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魔法世界の魔術師  作者: 炎の人
幼少期編
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森の中の出会い

 雨の日からしばらく経ち、サリオを避けながらもどうにか森へとやってきた俺達はようやく森の中へと入っていく。別に自分が強いとは思ってはいないがそれなりに戦えると思っている。所詮、素人考えの戦える、なのだから大したことはない。実践の中で磨き上げればいいと俺は考えたのだ。ユリアには反対されたがそれしか俺の経験を上げる方法が無いのだから仕方ない。もし、他に方法があるならば今すぐにでもそっちに変えたいものだが。

 そんなユリアも俺の後ろに着いて歩いている。魔物を倒すことを主目的には置いてはいないので大丈夫だろう。いざとなればユリアだけでも逃がそうと思う。それが主人である俺の役目なのだから。


「しかし、何もいないとはな。魔物はそんなに凶暴なのか?」


「この地域はあまり魔物は出ないそうですよ。それに領主様が定期的に倒しておられますからね」


「そうだろうな。そうじゃなきゃ戦力が二人なんて考えられないし」


「ユーフェ様は戦いに来たのですよね?」


「いや、ただの散策だ。あの時はああは言ったが何となく見てみたくてな。まぁ出てこない限り戦うことはないから安心しろ」


 森に入ってから数十分。動物一つ見ないまま、進んでいく。静かな森に風の音だけが聞こえてくる。そのまま不思議に思いながらしばらく歩いていると急に森の中の雰囲気が変わった気がした。今までが静謐な雰囲気なら警戒心が一斉にこちらに向けられたような雰囲気だ。あるいは、もしかしたら殺気なのかもしれない。それくらいに濃密な雰囲気を感じ取ることができた。

 ユリアも空気が変わったのを感じたのか気を引き締めている。


「ユーフェ様、空気が変わりましたね」


「結界か何か張ってたのか? エルフがいるとは聞いたことがないけど」 


「流石にこんな所にはいないですよ」


「まぁここまで来たら行くしかないか。退路も塞がれたみたいだし」


 背後から獣の気配がする。どうやら逃がす気がないらしい。ただすぐに襲ってくる訳でもなく、どこかに追い立てるような感じだ。この気配の主が命令でも下したか、あるいは単なる偶然か。

 俺はそのまま前へと進むことにした。進む度に気配が濃くなる。それは先程までのような感じではなく、ただそこにいるだけで放たれる覇気のようであった。ユリアは大丈夫かと見てみればどうにか耐えていると言った感じでこのままいけば気絶することだろうと思う。


「ユリア、大丈夫か?」


「は、はい。どうにか」


「この気配は本当にただ者ではないな」


『我の気配を感じてなお、進むか。人間』


 その声には威厳があり、関心が見て取れた。当たりを見渡してみるが声の主は見当たらない。目の前にいる狐がいるがもしかしてこの狐が声が出したのだろうか。恐る恐ると言った風に聞いてみることにした。


「あなたが気配の主か」


『如何にも。小さき人間よ。して、何用でこの森に立ち入った』


「散策だよ。ここはあんたの縄張りか」


『否、我はたまたまここに立ち寄ったに過ぎぬ。旧き友の縁の地ゆえ』


「そうか。邪魔をして悪かったな」


『そう畏まるものではない。我はただ千年以上生きた狐に過ぎぬ。いや、今となっては人間も我の気配に耐えれぬのか?』


「まぁ普通こんだけダダ漏れだったら怖いだろうよ。覇気とか言われる類だぜ狐さん」


『ぬ、それもそうか。百年近く眠っていたから勝手が分からぬでな』


 そう言って狐は気配を最小限に収めた。それでもまだ漏れているのだがさっきよりもマシになった。そこで俺もだいぶ緊張していたことに気付く。目の前の狐の毛並みすら意識に入ってなかったのだ。金色の毛並みは輝いて見え、尾が九本ある。言わずと知れた九尾の狐だ。触り心地良さそうな金色の毛がたまに風に揺れている。

 ユリアの方も何とか緊張が解けたのか溜め息を吐いた。


『我も歳を取ったものだな。旧き友は未だ元気であろうか』


「なんだまだ生きているのか?」


『精霊であるからな。我が友は皆、精霊だ。どれもおもしろい奴でな。特にここの水の奴は独特だ』


「そうなのか。まぁ早く行くといいさ。友達と会うのは早い方がいい。約束をしているわけではないだろうけどさ」


『そなたの言うとおりだな。では、行くとしよう』


「ああ、また会えたら会おう」


『我と会えることなどそうそうないものなのだがな。だが、また会うのも悪くはない』


 九尾の狐はそのまま尾を揺らしながら去っていった。俺の膝下辺りまでしかないくせにとんでもない気配を放つ狐。そんな強大な者に会う機会はあまりないほうが好ましいのだがまた会うのだろうなという気がしている。それはただの直感だ。


「まぁ帰るか。疲れただろ?」


「はい。申し訳ございません」


「いいってことよ。ありゃあ流石に俺でも骨が折れる」


 疲れ果てた精神をどうにか引っ張って森を出た。道中にサリオと会ったが何か言ってるのも耳に入らず、俺は屋敷に入り、部屋に入ると有無を言わさずベッドに倒れ込んだ。


「あ~疲れた」


「ユーフェ様、ゆっくりとお休みください」


「そうだな。ユリアも寝るといい」


「はい。そうさせて頂きます」


 俺は布団に突っ伏したまま深い眠りについた。




こん、こん、こん。狐さんとの出会い~♪

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