No.4
No.4
四本の尾を持つピンクのサルと会ってからどれくらいだろう? 体感的には一時間程だろうか。何となくだが周りの空気が涼しく感じられてきた。
更に歩いていくと、どこらから水が流れている音が聞こえてきた。
その音に耳を澄ませ、聞き取り。そちらの方へと行くと。
渓谷の大分、川幅が広い所に到着した。
渓谷を覆うように、ここも木々が生い茂っており。木漏れ日は漏れているが、空は見えなかった。
「おおやった。水場、発見!」
水場に着いた嬉しさはある、だがまだ安心はできない。幾ら水があろうと飲めなければ意味がないのだ。水質を確認するため、岩や石がゴロゴロと在る川原へと降り立つ。
「あったたた!? いったったたたた!!」
森の中ではそれ程感じなかったが、今の自分は裸足なのだ。痛みがあろうと確認しなくてはいけないために。痛みをなるべく出さないよう、重量を余り掛けず、慎重に歩きながら。
「足つぼマッサージ、足つぼマッサージ、足つぼ、なるかーい! 限度があるわ!!」
自分を誤魔化しながら進んでいたが、やはり駄目だった。
川までは距離があるため一旦森の中に戻った。
「う~ん、何処から川までへと行ける道は……向こうの方には滝があるのか。うん? あのでかい木の根って、川の方まで伸びてないか」
それほど落差はないが上流には滝があり。滝付近の近くに人の胴より太い根を持つ一本の木が見えた。
見た目的には昔テレビで流れていた『この木は何の木ですか?』に似ている気がする。
「よっと! ほっと! うん。これだけ丈夫なら折れる心配はないだろう」
根を何度も踏みしめ、途中で折れることがないかを確認した。
「しかしでかい木だな。幹なんか大人五、六人で囲っても、足りないぐらいの太さがあるな」
ポンポンと幹を叩き、木の天辺の方も見上げてみる。そちらの方も木漏れ日は在るが空自体は見えなかった。
余裕がある時にでも木登りをして、辺りを確認するかと、頭の隅に置いた。
取り合えず今は水だな。人間一週間も飲まず食わずだと死んでしまうらしいし。早めの飲料水確保はしときたい。
根を伝い川まで行く。川近くまで来ると根も細くなってくるのでゆっくりと歩く。
「へえー、きれいな水だな。底までしっかりと見える」
川の流れは少々速いが、それでも濁り等が目立っている様子はなかった。
根は川までは伸びていないので、あと数歩と言うところは自分で歩かなければ行けなかったが。それぐらいの距離なら何とか為るだろうと根から降りる。
「いたくない。いたくない。いったぁくぅなぁいぃぞぉおお!!」
涙目になりながらも川辺に着く。
「はあ、はあ、はあ、水を得るのってこんなにしんどかったけ!?」
一日もたっていないが、日本なら至る所で安全で飲み放題な水が懐かしいと感じてしまう。
川の水を両手で掬い、まず匂いを嗅いでみる。
「くんくん。変な匂いはしないな」
匂いに異常が無かった為、両手で救った水を少しだけ口に含み、すぐに吐き出す。
「ぺっ! う~ん味も変な感じはしないな。取り合えずしばらくは様子見で……平気だと思うけど、腹壊さなきゃいいなぁ」
本当は煮沸させるか、ろ過した水を飲むのが良いんだけと。今はどっちも道具がないからな。また森の中に入った時に使えそうなのを探してみるか。
だけどその前に。
「またこの石の上を歩いていくのか…………」
げんなりとしながら来た道を見つめるのだった。