No.38
No.38
高い木の洞の中から、一匹の四尾猿が外を眺めている。
「……ウキィ」
天気が悪くなる日は外に出歩いては行けない。
それは自分達が生まれる前より伝わってきたことだ。
いつもと違った天気になった時は住みかに戻り。じっとしていれば大丈夫だと教わっていた。
ここにはみんなが居るから平気だけど。いつも自分達と遊んでくれる、あのおっきな人は大丈夫かな? 寂しくないかな? 『シンジュウ』さま、どうかあのおっきな人を守ってあげてください。
「キィ……」
外の雨を見ながら自分達と遊んでくれる。自分達とは姿が違った友人の心配をしていた。
☆★☆★☆
降りしきる雨の中をさ迷い歩く存在がいた。
その歩きは酷く緩慢で、まるで歩いたことの無いような、そんな感じにさえ見てとれた。
その存在は立ち止まっては何かを探すようなしぐさをしている。
だが、途中から何かに気を取られているのか。積極的に何か探す素振りは見せず。ただ立ち止まり。辺りを気にするように回りを見ている節があった。
「………………?」
自分が動く音と雨の音以外の音を聴いた気がした。
情報ではこの辺りに在ると聞き及んでいたが、それらしきモノはいまだ見つけられていない。
雨が降っているとは言え。ここは普段自分達が居る場所とは違い少々動きづらい。
この雨も盟主様の御力により、一時的に降っているにすぎない。いつ止むとも限らない故、早く見つけなくてはならんのだが……。
「……………………」
やはり何処からか見られている感じがするな。
彼の者達か? ……いやそれはないだろう。あの者達は天候の悪い日は、自らの巣に籠り出てくることが聞いている。それ故に我らがこうして探しているのだから。
ならば何処かの国の者か。それとも個人の者か。はて、いったい何もn……ッ!?
スタッン!
茂みより飛来した細い何か。
それに気付き、体を捻り躱す。
そして飛んできた方を睨み付け。
「何者ぞ! 名を名乗られい!!」
飛んできた方を睨み続けていると。警戒しながら短弓を構え武装をした、我らとは違った種族の者がそこには居た。
その者は何か苦悩と言うか、吐き捨てるように。
「くそッファンシーな獣の次は、喋る深きもの共だと。どうなってるんだ、この世界は!」




