No.41
( -.-)ノ連投。3/5
No.41
「何と!? それは俄に信じられん話だ」
何とか言葉を尽くし魚人、ええっと、カツヲの説得に成功した。
並大抵の事ではなかったが、こんなのは理不尽なクレーマーに比べれば可愛いもんだ。
「まあそう言う訳でして。見知らぬ貴方と自分の能力からモンスターの類いであると判断した次第です」
ぶっちゃけ能力が有ろうが無かろうが、初見で敵じゃないと認識する出きる奴がいる方がおかしいと思う。
「左様であったか。しかし我の姿を見てモンスターとは些か無礼ではあるが……」
「そこは容赦していただきたい。自分はこの森に住む者と北の岩場に住む者以外は見たことがなかったので」
「然もありなん。この地は先も言った通り多くの星力に満ちた場所。我らも盟主様の御力で守られたこの雨が無ければ、長くは活動しておられん」
反射的に「魚類だから陸上での活動が無理なだけじゃねぇ」と、突っ込みそうになったが、辛うじて我慢した。
「こちらの事情は話しました。そちらはなぜこの場所に」
「ん? おおっ! そうであった。そのもと、この辺りで山葡萄なる物を見たことがないか?」
「山葡萄ですか?」
「そうだ。こう、丸っこい粒々とした物があり、甘酸っぱい物らしいのだが。それと見た目は海ブドウの様だとも聞いた」
でかさが違うだろう。でかさが。
「本来であればここの土地に住む事が出きる、四尾猿の者に聞くところではあるのだが。如何せん彼の者たちとの交流が出来ず。自らこうして足を運び、探し回っておるのだ」
「あーそうですか。取り合えずここらにはないので、自分が採ってきます」
「何と其は忝ない」
交流が出来ないのは多分顔が怖いからじゃないかな。魚ってギョロっとした目をしてるからな。川魚取った時も最初は怯えていたし。最もその内平気に為ったみたいだけど。
「すぐ採って来ますので。ええっと、こちらに持ってくれば良いですか?」
「うむ、然して貰えるのなら有り難いのだが。生憎と、この雨も何時止むとも知れぬ。出来れば水場が在る所で待ち合わせをしたいのだが。如何か?」
やっぱ魚類だからか。
「でしたらこの先に川があります。そこで待ち合わせと言うことで」
「彼処か。承知した」
首を立てに振ったと思ったら顔を上げ。
「ーーーーーーーー」
「ッ!?」
耳がいきなりキーンとなった。高周波とかそう言うのを食らったような感じだ。
慌てて耳を抑えだが、耳鳴りの様なのがまだする。
「む、済まぬ。人間族のお主にはきつかったか」
「い、今のは?」
「我の仲間に連絡をつけたのだ。暫くすれば川へと向かうだろう。では我は先に行っている」
カツヲはべっちゃ、べっちゃと言った感じで川の方へ歩いて行った。
「なんだかなぁ……」
頭を掻き。何となくまた新たな、この世界の不思議を体感した気がする。
「でもまあ、戦闘にならないで良かった。あれは戦っても勝てる気がせんかったし」
そう言って弓と矢をしまい。それから右手を勢いよく振り抜く。そうすると茂みから石槍が飛び出るように現れ。カツヲが居た辺りを通りすぎるように飛んでいった。
「これも保険として準備をしといたけど、使わないですんだな」
自分の右手と石槍には透明な糸で結ばれていた。石槍を拾い結ばれていた糸を解き。石槍を担ぎ果樹園に向かいながら。
「ついでに自分の分も採ってくるか。おっ、雨も、もうちょっとで上がるかな?」
少し長く話していたせいだろうか、雨は次第に緩やかなものになっていっていた。