No.10
No.10
果樹園に来るとピンクサルは所々に居るが、こちらを気にする様子はなかった。
まあ変に興味を持たれたり、襲われても嫌だから良いんだけとさ。
なるべくサルたちのそばには行かず、昨日と同じように居ないところから桃を採取していく。
そして採取した幾つかは腹を満たす為に食べた。
「ゲップ。桃だけで腹を満たすのも結構キツいものがあるな」
旨いことは旨いんだが。水分が多いから水っ腹になりそうでちょっと怖い。
ある程度の桃を食べてから、万物の瞳で他の食べ物を見てから食えば良いじゃんと思い。万物の瞳を使い、他のを見ていくと。ここの物は全部食べれるものみたいなので、それらも採れる所からは採取していった。
「これ以上は持ちきれないか。まあ持っていっても保存がな。保存か……川があるし、川魚っているかなあそこ?」
持ちきれなくなったこともあり、来た道を引き返し。一部持ってきた果物を洞に置いてから、出入り口を木で蓋をして隠すようにしておく。
それから森の中に入り探索しながら拠点作りに必要な物を探す。
「何か使えそうなものは…………えっ!? あれは!?」
大きな木から歩き回って、一時間ぐらい経ったぐらいだろうか。その場所に見慣れた植物が繁っていた。
青々とした植物とも木とも言われ、しなやかで加工品が数多く存在する。
「竹だ!」
竹がなる竹林付近から植物の生態系が変わっているのか、森の植物とは違った植物が数多く存在していた。
「つくづく何でもありで、謎な世界だな。たけど竹があるなら嬉しいや。ええっとこの斧じゃ、駄目か。一旦帰って手斧サイズの物を作るか」
再び大きな木のところまで戻り。川原に降り手頃な石を探す。幾つか集めた中から石を割り。鋭利な割れ方をしたものを選び、それを研ぐ。切れ味自体は無いだろうが、多少でも切れるなら万々歳だ。
何度も何度も研ぐと、石斧として使うなら十分なほどの物ができた。
「……できた! 途中で挫けそうになったけど意外といけるもんだ。はははは」
グゥ~。
集中してやっていた為か、気が抜けたら腹が鳴り始めた。
どれだけ集中してやったんだろうと思ったが。腹の方が腹が減ったと主張するので、弁当がわりとして一緒に持ってきていたバックから果物を取り出す。
取り出したのは赤い実。リンゴだ。
リンゴに顔を近づかせ匂いを嗅ぐ。リンゴの甘酸っぱい匂いだが鼻の中を満たす。
シャクリと、音をたてて食べれば。桃の時とはまた違ったリンゴの蜜が口いっぱいに広がる。
そのまま持ってきていたリンゴを食べきり。余韻に浸りながら。
「まだ二日目だけど、こんな生活も悪くないな」
のんびりと、生憎とこの場所では空は見えないが、空を眺めポツリと呟いた。




