No.66
ちょこっと連投最後 3/3
No.66 【幕間】そのさん
「うむ、トウイチロウ殿への礼の品か。何が良かろうか」
カツヲは御姫様との謁見を済ませた後。命を承けた事を速やかに行使しするべく、城下へと降りようと城の門を出たところであった。
そんな門から出てきたカツヲに声を掛ける者達が居た。
「「「大将、お勤めご苦労様です」」」
カツヲと同じような魚人が三人。統一郎のところにも居た魚人達である。
「秋刀魚、魚刀、剣魚。お前たちどうしたこのような場所で、休めと言った筈だが?」
「何言ってるんですか。大将が休んでないのに俺ら補佐が休める訳無いでしょう。もっとも他の奴等は休ませましたよ。幾ら盟主様の御力を借りれたからと言っても、聖地の踏み入れは奴等にはキツかったみたいですからね」
スラッとした体躯の秋刀魚と呼ばれた者が他の者に代わりカツヲに説明する。
「まったく奴等は鍛練が足らねぇんだ。今度鍛え直してやらなきゃな」
あちこちに刀傷を持ち、ガッチリとした体躯の魚刀と呼ばれた者は。この場に残れなかった仲間に憤慨したいた。
「体を鍛えて侵食が防げると言う話しは聞いたことがないぞ。お前の鍛練は無茶が過ぎるんだ程々にしておけ」
吻と呼ばれる上顎から突き出ている角の様なものを持つ。剣魚と呼ばれた者は、タチウオの発言を嗜める。
この三人はカツヲが自ら見つけた家臣でもあり。また信頼の置ける者達でもある。それ故に他からは三本刀などと呼ばれてもいる。
「そうか、それは済まなかった」
自分を心配し休まず残った彼らに心から感謝をした。
「ところで大将。出てくる時に何やら浮かない顔をされてましたが、何かありましたか?」
サンマは城門より出てきた時のカツヲの顔をみていた事により試練の報告だけでなく。何か厄介事が起きたのではないかと危惧していた。
カツヲはサンマに指摘され一瞬言い淀む。それにより他の二人も何かあったと気づきカツヲへと顔を向ける。
「大将、話してください」
「う、うむ。いや実はな、此度の試練上手く事が行ったのは皆の働きがあっての事。その事事態には感謝しても足りないのだが」
「そんな事は気にしなくて良いんですよ。俺らは好きで大将と連るんでるんですから。で、何があったんです。大将がそこまで前置きを置くとなると、余程の事があったんでしょう?」
サンマ達三人はカツヲに付いて行くことを決めている。例えそれが大型の海龍の討伐だと言われてもだ。
自分の持つ刀の柄に手を置き。どんなことでも対応できると意思を表す。
「待て待てお前ら。確かに難題ではあるが別段荒事がある訳ではない」
「……大将いつもそんな事を言って荒事になってるじゃないですか」
「確かにな。今回の試練を受けると言われ、果実を取りに行くだけかと思えば。大王イカの討伐に人魚族の決闘」
「終いには盟主様の認めの義までやったな。ははは、あん時は死ぬかと思ったわ」
三人から出てくる身に覚えの有ることに、二の句が継げられず黙ってしまう。
「そんな理由で必ず荒事に変わるんですから話してください」と、まで言われてしまった。
自分の落ち度でも有る為恥ではあるのだが、意を決して仲間内である彼らに話す。
「ぶっははは! そいつは本当なのかい大将!?」
「タチウオそんなに笑うな。試練の事で頭がいっぱいだたのであろうが。クックッ」
「お前らそんなに笑うことはなかろうが!」
カツヲが話した内容に大笑いをするタチウオ。
そんなタチウオを勇めるが自らも忍び笑いをしているギンザメ。
信頼している者だからこそ語ったのにこの仕打ち。カツヲは羞恥のために顔が赤くなっていた
そんな笑っている二人とは違ってサンマは呆れながらもカツヲにどうするのかを問う。
「ごほん。そうだな、何を贈るのが良いかを考えていたのだが。一番に考え付いたのが晶石なのだが」
