とぅびぃーこんてにゅーど
真っ白な空間。永い時間。永遠とも感じ取るその空間には人はいない筈だった。そこは次元の狭間。人が、もっと言えば生命体すら生きることが困難でほぼ不可能な空間だった。
そんな空間に二人の姿があった。一人は赤が所々残ったような黒い髪を短く揃えた少年。もう一人は完全に真っ黒な綺麗な髪を腰まで伸ばした少女だ。
彼らは互いに身を寄せ合い、まるでお互いを離さないようにしているかのようにその空間に存在していた。本来ならば存在し得ない状態であるはずの所を神の力に支えられて生き残っていたのである。
「はぁ……大丈夫か?」
「はい。まだ何とか」
「そうか。無理するなよ」
「はい」
そこで生き残れているのは奇跡的だった。例え、神の力であったとしても次元の狭間という所はあらゆる力が荒れ狂い、打ち消し合う空間。それ故に真っ白な空間なのだから。
そんな空間に二人が何故この空間にいるかと言うととある神にこの空間に飛ばされてしまったからだ。そして、その極めて少ない残りの神力を使い、生き延びしている。神力がこの空間で有効に使えるのも驚きだが空気すらない次元の狭間で声を届かせ合うことができるのも驚きだ。
「ユーフェ様」
「何だユリア」
互いの名前を呼び合い、そして見つめ合う。そうしていると突然空間に穴が開いた。そして、少年の方が吸い込まれようとしていた。
「やっぱりユーフェ様が先に行かれるようですね」
「時間差で飛び込んでくれ。そしたら……今度は結婚しような」
「そうですね。期待しています。絶対ですよ?」
「ああ、例え生まれ変わってたとしても忘れない」
「ふふ、ユーフェ様ならあり得そうですね」
ユリアと呼ばれる少女は少年に笑いかけながら自らもその穴へと向かっていく。
この次元の狭間では様々な世界へと繋がる穴が時々開く。そして、同じ穴に飛び込んだとしても同じ世界に行く確率は物凄く低い。途中で横穴が開き、他の世界への穴が開く事が多々あるからだ。
少年はまるで確信しているかのように頷き、少女を見つめる。少女は名残惜しそうに少年を見つめる。そして、少年は穴の中へと消え、続いて少女もまた穴の中へと消えていってしまった。後には何も残らず、ただ生命体のいない真っ白な空間が広がっていた。
とある世界、とある森の中、一人の少年が忽然と姿を現した。その少年はまだまだ子供といった容姿でありながらどこか大人びた雰囲気がある。きょろきょろと自らがいる場所について探っている様子であったが、やがて少年は溜め息を一つつき、歩き始めた。
「さて、この世界はどんな世界なのかな?」
少年の言葉には誰も答えなかった。ただ風が一つ通り過ぎていっただけ。まるで、少年を歓迎するかのように追い風が吹き抜けていった。
これで終わりです。続編があるっぽく書きましたがないです。実は書こうとしましたけれど、書ける気がしなかったのは内緒です。
一応二人は幸せに暮らしたとだけ、思っていただけたら幸いです。
まぁ読者の皆様の想像力次第で結末はどうにでもなるんですけどね。ではでは、これにて。




