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魔法世界の魔術師  作者: 炎の人
王都編
27/62

エリクシル学園スキル科

 入学式が終わり、正式に寮住まいとなった俺達は随分と多くなって今では四人になっている。ベッド一つ奥だけで手狭になったが文句はない。やることと言えば魔力量を増やすための訓練とスキル取得の為の試行錯誤だ。体を動かす物は外でやればいいので問題はない。カレンは日中、レティに任せることになるがうまくやってくれる事だろう。

 そんなエリクシル学園スキル科は生徒が計五人だけしかいない廃科寸前のような状態だ。というのもスキル取得者に限ると公募を出した所をこれだけの数しか集まらなかったそうだ。俺とサラシェイスを除いて三人も集まったのだから僥倖と言うべきか。どれも学者然としているのであまり話すことはなさそうだ。

 そんな特殊なクラスにも一応先生は付くらしい。何と学園長直々に先生をやるという。あまり権力者に関わりたくはないのだがどうしてこうも関わりを持たざるを得なくなるのか分からない。


「ふむ、揃ってるようじゃな。ワシはエリクシル学園の学園長フェスラ・ウェザードじゃ。ここでは自由研究となっておる。在学中の三年間でできるだけ多くのスキルを見つけるまたは効果を検証してくれ。十万コルまでならば研究費として援助することに決まっておる。それでは各自はじめてくれ」


 自由研究となるとそれぞれで課題を見つけていく感じなのか。まだ立てたばかりで手探り状態という訳か。俺としても自由に報告を選べるという点では評価に値する。何か一つ報告すればいいのだから。

 サラシェイスもこんな物だと思っていたのか直ぐにこちらへとやってきた。学園長はそのまま教室から出て行ったので基本的にここは解放されていると見ていいな。


「ユーフェリウス、自分で作っておいて何ですが何をしましょうか」


「スキル科というだけあってスキルの事であれば何でもいいんだろ? サラシェイスは何のスキルを持ってるだ?」


「ユーフェリウスに言われた通りに取りましたけど、使い方がいまいち分かりません」


「スキルを使うことをイメージすれば使えると思うけど」


「あ、本当ですね。どうすればいいのかが分かるようになりました。ですがどの用途で使うかが分かりませんね」


「それは自分で考えた方が良さそうだな。まだユリアにも教えてないから隠蔽の使い方と一緒に考えておくといい。最初から俺が言うと固定概念が生まれるかもしれないからな」


「分かりました。では、行きましょうか」


 俺とサラシェイスは直ぐに教室を出た。スキルの中には魔力を使う物もあるので魔力探知で直ぐに分かる。あの中には聞き耳のスキルを持つ奴がいるみたいだ。盗聴対策もしっかりとしておかないといけないかもしれない。

 部屋に戻り、ユリア達と合流して俺はユリアにサラシェイスと隠蔽と偽装の使い方を考えるように言った。カレンは横になって寛いでいるのかと思ったが寝ているようだ。魔力が空になっているので魔力を増やす訓練でもしていたのだろうか。レティの姿もないのでどこかへ行っているのだろう。


「まぁそういう訳で俺はダンジョンに行ってくる」


「一人で大丈夫なのですか? この間の様子であれば心配はないとは思いますが」


「軽く一階層を回るだけだから大丈夫だ」


「……まぁいいですか。ユーフェ様、くれぐれもお気をつけて」


「そう心配するな。一人でなら全力が出せるからな」


 ユリアはまだ心配そうにしていたが俺はそのまま部屋を出た。

 俺の今回の目的は金策と新しいスキルの取得だ。金策はレティの為の小遣いと俺の小遣いだ。あまり欲しいものはないが食べ物は美味しいここでたくさん食べるためだ。

 新しいスキルの取得の方はこれから一人でもやっていける程の力量を付けるために必要なことだ。教官役にスキルを晒してしまったし、スキルを危険と宣ったせいで俺が危険人物扱いされるかもしれない。そうなると厄介事に巻き込まれる可能性もある。平穏な生活を目指す俺としてはそれが嫌な訳で、それならば力を見せ付けてしまえばいいと俺は考えた訳だ。単純ながらこれはいい策だ。

 今考えているのはユニークスキルの取得だ。どんなものを取得するかは考えていないが発現すれば儲け物程度で考えているので当分は今持っているスキルの強化くらいに考えている。


