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日常と平和と幻想の崩壊

まったく、新年になるというだけなのになぜ人々はあんなにも舞い上がっているんだ。

TVからは特番やら新年までのカウントダウンやら紅白やら新年に向かっての人々の祭り騒ぎが伝わってきた。

年数が変わるだけで特に何かあるってわけでもないのに・・・何がめでたいんだか・・・特に自分にとって何かめでたいことがあるわけでもないじゃないか・・・俺には理解ができない・・・

俺の家族も新年が近づくとめでたいとばかりに豪華な料理を作り、酒を飲んで祭り騒ぎ。うまいもの食えるのは新年も悪くないかも・・・と少し俺は納得してしまった。

そして新年に向かってのカウントダウンが残り10秒をきったことをTVが伝える。

「それではみなさん!新年のカウントダウンもそろそろ10秒をきります!あと10・・・9・・・8・・・」

東京からの生中継でTVアナウンサーが数を数えていく。

「4・・・3・・・」

数が進むたびに新年を迎えまつ人々のテンションも頂点にまで近づいてゆきアナウンサーの後ろで声を跳ね上げる。

「2・・・1・・・!!」

その時だった。もう後1秒いつもの1秒よりは遅く感じられる1秒その1秒は迎えられることは無くなった。

夜中の東京、電気の明るさによりその夜はかきけされていたが、その明るさを越える閃光のようなものが突如あらわれ、TVの画面は真っ白に輝いた。

俺は最初それがTVのくどい演出だと思っていた。

画面からの強烈な光に目をくらませた俺は目を閉じた。そして光が消え、目を閉じていても伝わる明るさも徐々になくなり、少しTVも演出が過ぎるのではないのかと思いながら目を開きTV画面を見た瞬間、そこはもはや俺の知っている東京ではない光景になっていた。

ビルは崩れ光を放っていた街灯もわずかな光を放出して倒れこんでいた。そしてそのわずかな光が消えるまでの瞬間に俺は見た。

先ほどまでまつり騒ぎをしていたアナウンサーや何千人もの人は形を変え、バラバラに吹き飛んだ死体と血の海になっていた。そしてその姿も光が消えたと同時に見えなくなりTVも放送が数秒後停止した。

俺と両親は言葉を交わす事もできず、視線のみで困惑を表現していた。

無言で俺はチャンネルを変えていた。しかしどのチャンネルも”ザザー”という機械音のみが聞こえ、画面は白と黒の点滅が激しい画面だった。

そして俺は思った、さっきの出来事が俺の望んでいた何かだというのか、もっとなにか楽しい事ではないのか、空が飛べるような世界に変わる出来事だったり、突如天使が舞い降りてきて日常が楽しいことだらけにかわるようなものではないのか、俺はそんな期待をしていたのにこれではまるで世界が破滅してしまう漫画の内容の光景そっくりじゃないか・・・

確かに俺はこの退屈な世界など消えてしまえばいいなんて考えていた。しかし、大量の死体、血の海、変わり果てた東京の姿、これを一瞬といえど見た瞬間そんな考えはなんてバカバカしいんだと感じてしまった。

あんなに退屈だと思っていた日常は、実は平和というとても厳しい条件でなければすごせない日常だということをあの一瞬だけで俺は感じた。その平和な日常という世界はどれほど素晴らしいものだったのかですら。

そして俺はいきなり背筋も凍る恐怖と不安に激しく襲われた。なぜなら、外から大きな爆発音のようなものが聞こえたからだ。

この音量から感じられたことは二つあった。それはかなり近いということ、それと東京だけではなく関東ほぼ全域にあの絶望の光景が広がることが本能かわからないが感じられた。

やばい・・・早く逃げなければ・・・確実に死ぬ・・・家族と供にどこか遠くへい逃げるか・・・?だがどこへ行けばいいのだ・・・

いや、冷静になれ・・・まず東京で何が起こったのかすらわからない・・・爆発のようなものなのは感じた、あの光も爆発の光なのか・・・爆風も光も当たらないようなところ・・・そうだ・・・どこかの地下へ避難するしか・・・

数分前まで死ぬことを望んでいた俺は生き延びることを最優先に考えていた。

だが生き延びる方法を必死に考えていたことも結局はもう遅く無駄な行為だった。

絶望は・・・俺の元へたどり着いた。

大きな爆発音がまた聞こえた瞬間俺はまぶしい閃光と供に意識を失った・・・


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