No.76
No.76
「なるほど。ではあちらの方角に別種族の方がいらっしゃるんですね?」
「ウモ」
そう言ってランボが示した方角は、竹林の方角よりやや東側。東南東の方角であった。
うーん、やっぱり各方角。十二の方角にそれぞれの種族が居るのかもしれないな。今後それで各方面を探索してみようかな。
「ウモ、ウモ?」
「あ、はい、聞きたいことはそれぐらい、あ、いえもうひとつ有りました」
「ウモ?」
「ええ実は、今ピンクサル達から魔法を教わって要るんですが。今一つ要領を得ないと言うか、自分のスタイルに合わないと言うか……」
そうなのだ。基本ピンクサル達はイメージさえあればどうにでも出来ると言うのだが。漫画知識を持った自分でも、魔法としての形はなるのだが。何と言うか見て呉れだけなのだ。
威力も効果もイメージして作り上げたものより数段劣るのだ。
自分が良く練習で使う光の玉でさえ、光量のイメージを閃光弾の様なイメージをしているにも関わらず。出来上がるのは裸電球の様な光量しか得られていない。
夜、ランプの油を使わなくて済むから便利と言えば便利なんだが、戦闘に使うには使い勝手が悪すぎる。
そこで知り合いのファンシー動物たちに、それぞれどんな感じに魔法を使っているかを聞いて。参考にしようと考えていた。
「ウモ……」
むう、ランボが何やら考え始めてしまった。
もしかして魔法を使う為に必要なことは、本当にイメージだけと言うことなのだろうか。
そうなってくると自分の想像力が、ピンクサル達に劣ると言うことになってしまう。……それはなんかものすごく嫌だぞ。
「……ウモ。ウモ」
ん、どうやら考えが纏まったみたいだ。
ランボはジェスチャーで何かを伝えようとしている。
「ウモゥ、モー」
「それはもしかして、自分の魔法を見てから判断すると言うことなのでしょうか?」
「ウモ!」
なるほど。そこで自分の悪い部分を指摘してくれると言うことなのだろう。
「わかりました、それではやります」
いつもやるように生命力を魔力に変え、イメージと共に魔力を魔法へと作り替えていく。
「『光よ』」
手のひらにソフトボールくらいの光の玉が現れる。
淡い光を放ち、熱量などは一切感じられない。
そんな作り上げた光の玉をランボは繁々と見たあと。
「ウモ!」
『スパーン!』と叩いて消し飛ばした。
突然の事に驚いたが、それ以上に叩かれたことで手がジンジンと痛む方がきついです。メッチャ痛いです。何するんだって!? って叫びたい。
叩かれた手をぷらぷらと振ってランボに聞く。
「あの、今のはいったい?」
「ウモ、ウモ。モゥー」
何やら詳しくランボが言ってくれてるが、ピンクサル達よりジェスチャーが下手で分かりづらい。あいつらが芸達者すぎると言うのもあるかもしれないが。
自分に余り伝わっていないと分かると。ランボは実演して見せると言ったジェスチャーをした。
「いいんですか」
「ウモ」
ランボは少し広い場所へと行くと、自分の真似をすると言った。
「……ウモ」
ランボが一鳴きすると。ランボの体からモヤの様な銀色っぽいモノが立ち込めた。
そのモヤを手に集める様にするランボなのだが。モヤの半分以上、七割近くが手には集まっていなかった。
そして出来上がったのは薄ぼやけた銀色の玉。
ランボは出来上がった銀の玉を地面へと叩きつける。
″パンッ!″と風船が割れるような音がした。
「ウモ」
ランボは「わかったか」と言った感じにしていた。
「……魔力の収束、密度が足りないが言う事ですか……」
「ウモ!」
どうやら正しいようだ。
多分あのモヤはランボの魔力だろう。それを目に分かる形で実演してくれたのだ。確かにあれなら分かりやすい。
しかし魔力の収束か……。【魔力操作】辺りでどうにかなるのだろうか?
ランボが分かりやすい今後の方針を示してくれたのでなんとか為るだろう。これがピンクサル達だと、感覚で物を伝えようとして来るからなあいつら。俗に言う天才タイプと言うやつだろうか。
「ウモ。モゥ!」
魔法の今後の練習方法などを考えているとランボに強く呼ばれる。
そちらの方を見てみると。ランボは先程実演してくれた時と同じ様に、銀色の魔力を出していた。
ただし先程と違うのは、立ち込めていた魔力はランボの体を対流するように流れていた。
漫画に良く有る『気』を纏うと言う感じに。
「そう言う感じに持っていけば良いんですね」
「ウモ」
ああ言う感じに一度は試しているんだが、やはりイメージだけでなく。【魔力操作】の方も鍛えなくては駄目と言うことなのだろうな。
そんなことを考えていると、ランボは更に空手の正拳突きの様な構えを取り。
「ーーーゥモッ!」
丘に向かい拳を振るった。
振るった直後、『ボンッ!!』と言う音を立て。丘は爆発したように地面が抉れた。
「ウモウモ」
ランボは多分「自分はこう言う風に魔法を使う」と言っているのだろう。あれは多分身体強化の一種だろうか……。
けどねランボさん……。やるのは構わないのだが、あなたは周りを見ていなかった。
「ウ~モ~ゥ~!!」
怒りに満ちた声の方を見れば。洞窟内からちょうど出てきたのであろう、雌牛のランボが立っていた。
その体には大量の土が付いて。
「ウ、ウモ!?」
雌牛の怒りの声に狼狽える雄牛のランボ。
その顔は白が多い筈なのに、青白い顔へと変わっていた。
雌牛のランボはのっしのっしと歩いてくると。自分にミスリルで作ったピッチャー瓶を渡してくる。
自分は「どうもありがとうございます」と声を掛けるが。雌牛は一切こっちを見ることなく「モゥ」と一鳴きしただけだった。
「……ええっと、何やら立て込んできたみたいなので、自分はこれで失礼します」
「ウモ!? ウモウモ。モゥー!」
雄牛のランボがものすごい勢いでこっちに言ってくる。
多分「助けて」とか「仲裁をしてくれ」とか言っているんだろうが、すまない。あれは、無理。
だって雌牛のランボが真横を通った時、ものすごい嫌な圧迫感があったよ! あれってさっき雄牛のランボが使ってた身体強化の魔法じゃないのか!?
目に見えないだけであれだけの圧迫感。相当な魔力密度が有るに違いない……。
と言うわけで『君子危うきに近寄らず』。
「すいません! ではまた!!」
持ってきた荷物を手に取り。丘を駆け下るように去る自分。
その後ろでは雄牛のランボが、何やら叫び声を上げているが自分には聞こえないです。
腹に響くような打撃音が木霊しているが、自分には何も感じないです。
後日、もっと良い手土産を持参しますので。今日の事はそれで勘弁してください。
「ウモーーーン!!」
「ウモウモウモウモウモォォオオオ!!!!」




