No.84
No.84
「自分が来る前の事情は大体分かりました。そうなってくると一つ疑問が上がります」
「なんだ?」
「何故オルテガさんは自分を攻撃したかと言うことです」
オルテガさんの今回のタイミングの悪さには同情するが。しかしだからと言って自分を攻撃する理由が分からない。
トウカさんの死体(まだ死んでない)を発見されそうになったから? 理由としては分かるけど少し弱い気がするな。
「トウカの死体を見られそうになった、と言うのがある」
おいっ! マジでその理由か!?
「渡界者と少年は言ったが、最初トウカを。術士を探しに来た、別の国の使者かとも思ったからだ」
「前者の理由は分からなくもないですが、後者の理由が分かりません」
うんその場合見られたとしても、知らぬ存ぜぬで通せる可能性もあった筈だ。他の理由をでっち上げるとかもできただろうし。
「今の答えで少年が国に使える者じゃないと言うのが答えだ」
「どう言うことですか?」
意味がわからんぞ。
「術士や加護者は国にとって無くては為らない存在だ。その為その者を殺せば。例え他国からの勧告であったとしても、国にとって無視できるものではないのだ」
フムフム、あの場合。例えオルテガさんが知らぬ存ぜぬで通しても、自分がオルテガさんの国。もしくは隣国にその事を伝えたら、オルテガさん自身だけでなく。国にも幾らかの打撃が入ったと言うことか。
「それはオルテガさんの国のみですか?」
「いや、程度の差はあるだろうが。すべての国が術士や加護者の保護に力を入れている。でなければそれだけの力量者。鬼の国では自分の自由意思では、外へ出ていく事すら叶わない」
チラリと後ろにいるトウカさんを見ると頷いている。オルテガさんの言うことは正しいみたいだ。
出国すら自由意思がないのかよ!? どんだけ酷いんだ、オルテガさんの国は!?
「そうですか。その辺の事情も分かりました。まあ安心出来るか分かりませんが、自分はこの聖地から出る気が今のところ有りません。だから何処かへ連絡することはできません」
その言葉に後悔したように「そうか、俺の勇み足か」と呟いていた。
「では次ですが…………。少し喉が乾きましたね。量はそれほど有りませんが、飲み物でも飲みながら続きを話しましょうか」
竹筒を取りだし、ミスリルのコップを作りその中に水を入れる。
コップを作っている時にオルテガさんが、ポカンとした表情でこちらを見ていた。
「ただの水で申し訳有りませんがどうぞ。トウカさんも、トラさんもな」
「あ、ああ」
「……いただきます」
「にゃ~ん」
オルテガさんだけは水を飲もうとして躊躇っていた。
「毒などは入っていませんよ」
その言葉の吃驚して、そして慌てて。
「ち、ちがう!? そんな事は思ってもいない!」
「ですが何か気になることでも? 一応ろ過もしてありますし、人体に影響は無いと思いますが」
不思議そう思っていると。
「ああ、加工の手際が、昔話で出てくる導師の技のように思えてな。違うと分かっていても、つい縋りたく為ってしまったのさ」
「導師……。先程もその言葉を聞きましたが、術士とはまた違うのですか?」
オルテガさんは何かを思い出すように話す。
「導師、鬼の国ではそう呼ぶな。他の国では盟主や祭主等と呼ぶところがあるな」
盟主? ああカツヲが確かそんな事を言ってたな。同じもんなのか。
「それで導師って言うのは術士。まあ鬼の国では、それらの中から一番力が強い者が選ばれる」
「称号の様なものなのですか? だとするとさっき古の導師がどうとかと言うのは?」
「今ではそう言った意味合いで取られることが殆どだ。だが本当は昔国が、いや、世が乱れた時に現れ。民心を正しい場所へと導いてくれた人の事を指している」
「正しい場所?」
「ああ、少年はこの聖地から出たことがないのだろう。だから知ることがないだろうが、外はこことは違い、豊かな土地ではないのだ」
何となく予想はしていたが、やっぱり外はそんな状況か。まあここが異常なほど物がありすぎるって言う気もするけどな。
