プロローグ
如何にして俺が異世界に旅立つことになったのか、というきっかけ。
××××
「どうしようか。絶望的に暇だわ」
今こうやってダラダラしている時間がもったいないのは俺にも理解できる。
ただ、有効活用するのが難しいっていうか、面倒臭い、っていうか。俺ってダメ人間かな?
「いや、何か面白いことでもあればいいんだけど。」
「そうか、貴方は今暇なのか。」
とりあえず俺は、部屋に現れた銀髪赤目の凛とした女性に会釈した。
そして息をゆっくり吸い込み、
「ってお前誰だぁぁぁっ!」
と、今感じた疑問を吐き出した。
「何を言っている。貴方は私のパートナーだろう?」
そっちこそ何を言っているんだ。彼女は一体何者なんだよ。
「いや、いきなり何だよ。俺はお前と会ったことすらないけど。」
「ああ、そうか。そういえばそうだったな。」
訳が分からない。
俺とお前は「初めまして」の関係だろう?
そして理解に苦しむ俺を置いて、話は進んでいく。
「…簡潔に言おう。」
そして少しの沈黙の後、
「私の世界を救ってくれないか。」
と、彼女は言った。
あまりにも突拍子もない話だ。俺が内容を理解したと勘違いしたのか、彼女は俺の手をさぞ嬉しそうに握った。
「ちょ、ちょっと待て。あまりにも急過ぎて分からないことだらけだ。」
「む、質問でもあるのか?」
「無い訳ないだろ。」
すると彼女は床に腰を降ろし、足を曲げて座った。そして俺にも座るよう促してきた。
これから長い話になりそうだ、と俺は思った。
「えーと、じゃあ、まずお前の名前を教えてくれ。」
「リーフトルクス=ライカル=アリスだ。」
「り、リーフ…?」
「アリスで良い。他に質問はないか?」
実は俺は人の名前を三文字以上覚えられなかったりする。
「んー、アリスは何処に住んでるんだ?」
「ルリディア帝国だ。私はそこの騎士団に所属している。」
「んー、聞き慣れない国だな。調べてみるか」
「いや、多分貴方達の世界には存在しない。」
「ん?どういうことだ?」
「私たちの住んでいる世界と貴方達の住んでいる世界は横に並んでいるが、決して交わることはない。パラレルワールド、と呼ばれているらしいが。」
要するに、異世界ってことか。
「じゃあ最後の質問だけど、何をすればいいんだ?俺じゃないと駄目なのか?」
すると彼女は強い意志を感じさせるような凛とした顔になり、
「何をすればいいのか、は実際に見てみないと説明がしづらい。すまない。」
「ただ、貴方でないと駄目なのだ。頼む、力を貸して欲しい。」
普段の俺ならこんな面倒臭いことは断るだろう。
しかし、彼女のあまりにも真剣で、切実な頼みを断ることは俺には出来なかった。
「分かったよ。俺に出来る範囲なら力を貸すよ。」
「そうか、ありがとう。」
改めて彼女をよく見ると、騎士が好んで着そうな紅い軍服を着ていた。
金の布でできた肩当て、金の刺繍、そしてバッジのようなものが彼女の身分の高さを感じさせる。
髪は綺麗な銀髪で、後ろで小さく纏めていた。前から見ると肩までのショートに見える。
率直に考えると、とてもクールビューティーな女性である。
背は165cmくらいだろうか。俺の肩にあと少し届かない、というくらいだ。
「私の顔に何か付いているか?」
「いや、何でもない。」
「ならばそろそろ行くか、恭弥」
「…⁉」
恭弥は確かに俺の下の名前だ。ただ、何故アリスが知っている?
「何故…俺の名前を?」
すると彼女は微笑み、
「いつか分かるときが来るだろう。」
その微笑みを見た瞬間だった。
何かよく分からない、昔の記憶のようなものが蘇った。
…アリスと俺が、親しげに談笑する姿だった。
「だ、大丈夫か!」
「ん…?」
どうやら俺は気を失っていたようだ。
「恭弥、薬だ。これを飲め。」
アリスから手渡された錠剤を俺は素早く飲み込む。
「恭弥、無理はしないでくれ。もう少し休むか?」
「いや、いい。早く行こう」
若干足はふらつくが、別に大したことではない。
それを聞いて不安そうな顔をアリスは浮かべたが、すぐによく分からない呪文の詠唱を始めた。
そうして、俺は異世界へ旅立った。
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駄文ですが、読んでくださってありがとうございました。