「大将……聖地に常駐出来るだけの力を持つ人に、晶石は必要ないでしょう」
「う、うう、確かに、ではお前達であったなら何を送る」
「それを聞いたら御姫様の意に反するのではないのか?」
「まあ良いじゃねえか。例え俺達が言っても、それを最後に決めるのは大将だ。言うだけならタダってな。大将、俺ならやっぱり海龍の牙だな。男なら誰もが憧れるもんだろう」
カツヲが三人に聞いてくることに対し。ギンザメはそれは違うのではと言ったが、タチウオが言ったこともまた正しいと。三人それぞれの物を言い合った。
「うむ。するとサンマは聖銀。タチウオは海龍の牙。ギンザメが七色珊瑚か。他二つはともかくタチウオが言った海龍は我にはちとキツいな。どれかに絞るか」
自分の金銭的面も考え、どれかひとつに絞ろうと考えるカツヲにはサンマは。
「何言ってるんですか大将。どうせだったら全部持っていきましょう」
「いやしかし我の給金ではひとつとて厳しいものが」
「だぁかぁらぁ、取りに行けば良いだけの話じゃねですか」
「そうだな。遅れた恩を返すのだ。それだけの物を用意しなければな」
「よっしゃ! なら今度は武具ありですよね? それなら何とかなりますぜ」
「何を言っている。お前が言った海龍が一番大変なのだぞ」
自分の事であるから自分で何とかしようと考えたいたカツヲは。三人も当たり前のように付いてくると言うことに呆れもしたが。同時に何とも頼もしい奴等だと改めて思い直す事となった。
しかしそんな四人に水を差すような声が掛かる。
「おやおや、これはこれは。城門前で騒ぎ立てる者が居るから誰かと思えば。田舎侍を扱う南方守護大将の鰹殿ではありませぬか」
でっぷりとした見た目トドの様な姿をした。海馬と呼ばれる半馬半魚の生き物に乗った。直垂。袴の様な服装を着た。四人とはかけ離れ程の貧弱な体を持った若者が、馬上から声をかけてきた。
サンマ達三人は相手の顔を見ずに顔を伏せ。カツヲの後ろへと一歩下がった。
その姿を見てニンマリと笑う若者だが。カツヲが放った次の言葉で、苦虫を潰したような顔をする。
「これは申し訳ありませぬ。外周警戒副将の鰯殿」
「ふ、ふふ、今は甘んじてこの地位にいるが。我はいずれは中央に返り咲く所存。それにこの様な地位など、無頼漢が集う鰹殿の方が向いているだろう」
「然り。我も南方守護等と言う大役より。外周回りにて、魔獣相手に武を振るう方が性にあっている言え」
イワシは自身が言った皮肉すら通じぬほどの武骨ものかと苛立ちが出てきた。
「済まぬが我はこれより登城し、姫様より課せられた試練を報告せねばならん。失礼するぞ!」
イワシはこの様な者と要られないと言わんばかりの態度を取り、その場を後にする。
その姿を見送った後、カツヲの後ろに控えていた者達はため息を付く。
「はあ。大将、余りひやひやさせないで下さい。鰯家と言えば名家な貴族なんですから」
サンマの憔悴したような声に首を傾げながら。
「いや、我は思ったままを言ったのだが、何か変だったか?」
「大将……天然にもほどがあるでしょう」
「ははは、何いつもの事だろうサンマの兄ぃ」
「そうだな。……しかし鰯家の者が今回の御姫様意図、読めぬとも思えぬのだが……」
ギンザメは城へと登城したイワシの背を見ながら、ぽつりと呟く。
その後四人は改めて身支度をして、統一郎に贈る物を得るために奔走するのだが。それはまた別の話。
えーここまで読んでくださった方にお知らせです。
この話はここまでが自分の中ではプロローグだと思っています。ええ、自分の中ではです。
ここから先が本編となります。
だからと言って急展開とかはして行きませんよ? いつも通りその場の勢いで書き綴り、のんびりとした日常を送っていきます。たぶん( ̄▽ ̄;)自信はありませんが。




