No.83
No.83
火傷用の薬はそんなに無かったので、特に酷い所に塗り。あとは回復薬をかけて放置。
七色珊瑚? いやさあ、あれだけ騒いでいたからヤバイのかなと思ったら。それほど酷くは無いのよ。回復薬とかも要らないと思う。
何故かって? 鬼ってすごいのな。回復力がハンパないのよ。シュワシュワ言いながら焼かれた皮膚が戻っていってるんだもの。
あの様子だと一時間もあれば完治するんじゃないのかな。もちろん薬なしで。
「放っておかれても、鬼ならこの程度で死にはしませんよ」
「ああ、うん。それは何となく見てればわかる。だけどほら。聞きたいこともあるから、なるべく早く回復して貰いたいし」
女性、ええっと、多分この人がトウカさんで良いんだよな?
トウカさんは「……わかりました」と言って、何故か自分の三歩後ろに佇む。
何で後ろに立つの? 盾にするに気!? 何かあった時の為に、自分を盾にする気なの!? こわっ! この人こわっ!
さりげなく横に移動して、そんな事にならないように後ろにも気を配った。
ついでにトラさんにもお願いしたが「にゃーん?」と、しか返事をしてくれない。
何故だ!?
「……うっ、ううぅ……」
どうやら偽者さんは意識を取り戻したようだ。
「……ううっ、お、俺は……生きてるのか?」
「ええ、生きてますよ」
偽者さんは顔だけをこちらに向け不思議そうに訪ねる。
「少年…………なぜ助けたんだ」
「必要以上の殺生が嫌いなだけです。トウカさんにもそれを強要してしまいましたが。先程ので、取り合えず恨みとかは無しにして貰いました」
「……降参はしたが、俺が自棄を起こして。再び向かうとは思わないのか?」
まあ一応それも考えているけど。
バックパックにしまったミスリルを取りだし。【武器加工】を使い、一瞬で斧を作り出し。それを偽者さんの頭に振り下ろす。
「もし次にそんな事になれば。斧があなたの頭に行くだけです」
「な、な……!?」
「…………元術……!?」
あ、やべぇ、これも駄目だったのか!? くそッ、どれが良くてどれが駄目なのか分からねえ!
「少年! いや、あなた様は導師で有られるのか!?」
偽者さんは無理矢理体を起こし、正座をしてこちらに問う。
その姿からは何かを期待、切望しているように思える。
「……導師、と言うのが何かは分かりませんが。この力はこの世界に来た時に得た力です」
「そう、なのか……?」
うん、嘘は言っていない。魔法、この人達が言う元術だろうな、それも一応使えるけど。ここは誤魔化しておこう。うん面倒臭い。
「はい。以前海人族の方が言っていましたが。渡界者は特殊な力を持つことがあると。自分の場合は物の加工が素早く出来ると言う力です」
「そうか……俺達より知がある、海人族が言うのであれば間違いないか……」
これは嘘が混じっている。カツヲは渡界者についてそんな事は一言も話していない。
よし、前の偽者さんは誤魔化せた。
しかし後ろのトウカさんが、すげぇ~疑問な目をこっちに向けてる。やばいなぁ、この人は騙されてくれないかも。
落胆する偽者さん。誤魔化せている間に話を進める。
「そうですね。その辺も含めて事の経緯を聞きたいのですが?」
「ああ、事態がこれ以上好転することがないんだ。答えられることは全部答えてやるよ」
その後経緯を話す偽者さん。あ、本名オルテガさんと言うらしい。勇者になる子供でも要るかな?
☆★☆★☆
「トウカさんが言った言葉?」
「そうだ。それを聞いた時に自分では押さえられない衝動が起きた。そして気がついた時には俺はその女を殴り殺していた……。実際は虫の息だったか」
これは……何と言うか。どっちを擁護すれば良いのか分からなくなるな。
オルテガさんは国を大事に思い。少しでも力在る人を探しに奔走して、見つけたのがトウカさん。
トウカさんはトウカさんで。生まれ故郷である国の為に尽力してくれと頼みに来たオルテガさんを拒否した。
聞けばオルテガさんの国は能力主義の上、男尊女卑の強い国だとの事。
そんな国で育ったトウカは嫌気が差して、この聖地に住み着いた。
そんな国の為に幾ら頭を下げられようとも、再び行く気には為れないだろう。
しかし愛国心高いオルテガさが諦めずに来ようとした時に、トウカさんが不用意に発言した言葉にブチキレ殴り殺しに掛かったと言うこと。
「う~ん……」
この場合。愛国心有るオルテガさんに対して、そんな不用意な発言をしたトウカさんを諌めるするべきか。
それともそんな発言をされると分かっていても、スカウトしなければいけない程の追い込まれている、オルテガさんの国を哀れむべきか。
「……それ以前にブチキレるほどの発言と言うのも気になるけどな」
独り言のように呟いた言葉にトウカさんが答える。
「それはその人の欲に私が触れてしまったからでしょう」
「欲?」
「はい、鬼人族は人それぞれ、大なり小なり持つ欲があります」
聞いていけば鬼の人達は一つ、自分の意思では押さえられないほどの欲を持つと言う。
「なるほど。トウカさんはオルテガさんの愛国心を刺激してしまったと。しかしそんな簡単に衝動が出てしまうものなんですか?」
「他の鬼なら簡単に出るだろな。だが俺はこれでも一応外交の為、外に出ることが多い。だから抑制する訓練はされているんだが、今回は……」
「タイミングが悪かったと」
項垂れるオルテガさん。
何だか聞けば聞くほど、この人が可哀想に思えてくるな。幸運値が自分と同じように低いのかね。




