続・けも耳っ!!
前作は見なくても行ける……ハズです←
見た方が楽しいかもです
この世界は、いわゆる異世界。
住民皆が獣耳と尻尾を持っており、その種類は沢山ある。更に感性なんかもう完璧獣だろ? と疑う要素がありまくっている。
そんな国は、王を決めるルールがなんとも適当だ。『王になるには“餌”と呼ばれる少女の唇に噛み付く事』――。
これは、今回の“餌”に選ばれてしまった少女(猫)と、彼女を狙う少年(狼)、そして彼女の味方らしき者達(猫、兎、犬)の獣語である――。
☆ ☆ ☆
「朱……服を着ろーっ!」
「るせーなブス。俺はこれが好きなんだよ」
「ただの変態じゃないかっ! だいたい何で服を脱ぐ必要がある!?」
「着りゃぁいいんだろ着りゃぁ」
渋々、といったようにYシャツを手にしたシュウ。彼の頭の、赤がかった茶色い猫耳が不機嫌そうにピクピクと揺れる。
あたしの名前は蒼。つい最近まで普通の女子高生だった、今回の“餌”だ。数日前、ベランダから迷子のロシアンブルーと共に落っこちてしまい、気が付いたら蒼がかった灰色の耳と同色の尻尾をはやしていた。そこで王子の黒に、明日のお披露目会で唇に噛み付くといわれて、死ぬ気で逃げてきた。その時に見つけたのが森の奥に建っているシュウ達の家。
そこに匿ってもらい、あたしの唇はまだ誰にも噛み付かれていない。
「……おいブス。着替え終わったぞこっち向け。後、もう白と黄々が帰ってくると思う、」
がこっ。
シュウが全部言い終わる前に、家の扉が壊れた。蝶番が外れ、最早ただの板と化している扉の上に、一人の犬がのしりと乗っかった。
「帰ったぜアオ、シュウ!」
爽やかにへへっと笑い、抱えた紙袋を誇らしげに見せてくる犬――キキ。白いYシャツの下に黄色いタンクトップを着て、裾は折っている。デニムのパンツにブーツ。そして、ピクピクと楽しげに揺れる、黄色がかった薄橙の垂れた犬耳、先端がくるりとカーブしたふわふわの尻尾。
言わば柴犬の彼は、とてもめんどくさがりで何かと言うと破壊する。シュウの露出癖と同じようなものだ。破壊癖。
「……キキ……また扉壊したわね……」
「あ? ああ本当だ壊れてる。不思議だなぁ、何で壊しちゃうんだろう?」
心底不思議そうに首をこてりと傾げる。可愛らしい動作なんだけど、身長180は超えている大男がやっても無駄な気がする。
「そう言えば、ハクは?」
「ああ、あいつなら外」
壊れた扉を踏み潰しながら中に入ってくるキキ。
「外? 何で?」
「茶々がいるってよ」
チャチャ。
思わず体を固くしたとき、キキが頭に手を乗せてきた。びっくりして顔を見ると、安心しろって! と笑いかけてくる。
チャチャはハクの弟で、お城の栗鼠。言わばクロの手下。そんな彼が来るなんて、悪い予感しかしない。
「……アオ」
窓の方から声がして振り向くと、半分だけ折れた白い兎耳がぴょこりと現れた。
「ハク。……と、チャチャ……」
「ハロー姫様。元気だった?」
茶色い栗鼠耳と同時に、チャチャの可愛い系の顔が見えた。背後には心配そうなハクの姿。
「……何の用?」
「嫌だなぁ、そんな体固くしないでよ。今日はプレゼントを持ってきたのに」
にや、と笑って手に持った首輪をあたしに差し出した。……何これ。
「首輪?」
「そ。その首輪が誰に唇を噛まれたか判断する。付けてごらん」
そうは言われても、ゴツい、本当の首輪って感じの物付けれないって。しかもチャチャに貰ったものだし。
渋っていると、いつの間にか手から首輪が消え、首に何か違和感。
「あ、アオ……」
ハクの声で気が付く。あたしの首に首輪がはめられているのを。
「っな、」
取ろうと無理に引っ張ると、ぎゅうっと輪っかが縮んで……、
かくり。
「おわーっ!? アオ!?」
「無闇に取ろうとすると絞まるからね。自殺したいんなら止めないけど」
し、しないだろ!
反論しようにも声が出ない。ヤバい、意識飛ぶ……。
「……まあ頑張ってよ。因みに誰かを王にしないと君は元の世界に戻れないからね。じゃ、アディオス」
急にふ、と力が緩む。
「アオ、大丈夫か?」
だ、大丈夫だからキキ、体を凄い勢いで揺らさないでくれる……? 泡吹くから…………。
「にしても、やっかいなことになったな……」
「僕のせいで……ごめんなさい……」
「ハクは気にすんな」
「それあたしのセリフじゃない!?」
でも、と言ってシュウが首輪に触れた。
「頑張れよ」
「え、何でそんな他人主義!?」
首輪にはご用心。
前作、「けも耳っ!!」から来ていただいたお客様、ありがとうございます^^
新キャラ登場でしたが、いかがだったででしょうか?
好きなキャラなど、是非教えて下さい!