No.2
思いの外見られた方がいたので連投します。ありがとう見てくださってm(_ _)m
No.2
「『知らない森だ』って、テンプレ言いたくても言えねぇよ」
頭を掻き。まさか自分が物語でお馴染みな展開に出くわすとは思いもしなかった。
そして意外にも自分が妙に落ち着いていると言うことにも不思議に思っていた。
「まあ妙に慌てたり、パニックに為るよりはマシだけどさ」
あの質問事項でこの世界に来たのは確かだろう。
帰れる帰れないの算段は取り合えず今は置いといて。
現状、ここの安全の確認と自分自身の体の影響。特に物語でお馴染みチート能力等を持っているかの確認を、大至急行わなくてはいけない。
まず右手から見る。
「うん。森だな。紛うこと無き森だ」
次に左手の方を見る。
「こちらも特に何か変わった雰囲気はないな。ごく自然な森だ」
下を見てみる。
「適度に草が生え、所々に草花も生えている。何の花かは分からない」
上を見る。
「鬱蒼と繁っているため何も見えない」
木々の間から木漏れ日が漏れて来てはいる為、薄暗いと言う感じはしない。
危険な動物の類いも今は感じられない。安全は取り合えず確保されていると考えて良いだろう。
次に自分の体の方はどうだろう?
見える範囲でわかることは、年と共に出っぱって来ていた腹が引っ込んでいた。
顔などペタペタとさわって確認してみるが良く分からない。肌の張りは良いように感じられるが。きっと今の自分はあの時設定した年齢に、体が変化しているのだろう。
身体能力はどうだろうか?
質問事項にはなかったが、異世界に来ることで超人的な力を身に付けるなどは物語で良くあることだ。
近場に在る木の前に立つ。
見よう見まねの構えを取り、木に向かって拳を打ち出す。
「ホワチャー!」
ポキッ
「~~~~~っ!?」
木に向かって打ち付けた拳は木を折ること無く。逆に自分の拳が折れるのではないかと言うほどの痛みを受け。その痛みの余りに地面をのたうち回った。
「はあ、はあ、余りの痛さに思わず、昔のゲームみたいな返答メッセージで、場を和ませていたのをすっかり忘れたぞ」
殴り付けた手を見て怪我がないことにほっとした。
「身体強化は無しか。この分じゃ魔法も期待できないが、一応やるか」
その後、自分が知り得る有りと有らゆる呪文を口にして見たが、そよ風すら起こすこと無く無駄な時間を過ごした。
「…………なんだろな、こう言う唐突な異世界転移ってチート能力とか普通についてると思うんだけどな」
呪文を唱えている間はノリノリでやれていたが、素に立ち戻り。その余りにものイタさに後悔すらしてきた。
「結局若返ったってだけで、チート能力は無しか」
若返るだけでも大分すごい事であるのだが、異世界転移何て事を体験している今では、それすらちっぽけな感じがしてしまう。
「さて、弱ったぞ」
素の自分がチート能力も無しに、見知らぬ土地で生き残れるとは露程にも思っていない。寧ろ何かあれば即死ねる自信すら持ててしまう。
そして何より。
「服がないのが一番困るな。マッパでどうしろと?」
来る前は服を着ていたのに、こちらでは一切の服を着ていなかったのだ。
「ひっきしっ! あ~さぶっ」