No.77
No.77
穀倉地帯まで戻って来た自分は丘の方へ合掌し、ランボの安否をとりあえず祈っておいた。
ナムナム、ご無事でランボさん。
それから貰った牛乳を早速加工することにする。
「【短縮加工】に入れてっと」
さて作るとしたらバターかチーズだけど。どっちの方が時間が掛かるんだ?
現在【短縮加工】は、がんばってレベル5。
幾つかサボっていたのもあるけど、工技はそろそろすべての物がレベル5に到達予定。
レベル6になるモノも有るけど。結構時間が掛かっているから、最大はレベル10辺りだと思う。違ったら恥ずかしいが。
「バターは一日。チーズは一月か。ならチーズの方にするかな」
この辺も時間が短いものより。長い方が経験値的なものが多いようだから、緊急性がない場合はそちらにしている。
「貰った牛乳はこれでよしと。まだ大分時間があるし、ランボが言った方角を見に行ってみるかな」
竹林まで戻り。竹林を沿うように歩いていく。
歩いていくと次第に竹ではなく、何か違った植物が見れるようになった。
分からない時は【万物の瞳】の出番。と言うわけで確認する。
【サトウキビ】:お砂糖の原料になるよ。やったね! 今の君に出来るかな?
ほほう、この竹のようなスジが有るのがサトウキビか。初めて見るな。
それにしても今の自分に出来るか、か。
もしかして何か必要な工技でもあるのだろうか?
【短縮加工】は今使ったばかりだから、一月は使用が出来ない。
最も【短縮加工】でも作れなければお手上げだけどな。以外と便利なんだぜ。時間は掛かるけど。
まあ帰り際にでも採取して、チャレンジしてみよう。
「竹からサトウキビに変わってきたし、穀倉地帯も大分離れてきたから。この辺から別地区になるのかな?」
このサトウキビが群生している中に入る気にはないから、この地区のファンシー動物とは会わないだろう。
今日はこの辺に何があるかの確認だけにしてかえrーーー
ガサガサガサ
「……にゃーん?」
ーーーと思ったら向こうから出て来ましたよ?
薄緑色したな虎柄の猫はキョロキョロと辺りを見回し「あれ? ここどこ?」と、言った風な顔をしている。
「あーそこの猫さん。君はこの辺りを管理している動物で良いのかな? それとも別の所から来たのかな?」
一応聞いてみるが、猫はやっぱりキョロキョロと辺りを見ている。
「君だよ、君」
自分が指を指し、自分の事だと分かると。心外だと言うように怒り出した。
「うにゃーん!」
「え!? なにどうした!?」
もしかしてまた身体的に違ったのだろうか?
一度で当たることが少ないな。はあ~出番ですよ、【万物の瞳】。
【風天虎】
自由気ままに旅をする虎。自らの拠点を持つが、長く居ることがなく。直ぐ何処かに旅へと出掛けてしまう。
なるほど虎でしたか。その虎柄マークは伊達でないと。
ああそうだ、今さらだけど。今まで会ったファンシー動物たちも。後でこうやって【万物の瞳】で種族名は確認している。
ただこの【万物の瞳】は個人名が出てこないから、自分が適当にあだ名をつけている。
ほんと今さらな話だ。いったい今何話だと思っていると言いたくなる。
まあ与太話はここまでとして。このにゃんこ虎にもあだ名をつけなければ。そうでなければ話を進められない。
何が良いか…………自由…………風天…………虎………………よし、トラさんにしよう。これ以上無いほどのピッタリなあだ名だと思う。
自分がそんなことを考えておるとは露知らず。にゃんこ虎、もといトラさんはこちらが何にも反応を示さなかったので、鳴きが泣きへと段々変化していっていた。
「うにゃーん、うにゃーん」
「ああすまない。少し考え事をしていたんだ。それで怒った理由だけど。猫と言われたから怒ったんだね。本当は虎なのに」
「うにゃん!? にゃーん!」
理解された事が嬉しいのだろう。泣いていたのに直ぐに笑顔となった。
しかしこの様子から見ると。このトラさんは、ここら辺の管轄動物では無さそうだな。竹林だってファンシー動物は居ないんだ。このサトウキビの所にも居ないと言う可能性もあるだろう。
「にゃーん?」
「ん? ああ自分はここからずーっと向こうの方に住んで居る者だよ。もし近くに寄ったら遊びに来ると良い。歓迎するよ」
「にゃーん」
出会ったお近づきに何かなかったかと、バックパックを下ろし探してみる。
うーん、これは香辛料だし猫、あいや、虎でも駄目だろう、多分。こっちはパンだけど、パンだけと言うのもなあ。かわいそうだ。
そうやって、ああでもないこうでもないと探していると。横からトラさんがバックパックを覗き込んできて、ひとつの物に興味を示した。
「うにゃーん!?」
「え? なに? これ!? これが気になるの!?」
「にゃーん!」
トラさんが興味を示した物は、試作で作った魚の干物。出来としてはいまいちだったけど、保存食としては使えるので一応入れている。
しかしこれに興味を示すか……。君、やっぱり猫ではないのかね?
「うにゃーん?」
トラさんは小首を傾げ「なに?」と言った表情をしていた。




