白は赤に染まる
その言い争いは城の中で行われていた。現状維持か改革か。そのどちらかで争っている。それぞれに正義があり、メリットがあり、デメリットがある。王は決断できずにいた。何故なら今の王は最も暗愚と言われ、優柔不断な男だと言われているからだ。
「だから、このまま我が国は多種族によって滅ぼされると言っている! 何故それが分からない!」
「多種族なぞ所詮は獣の血が混ざった生き物に過ぎぬ。我々人間に勝てるはずもないのだ」
両者の言い分はこうだ。多種族に恨みを買っているからそれらを清算し、新しい国作りを行うという集団。そして、今まで通り人が頂点であるべきと主張する集団。この二つが言い争って舌論を繰り広げている。
だが、それは一考に平行線を保ったまま、その日は会議が終わった。
次の日も、また次の日も平行線を保ったまま日が過ぎる。暗愚と呼ばれた王は決断しない。色に耽り、閉じこもったまま何も言わなくなった。大臣達は流石に焦り、王に意見を求めたがやはり王は何も言わなかった。
それから数日、ある事件が起こった。
「ねぇ君、ちょっといいかな?」
「なーにお姉ちゃん?」
「ちょっと死んでくれないかな?」
「へ?」
グシャリ。
その音は異様に辺りに鳴り響いた。女が少女を殺したのだ。剣を振り上げて、何度も何度も振り下ろした。少女が肉塊になるまで何度も剣を振り下ろした。
無垢なる少女が死んだにも関わらずその女は笑っていた。辺りから一つの声が響き渡る。
「現国派の連中の仕業だ! みんな逃げろ!」
そんな一言が争いを大きくした。もちろんそれは偶々第三者が争いの種になると思って言っただけの一言だった。だが、争いは激化してしまった。たったの一言で現国派と改革派による血と鉄による争いに変わってしまったのだ。口論から武力での論争に変わってしまった。
そして、それはユーフェリウスが二つ目の街と称して待ち合わせている場所でも始まろうとしていた。内乱が王都から他の町へと広がっていく。まさにその第一歩目がそこで繰り広げられようとしていた。
無垢なる少女が血に染まり倒れた。それはまるで白が赤に染まるように。
内乱は始まりを告げた。無垢なる少女を生け贄にして。
※※※※
空を飛び、何とかアースドレイクから逃げた俺達は町の前までたどり着いた。流石に門は閉まっているので入ることはできないのでここで野宿をすることに決めた。
結界を張り、ユリアがテントを張る。俺はその間ぼんやりと空を見上げていた。幾万以上も空に広がる星が輝いている。自分の姿を主張する為だけに輝いているのだ。それらは互いの光で見えなくなってしまう程だ。俺はただそんな空を見上げていた。そっと隣にユリアが座り込むのが分かった。少し寒そうにしていたので二人で死神の黒衣にくるまることにした。
「星を見ていたんですか?」
「ああ。あれだけある星も自分で光る奴と太陽の光を反射して光る奴がある」
「初めて知りました」
「そう言えば星についてはあんまり話してなかったかな? 俺もそんなに詳しい訳じゃないから話さなかったのもあるけどな」
「ユーフェ様でも苦手な物はあるんですね」
「いっぱいあるよ? 人なんてものは単純なようで複雑なんだよ」
俺の言葉に納得したようなしてないようなユリアをちらりと見てから再び空へと視線を向ける。無数に光る星達もまた生きている。それは人よりも長く永い時を越えて生きて光っているのだ。
「星にも寿命はあるんだよ。人よりもうん千年以上も生きてようやく死ぬんだ。人はそんなことも忘れて生きているんだよなぁ」
「ユーフェ様は時々よく分からないことを言いますね。特に意味がないように思えますが」
「そりゃあ意味なんてないよ。意味がないことも人には必要だってことさ。意味を求めて何でもやってると肩をこるぞユリア」
「何ですかそれは」
ユリアはおかしくなったのかふふと笑った。人には息抜きが必要な時もある。かくいう俺にも必要なものだ。殺伐とした世界で気を抜くのは自殺行為に等しいがそれでも必要なものだ。そんな瞬間をユリアのために作れたらなぁと俺は思っている。
「まぁ基本的に俺はユリアの為にしか動かないけどね」
「もっと自分のために動いてもいいと思いますけどね。ユーフェ様は」
「この旅がそうだからいいんだよ。後はユリアと幸せでいれるならそれだけで」
ただひたすらそう願う。ユリアを抱き寄せて俺は目を瞑った。
ぶっちゃけるとほとんど内乱関係ないです(笑)題名の通りになるようにエピソードを入れた感じですかね。作者は血に飢えてませんのであしからず。
個人的にはもっと流血表現のある作品が見たい所ですが最近のアニメなどは温すぎますね。いや、作者が異常なのかな?やっぱり血に飢えている?
それはともかく次章で最終章になります。作者の怠慢により最終章となりました。虚しい程の文章力のなさに泣けてきますがまぁそんなもんかなと諦めてます。修正力もないのでどこかいじる気にもなれませんのでね。
では、また。




