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No.70





 No.70




 小鉢に盛られた彩り豊かな野菜。

 立ち込める湯気からは魚醤と野菜の香ばし匂いがしてくる。


 「ユニ子(お前)もこっち来て、一緒に飯食おうぜ」


 しかしユニ子は恥ずかしがっているのか、一行にこっちに来ようとはしない。

 その上ピンクサル達がご飯を前にして食べれないもんだから、段々奴等の目が血走ってきた。

 因みに自分が作ったご飯に関しては、自分が「いただきます」の掛け声をかけなければ食べることは許していない。これを破った奴は自分が作ったご飯を、一週間は食べさせない決まりがある。

 なので仕方がない強制連行と行こう。


 「お前ら」

 「「「「ウキ? ウィキ!」」」」

 「……うん、わかってるから。ユニ子(あいつ)連れてこい」


 「早く食わせろと!」と言う、今にもこちらを食いつかんばかりのピンクサル達に思わず、「いただきます」と言いそうになったが。その恐怖をグッと我慢してユニ子を連れてくるよう指示すると。奴等に何処にあんなスピードがと言うほどの速さで動き。ユニ子を担ぎ上げると。えっほ、えっほと連れてくるのだった。


 「ぶる!? ヒヒーーン!?」


 担ぎ上げられたユニ子は、絹を裂くような悲鳴を上げていた。乙女か! あいや、乙女だな。


 「ぶるる!」

 「悪かったって無理矢理連れてきて。でもどうせだったらみんなで一緒に食いたいと思ったんだよ」

 「「「「ウィキィイー!」」」」

 「お前らの方も分かったから、自分まで食いついてくるような目でこっちを見るな! んじゃみんな、『いただきます』」

 「「「「ウィキー!」」」」


 ピンクサル達が待ってましたとばかりに小鉢に盛られた野菜炒めを食べる。

 ユニ子は戸惑いながらどうしたら良いのか分からずおろおろしていた。


 「まあ戸惑うのは分かるが取り合えず食ってくれよ。ただ作るだけじゃなく、自分で作ったものを食べるって言うのも良いもんだぞ」


 自分もピンクサル達に見習って野菜炒めを食べる、

 うん。シャッキとした歯ごたえ、野菜の甘味。そして調味料が良い感じに野菜の味を更に引き立てている。

 ユニ子の方も渋々と言った感じ野菜炒めを一口食べる。食べると驚いた顔をしたと思ったら。二口、三口とモシャモシャと食べ始めたのだった。


 「な、たまには良いもんだろう」


 固めのパンと野菜炒めを交互に食べながらユニ子に聞く。

 ユニ子は「たまにわね」と言った感じに一鳴きして野菜炒めを無くなるまで食べ続けていた。


 「ふぅ、ごっそうさん」


 野菜炒めは旨かったけど肉も入れたいな。魚肉でなんとかなるもんかな?


 「ぶるる」


 食べ終わったユニ子はこちらにやって来てポトリと何かを置いた。


 「ん? 何だ? げッ!? これは!?」


 どう見ても以前ピンクサルに貰った石に似ていた。

 ピンクサルに貰ったのは黄色い石だったのに比べ、今ユニ子が落とした石は深緑色をしていた。


 「ぶる」


 ユニ子は「貰って」と言ってくるが自分としては要らない。どう考えても金髪男が宿っている物と同じやつだろう。ってことは何か、今度は色からして緑男でも宿ってんのかこれは。

 違うものとは思えないんだが、一応確認と為見てみる。




 【??の神秘石】

 純潔馬(じゅんけつば)の????『??????』の魂が宿りし神秘石。純潔馬(じゅんけつば)が貴方に信頼の証しとして贈ったもの。




 同じものやった……。


 「ええっと、食事のお礼とかだったらこれは要らないので、懐に戻して貰えるとありがたいんだが」

 「ぶるる!」

 「いやね、こんな厄介物貰っても自分には嬉しくもなんともないんだが。なあピンクサル達(お前ら)


 ここは食事中やたら大人しかったピンクサル達を巻き込もうとそちらに振ると。


 「ウキ?」


 「もらっとけば?」と、ミスリルの鍋から小鉢に()()を盛りながら答えていた。


 「お前ら何してんだぁああ!?」

 「「「「ウィキ」」」」


 「おかわり」と声を揃えていってくる。

 「おかわりじゃねえよ!」と言って、急いで鍋に駆け寄り中身を確認すると。鍋はほぼ空っぽ。底の方に野菜屑が幾つか残っているだけだった。


 「あぁ、せっかく出し汁作ろうとしてたのに……」

 「「「「ウキッ!」」」」


 「旨かったです!」の一言。

 そうかい、旨かったかい。新たな調味料が……。

 ガックリと項垂れ。また野菜集めをして良いかとユニ子の方に向くと。


 「ぶるるるる!」


 ユニ子さんは何故か、突撃体制をとっておりました。

 ええ、何やら闘牛のように後ろ足を蹴り。前傾姿勢で、今にも突っ込んでくる感じでした。ええ、恐ろしいです。目がマジです。


 「なにゆえそんな体制でいらしゃるんでしょうか?」


 よく分からないが出来るだけ刺激を与えないように聞くと。

 ユニ子の返答は。


 「ヒヒーーーン!」


 「何があっても受け取ってもらう」そんな返答だった。

 それを聞いたピンクサル達は一斉に自分の側から離れていった。

 そして散り際に。

 「成仏しろよ」とか「乙女の思い受け取ってやれ」などの声が聞こえてきた。


 「くそっ、お前ら他人事だと思いやがって!」

 「「「「ウキ、ウキ♪」」」」


 「だって、他人事だもん♪」と返してきた。あいつらめぇええ!!

 自分も何とかユニ子の射程から外れようとしているが、その都度修正してくる。

 そしてついに。


 「ヒヒーーーン!!!!」

 「だぁあああ!? 来たぁあああああ!!!!」


 ドスドスドスと音を立てユニ子が突っ込んできた。

 スピード的にはスクーターくらいだろうか。もしかしたらそれより遅いかもしれない。

 だけど避けようとしても、軌道修正を常にしてこちら狙ってくる。


 「とまれとまれとまれとまれ!! 受けとるから止まってー!!」


 しかしその願いも空しく、結局ユニ子と正面衝突。

 ぶつかった勢いのまま吹っ飛ばされる自分。

 そんな自分を見て合掌するピンクサル達。

 そして鼻息を荒く興奮したユニ子が、嘶きを上げていたのが最後に見てとれた。


 「こ、こんなことなら素直に受け取っておけばよかった…………ガクッ」














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