「まぁそういう訳で俺の糧になる?」


 考え事をしている間にもう刺客がやってきたようで俺はそちらへと視線をやる。ちょうど裏路地に来て良かった。黒装束に身を包んだ男達がぞろぞろとやってきた。ざっと十人程だ。


「サリュエル様の為に死んで貰おう」


「サリュエル? 誰だよそれ」


「問答無用!」


 剣を翳してこちらへと振り下ろす。俺はそれを身体強化を使いながら避ける。所詮十歳の体なのでこれを使わないと始まらない。ゴブリン程度ならばいらないのだが大人、それもその道の人となればまた別だ。剣の振り方、人の殺し方を身に染みて覚えている奴らに生半可な体裁きは通用しないからだ。

 俺は避けた隙に男の鳩尾に軽く手を当ててから呟いた。


「バースト」


【魔闘術を取得しました】


 男は衝撃に走り、そのまま壁へと激突する。俺はそれを見ながら男達を冷めた目で見つめる。確かに強い。だが、俺も技術はなくとも、それなりに強い自覚がある。魔術が使える分、俺の方が有利だ。やろうと思えば一瞬で片が付く。それをしないのはあくまでも見られないためだ。

 今の技は魔力を掌から放出するだけの簡単なものだ。どうやら魔闘術というスキルになったらしい。


「さぁこいよ。王子様は人望があるんだろ? 俺が死ぬかお前らが死ぬまで終わらないぞ?」


「くそっ、やれ! 囲めば終わりだ」


 一斉に襲いかかってくる男達を体術スキルでいなしながら一人一人に魔闘術を行使していく。腕が折れる者、足が砕ける者、顎が砕ける者、腹にくらい気絶する者、心臓にあたり悶絶死する者、様々だ。素人の喧嘩殺法よろしくグーで殴りつける。

 一人残らず返り討ちにするのにそう時間は掛からなかった。


「お前だけ生かしてやる。王子に伝えろ。次に送ってきたら次はお前を殺しにいくとな」


「ひ、ひぃ」


 最初に吹き飛ばした奴だけを残して残りは始末した。あまりいい気分ではないがやらないと俺がやられてしまう。死体は纏めて火葬にした。せめてもの手向けだ。

 あの愚王子は人を殺すことを何とも思っていないのだろう。俺の所に来るまでうまくいってたようだが人生うまくいかないこともあると教えてやる必要がありそうだ。俺が言うのもあれだがあれでは使われる方が可哀想だ。もし、今度来たならば手加減などせずに最初から殺す気でいくとしよう。


「ユーフェ兄、派手にやったね」


「見てたのか?」


「まぁね。ぼくもいずれやるかもしれないからね」


「そこまでお前に求めてないんだがな」


「ユーフェ兄はユリア姉とぼくを天秤に掛けられるの?」


「………………」


「まぁそういうことだよ。ぼくも家族が泣くのはあまり好きじゃないからね」


「殺人家族一家になりそうだな。レティは良かったのか」


「ぼく? まぁいいと思うよ。好き好んで殺りにいく訳じゃないからね。この世界では当たり前の事だし」


「一緒に来るかダンジョン」


「そうしようかな。ユーフェ兄がぼっちみたいだからね」


「うっせ、ほっとけ」


 ただレティの気遣いは有り難かった。俺は何も好き好んで殺しをしたい訳ではない。殺しに来る奴がいるから殺すのだ。それでもいずれユリアの身に危険が及ぶならレティにもその役を回すこともあるかもしれない。レティは俺のことをよく分かっている。そして、自分のこともよく分かっている。殺しに向いている能力を自分が得ていることも。

 ただ少しやるせない気持ちになった。自分のせいであるのにレティにも背負わせることに。


「こんな世界だから気にしない方がいいよユーフェ兄。ぼくはちゃんと現実を受け止めてる。大切な人が死ぬよりはその方がいいに決まってるから」


「ありがとう」


 ただ一言そう言った。レティは笑ってどういたしましてと答えた。

 甘えはいずれ自分の身に降りかかることになる。俺は後悔しないで生きると決めたのだ。今更辞めるなんてことは言えない。やりたくなければ回避すればいい。学園を卒業したら他の国へ行こう。そこでダンジョンで生計を立てながらのんびりと暮らせばいい。

 ユリアと二人ならどんな場所できっと幸せでレティとカレンがいるならそれだけで楽しく過ごせるはずなのだから。

 俺はレティと一緒にダンジョンへと向かうことにした。

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