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No.82





 No.82




 「っぱあ、よし。内蔵類()はこれでいいだろう。後は外傷()を」


 薬を飲ませ切ったことで唇を離し。次の薬を取ろうとしたところで、その手を押さえられた。


 「……もう……大丈夫で……す。ありがとう…………ございました」


 折れ曲がった手を使い、自分の手を掴むその姿は、軽い恐怖(ホラー)を感じさせる。


 「いや何言ってんの!? まだ腕とか折れてるでしょう!? 痛いよね!? 痛いでしょう!? 何で無理してんの!?」


 困惑している自分が可笑しかったのか。女性はくすりと笑うと。


 「【万燈提灯(まんどうちょうちん)ーーー】」


 女性が緩やかに()()()言葉を紡ぐと。黒かった髪が半分ほど朱に染まり始める。

 そして女性の周りに小さな灯火が幾つも現れる。


 「【ーーー快気花(かいきばな)】」


 小さな灯火は花が咲き乱れるように火種が広がると、女性の体を癒していった。


 (おおっ!? 回復魔法か!? すげぇけど、骨がボキゴキ言いながら治るのは嫌な光景だな……)


 巻き戻すと言うより早送りをして要る様に治癒をしている。

 自然治癒能力を急速に高めてやる魔法なんだろうか? どちらにしても体に悪そうな魔法だな。


 「……ふぅ、これでもう平気で……す」


 そう言っている最中にふらついた女性を慌ててその体を支えてやり。


 「ほらやっぱり。今のって体にむちゃくちゃ負担が掛かるやつなんだろ。しばらく体を支えててやるから、じっとしてな」


 女性はぱちくりと目を開き、顔を赤くしたと思ったら俯き。小さく「……はい」と言った。


 (えっ? なに? 自分何かした?)


 「にゃにゃ~ん」


 そんなことをしていると、トラさんがこちらに駆け寄ってきて空中を駆けながら、最早定位置と為りつつある頭の上に着地した。

 頭に収まってからトラさんを労う。


 「ありがとうな、また今度、魚の干物でもやろうか?」

 「うにゃにゃーん❤ にゃ!」


 喜びの声を上げたあと前足をばっと前に出す。


 「それは五枚は欲しいって事かい?」

 「にゃーん」


 よほど気に入ったと見える。やはり虎ではなく猫ではと思ってしまう。

 そんなやり取りをぽかーんとした表情で見ていた女性は、恐る恐ると言った感じで聞いてくる。


 「えっと、賢獣の言葉が理解できるのですか?」

 「……賢獣? ああ、トラさん(こいつ)の事か。うんにゃ、全然わからんよ」

 「えっ!? ですが先程から会話を」

 「会話って言うか、ニュアンスが何となくわかる程度かな。完璧な意思疏通は出来ないしね。ほら人でもあるでしょう」


 出来ていたら魔法訓練など苦労はしていないだろう。


 「はっはっはっは! ほんと笑かしてくれる少年だな。加護者の上に賢獣を従えてるだと。これで元術まで使えたら古の導師じゃねえか。運悪すぎだろ今日の俺は……」


 トウカ(偽者さん)は豪快に笑ってはいるが、愉快だから笑っていると言うより。悲壮感を出さぬよう笑っている感じがする。


 (元術? 魔法の事かな? ここで出来るとアピールすると、ややっこしい事になりそうだから止めておこう)


 「それでそちらの理由は分かりませんが、まだやりますか?」


 トウカ(偽者さん)はこちらを見てため息を吐き、両手を上げて降参のポーズを取った。


 「やめとくよ。そっちのトウカだけだったら何とか為るだろうが、賢獣や少年まで加わったら俺に勝ち目はねえよ。それに例え勝ったからって、俺は空白地帯(ここから)出られねえからな。意味がねえことだよ」


 そう言ってドカリと座り込み。「殺るなら殺りな。それだけの事はしたんだ」と言い放ち目を静かに閉じた。

 カッコいいセリフを言っているところ申し訳ないんだが。声と体がメッチャ震えていますよ。死にたくないなら死にたくないと言えばいいのに。


 「そうですか。その覚悟はr「流石は鬼ですね。では私の炎で黄泉路へ送って差し上げます。【万燈提灯(まんどうちょうちん)蓮華花れんげばな】って、まてー!」


 自分が出れない理由とか聞こうとした矢先。隣の女性がポンポン話を進めていき。ついには魔法まで使い始めた。慌てて魔法(それ)を止めようとしたが、発動までが早く止める間もなく。偽者さんが火だるまへと変わった。


 「ぐっああああああ!!」


 火だるまへと化した偽者さんから悲鳴が上がる。

 あわあわっと慌てながらどうするべきか考えて。女性の意識をこちらに向けるように仕向ければ良いと考えた。


 「ストップ!」


 手を女性の前に持っていき制止を掛ける。

 そうすることで気が反れたのか。炎は弱まり、次第に鎮火していった。


 「……どうして止めるのですか」


 女性が悲しそうな寂しそうな目でこちらを見ている。


 (ええっと、ええっと、言い訳。そうこう言う時の言い訳は何かないか!)


 頭の中で某未来ロボットが、ポケットからああでもないこうでもないと道具を出すように。自分も必死になって考える。


 「生きるために殺すのは良い。だけど恨みや妬みで殺すのは止めな」


 自分は前を向いていた状態から、女性の方へと顔を向け。


 「そんな詰まらない理由で(貴女)を汚す必要はないさ。それにまだ何か思うことがあっても、今のでチャラにしておきな。それがいい女って奴さ」


 大分引きつった笑顔だが笑えているだろうか?

 このセリフ。前半はじいさんのセリフだが、後半はどっかの漫画から引用してきたセリフだ。本当はやる必要もなかったんだが、振り向き笑顔も入れてみた。

 因みにその漫画では、こんな臭いセリフでヒロインを恋に落としたと言う話なんだが。こんなセリフで落ちる女が居たら見てみたいわ! 実際こんなセリフ地球(向こう)で言ったら「きもっ!」とか言われるのが落ちだろう!


 「……はい、わかりました」


 顔を真っ赤にして俯く女性。

 あれ? 自分またなんかやった? えっ!? もしかしてこっちでも今のは気持ち悪いとか思われるやつなのか!? それともやっぱ借りもんのセリフはダメってやつか!?

 そんな馬鹿なことをやっていると、火だるまとなった偽者さんが地面に倒れ込む。


 「ーーがっは! はあ、はあ、はあ」


 おっと、今度は火傷か。火傷用の薬って有ったかな?
























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