフだとは思うんだけど。トウカさんはそゆう生き方をしても良いと思う。
まだ会って間もない人だけど。トウカさんはそれをする権利を手に入れた人なのだから。
それをしないで要るなんて、余りにも勿体なさ過ぎる。
「えっ…………かあ、さま?…………はっぐっ! ふぇええええん!!」
あやしていた自分に誰かを見たのだろうか。
大粒の涙を流し。忘れていた感情を思い出すように、泣き続けるトウカさんがそこにはいた。
「にゃーん?」
しっ! 黙ってなさい! ここんとこシリアス展開で崩したいのは分かるけど、もうちょっとだけ我慢してなさい。自分だってこんな展開はつらいんだよ。
早くいつものぐだぐた感に戻りたいんだよ!