「痩せ細った根や葉を食らい。自分達と同じぐらいに痩せた魔獣を見つけては、食らって生きた時代があった」
飢饉時代……。地球でもそう言った時代があったと習ったな。そうなってくると。
「鬼の国では基本考えなしの体力バカが多い。そうなってくると無いところから無理矢理探すのではなくーー」
「有るところから奪えば良いと」
オルテガさんの言葉に続くと驚いたような顔をしていた。
「自分の居た世界でもそう言った時代があったと聞き及んでいますから」
「……そうか、少年の世界でもそう言った時代があったのか。なら分かるとは思うが、鬼の国は隣国と戦争一歩手前まで行きかけた。だがそこに見知らぬ技を使い。複数の賢獣連れた加護者が現れた」
ここで導師の登場か。有る意味タイミング良すぎるな。
「その方は国に、民に数多くの食べ物や資材を与えてくれた。そしてそれだけでなく、これらが何処で集められた物かも教えてくれた」
「もしかしてそれが聖地ですか?」
「正しくもあるが少し違う。少年は異界の門を通ったことがあるか?」
「異界の門?」
「ああその門を潜った先はその場所と似ては要るがどこか違う場所。この聖地にもそう言った門があると聞いている」
土竜やユニ子の所に在った門の事だろうか。
「門がいつ現れたのかは知られていない。ただ導師に言われるまでは誰も知ってはいなかったーーー」
この辺はあの金髪エロ男が言っていた秘密ってやつか。大方その導師が作った迷宮ってところかな。
「ーー門の向こう側には資源を産み出す存在。モンスターが多くいた。ただ力在る加護者でも死ぬことさえあった。そこで導師は素質の有るものを選び。導師が使った技、元術の使い方を教えてくれたんだ」
おっと、考え事をしていたら少し話が飛んだか。元術の使い方か、聞きたいが今は我慢しておこう。
ただでさえ今回は説明回で話が長いんだ。こんな設定があるんだよーぐらいで良いんだ。あとでどうせ誰かが説明してくれるはず。
それに見てみろ。トラさんなんか水飲み終わったら、昼寝始めちゃってるんだから。
「う~にゃにゃ~ん」
「それが術士の始まりですか。加護者の方はそれ以前にも居たと言うことですか……。他にも聞きたいことが多々ありますが。今は聞きたい事が別にあるのでそちらにしましょうか。魔獣と呼ばれる存在とモンスターは別物なんですか?」
オルテガさんは「別に聞きたかったら答えるぞ」と言ってくれるが、そろそろまとめに入りたいんだよ。
「姿が似ている場合もあるが、全くの別物だな。何より一番の違いは魔獣は殺せばその姿が残るが。モンスターは殺せば別の物へと姿が変わる」
ドロップアイテムか。ますます迷宮説が高くなるな。その導師って言うのは自分と同じ転移者や転生者辺りだろうか。
「では国にとって術士や加護者はその異界の門からの資源を調達する人、と言うことでいいのでしょうか?」
「それだけではないが、主だったことはそれに近いな」
「始めの方に戻りますが。その導師が人々にそう言った道を示したのなら。共通認識として同じ名称に為るとは思うのですが。どうして国々で呼び名が違うので?」
「それは言ったろう。世が乱れた時に現れたと。導師は国が生きるのに困難になった時に現れた。だから国によっては呼び名が違うんだよ。その導師によって導き方も違うからな」
何だろう今自分、嫌な予感がして為らない。誰かに否定して貰いたい気分だ。
「……因みにお聞きしますが。各国に現れた導師の方達は渡界者でありましたか?」
「そうだなーーー」
オルテガさんは顎を擦りながら考える。
お願いだから違うと言って!
「渡界者の場合もあれば、そうでない場合もあったと記憶しているな」
くっ! 五分五分! 自分が渡界者だと言っている以上、下手な行動は導師と言う存在にされかねない。
平穏無事が好きな言葉なんだー! 厄介事は御免蒙る。
「今まで知らなかったこの世界の事情が、少しだけ分かりました。取り合えずは次で最後の質問です。オルテガさんはここから出られないと言いましたね。その理由は?」
「それは簡単な理由さ。腕輪の力がもう無いからだ」
そう言ってオルテガさんは着けていた腕輪を掲げて見せた。




