No.75
No.75
「こんにちはー。誰かいらっしゃいますかー?」
穀倉地帯に有る丘陵地。その窪みに出来た洞窟っぽい所に今日は一人で来ていた。
ピンクサル達は薄情にもあの異次元テニスが気に入ったみたいで、付いて来てはくれなかった。
だけどあの光の玉は自分が魔法で作ったもの。ある程度離れたり、時間が経つと消えてしまう。なので木の皮と竹で作ったボールで遊んでいる。
帰った後粉々に壊れてなければいいけどな。
「ウモ?」
そんなことを考えていると、洞窟内から雄牛のランボではない、角の辺りにリボンみたいな物を着けた。多分雌牛のランボが出てきた。
奥さんか娘さんかな?
「あーすいません。自分はここより西に住んでいるーー」
「ウモ」
自分の名前を告げようとしたら、雌牛のランボに手で制され。外まで出てきて、息を大きく吸い。鳴いた。
「ウモーーーーーン!!」
その余りのバカでかい声に思わず耳を手で覆った。
その声が辺りに響き渡り。その残響も聞こえなくなってくると。遠くの方から砂塵を巻き上げ、誰かが突っ走ってきた。いや誰かは今のやり取りでわかるんだけどね。
近付いてくると。『ズッドドドドド!』と軽い地響きがしてくる。
『キキッーー!』と、アスファルトでもないのにブレーキ音がして。そこに現れたのはやっぱり雄牛の方のランボだった。
「ウモ?」
「ウモ」
「モゥ」
ええっと、何やら二人で会話をしております。こっちは蚊帳の外だよ。
そして話が終わったのか、雄牛のランボがこっちを向き。「よっ!」って感じで片手を上げた。
「どうもすいません。いきなりの訪問で。あ、これ手土産です」
「ウモ」
そう言って自作の猿酒をランボに渡すと。
ランボは首を振って「問題ない」と言った感じで答えてくれ。そして手土産を受け取ってくれた。
「ウモ?」
「え? ああ、はい、今日訪問したのはーーー」
ランボは「今日は何をしに?」と聞いてきたので話した。
ひとつは一番最初にこの穀倉地帯に来た時に、ランボではない。山羊か羊の鳴き声を聞いた事があり。最初はこのどちらかが、この場所に住む動物かとも思ったりもした。
しかし居たのは牛である。ならばこの近くに、その二匹の動物のどちらかが住んでいるのではないかと思っている。それでもし知っているなら何処に住んで居るかを聞きに来た。
二つ目は、牛を見て。種類的に乳牛の類いじゃないかなと。希望的観測も入れて、乳を貰えないかなあと考えていたりもしていた。
だってもし貰えたら乳製品が作れるかもしれないじゃないか。
「ウモ、ウモ」
ランボは何やら納得すると手を出してきた。
「ウモ?」
「え? もしかして牛乳、乳の方ですか?」
「ウモ」
まさかそっちの方が先とは思わなかったので、少し不意打ちを食らってしまった。
急いでバックパックからミスリルを取りだし。ピッチャー瓶を作る。作った物をランボへと渡すと、ランボは洞窟の中へと入っていき。しばらく待っていると『バキッ!』と言う打撃音が一発聞こえてきた。
何事かと思い、洞窟内へ入ろうとした時にランボが奥から出てきた。
しかしその顔は半分誰かに殴られたような顔になっていた。
「…………あ、あの、もしかしてご無理を言ったのでは?」
「……ウ″モ″」
ランボは「問題ない」と言ってくれてるが。あの顔はどう見ても問題有りまくりだと思うんだが。
猿酒だけの手土産じゃ足りなかったかもしれない……。




