表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/376

No.73





 No.73




 「ウキ? ウキキ!」


 植物で作られた道を歩き。その行き着く先には植物で作られたアーチ状の門があった。それを潜り抜けると。ピンクサル達とユニ子が心配した顔で待ち構えていた。

 ピンクサル達はこちらに近寄り「なんともない?」と言った感じに聞いてくるが、自分は何も言えず。ただ歪んだ笑顔を返すことしか出来なかった。

 不信に思ったのだろう。ピンクサル達は更に「大丈夫?」と聞いてくるが。彼らの頭を撫で「何でもない」とだけ言った。

 ユニ子はユニ子で申し訳なさそうな顔をしていたので。そちらにも「大したことはない」と言っておいた。

 その後、荷物を整理して幾つかの野菜を貰ってから家に帰ることにした。

 ピンクサル達はまだ居たそうだったが。自分は帰ると言うと、ピンクサル達はユニ子に別れの挨拶をして、一緒に帰ることになった。 




 家に着き。荷物を片付け。ベットに横になる。

 ピンクサル達は自分の様子が変なことに戸惑っていたが。


 「大丈夫だから……。今日はもう好きにしていいぞ」

 「ウキ……」


 そう言ったが。やはりチラチラとこちらを見ては、心配そうな顔をしていた。

 そんな自分はベットに横になりながら、あの場所での出来事をずっと考えていた。

 幼き頃よりじいさんに命の重さ。食の大切さと称し。鳥や魚、猪や鹿などを解体させられ。それを食事として食べさせられたことがある。

 初めの内は魚ですら血の臭いに生臭さを感じ、吐きもした。

 そして出された食事は先程まで生きていて、自分で殺したモノだと思うと、食べることすら出来なかった。

 そんな幼き時の自分にじいさんは。


 『それ以外の食べ物は用意していない。だから食べなければ、お前は食材となったそいつの命を無駄にしたことになる』


 と、怒るわけでも叱るわけでもなく。淡々と事実を語るだけだった。

 そんな自分は泣きながら吐きながら、食事を取った記憶がある。

 今の自分の感情はあの時と似ている気がする。

 命を奪う覚悟も足らずに奪えば、その結末に嫌悪する。

 然りとて他者が代わりに行えば。それをさせてしまったと、また嫌悪する。


 「…………思い上がっていたかな」


 自分は命を奪えるだけの慣れ(覚悟)があると。

 だから例え異世界でも、それなりに生きていけるだけの知識と経験(モノ)があると。


 「ハァ……」


 ため息しか出てこない。

 この手の問題に答えはない。自分の中でどう折り合いをつけるかしかないのだ。


 「よっと……」


 今は幾ら考えても答えは出ないと諦め。ベットから立ち上がり。あの緑色の奴等が落としたドロップアイテムらしき物を、気晴らしに調べることにした。


 「このビー玉みたいなのから調べるか」




 【緑の晶石(小)】

 植物の力の星気(プラーナ)が結晶化したもの。




 「これが晶石か……」


 それとやっぱりこっち関係(ルート)の物になると、あの子供っぽい説明はなしか。もうひとつの方は。


 経木の様な物で包まれていたものを解くと、中には生のブロック肉が入っていた。


 「いやに重いと思ったけど、何故に生肉が? ゲームなんかじゃ正しいんだろうけど。現実だと違和感しかないな」


 不思議に思いながらも生肉を調べてみる。




 【食べられる生肉(500g)】

 食用にも適した生肉。さっぱりとした淡白な味がする。




 「まてまてまてまて! 何の肉だ!? 食べられる生肉ってことは、食べられない生肉もあるってことか!? くそっ、そうじゃないッ! 駄目だなんかいつもの調子(ツッコミ)が出てこない!」


 いつものあのふざけた説明文じゃないのに、このツッコミどころが有りすぎる文章は何なんだ!?


 「ウキキ?」


 自分が騒いでいると、いつもの調子に戻ったのかと、ピンクサルが様子を見に来る。

 あーお前が来ると。


 「ウキ!?」


 「これなに!?」と、生肉を見て騒ぎ始めるピンクサル。その声を聞き、家の中に居たピンクサル達が続々と集まってくる。


 「「「「ウキ!」」」」

 「ははは、やっぱりこうなったよ」


 これはなんだ? 食べ物か? 説明しろと矢継ぎ言ってくるピンクサル達。


 (何かあっと言う間にいつものペースになったな)


 自分が悩んでいたことなど、バカらしくなるほどの騒ぎを起こすピンクサル達を見て。先程まで心の中で渦巻いていた嫌悪感は、何処かへと消えていたのだった。


 「「「「ウキ、ウィキー!」」」」

 「あーうるさいぞお前ら。教えてやるから少し黙れー」


 そう言ってピンクサル達を静かにさせ。生肉(これ)が何であるかを説明するのだった。

 その説明している時の顔は、門から出てきた時の様にどんよりと、思い詰めた顔ではなく。いつもの笑顔となっていたことに気づき、ピンクサル達は喜びの声をまた上げたのだった。







 「「「「ウキ、ウキ」」」」

 「え″っ!? 食ってみたい!? いやこれ何の肉か分かったもんじゃ「ウィキー!」……わかったよ調理してきてやる……」

 「「「「ウゥキィイイ!」」」」


 その後、何の肉か分からない物を調理したところ。鳥のささみのような味だった。


 「あっ、これ以外と旨いな」

 「「「「ウキー♪」」」」


 きっと自分は次にあの緑色の奴と出会ったら、今度は躊躇無く仕留める(殺す)ことが出来るだろう。と、そう思えてしまった。




 「まあだからと言って、積極的に行こうとは思わないけどな」


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