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十字軍の話  作者: 龍閣
3/10

1話目「これ、チャンスじゃね?」

「あの……もう限界です……イスラム勢力にボコボコにされてます!」

「助けてください……お願いします……」


このビザンツ皇帝からの情けないSOSを受け取ったのが、当時のローマ教皇、ウルバン二世。


当時、キリスト教世界の東側に大国がありました。

ビザンツ帝国。


この帝国、キリスト教国家であり、同時にギリシア正教会の総本山。

要するに、キリスト教界の東の大御所です。


ところがこの帝国、イスラム勢力の拡大によって、豊かな土地を奪われ、

重要な都市を失い、国力はジワジワ削られる一方。


要するに、いじめられて、だいぶキツい。


そして、ついに聖地 エルサレム がイスラム教の手に落ちました。


ギリシア正教会の長でもあるビザンツ皇帝は、もう我慢できません。


「聖地を取り戻す。これは神の意志だ!」


自ら軍を率いて遠征を行い、帝国を立て直そうと必死にあがきましたが、最終的にはついに西のローマに泣きつきます。


さて、ローマ教皇はどうしたか。


普通なら「わかった、援軍を送ろう」となるところですが。


ウルバン二世は違いました。


彼はこう考えます。


「……これ、チャンスじゃね?」


単なる援軍要請ではなく、自分の影響力を一気に拡大する絶好の機会として、このSOSを使うことにしたのです。


1095年 、フランスの小さな都市(現在30万都市)クレルモン、ウルバン二世は、集まった人々に向かって語りかけます。


「私たちクリスチャンはみんな同胞である!東の友人(ビザンツ帝国)が助けを求めてきている。今こそ我々の兄弟たちに手を差し伸べるべきだ!」


ウルバン二世はここで、声を高めて、


「これは私の言葉ではない、神の言葉だ!神が、そう求めているのだ。」


そして、叫ぶ。


「デウス・ウルト!|《Deus vult!》(神がそれを望んでいる!)」


会場の空気が一変した!


貴族も、騎士も、農民も、みんな熱狂。

群衆はまるでサッカースタジアムのファンのように叫び始めます。


「デウス・ウルト!」

「デウス・ウルト!」

「デウス・ウルト!」


農民の一人が叫びます。


「オラたちが行くべ!聖地を取り戻すだ!」


……いや、あんたさっきまで畑の話してた人でしょ?


この日、聖なる巡礼に参加すると誓った者たちは、服の前と後ろに赤い十字を縫いつけるよう命じられます。


「この十字架を身につけよ。お前たちは神の戦士だ」


これが、「十字軍」という名前の由来でした。


見た目は巡礼者、頭脳は戦士、その名は十字軍!


ただし、「やる気」だけでは人は増えません。


もっと多くの人を奮い立たせるために、教会はちゃんとマーケティングの宣伝文句を作りました。


十字軍・参加の飴と鞭

【募集期間:エルサレム奪還まで】


ただいま十字軍参加者キャンペーン絶賛募集中、今すぐお近くの教会へ!

1)十字軍に参加すれば、罪は免罪

窃盗も殺しも含めて、全部チャラ。天国行きチケット確定。


2)病気や体が弱くて行けない者は、

  参加者に献金すること。金で解決。


3)出発者が残した資産は、

  教会が責任を持って管理。安心のアフターサービス。


4)資産を売る必要がある場合、

  教会が正当な取引になるよう仲介。不動産屋も兼ねてます。


5)参加したい者は、

  近場の教会でライセンス取得。ちゃんと手続きしてね。


6)十字架に誓ったのに出発しない、

 またはすぐ引き返した者は――

  即、キリスト教から破門。地獄行き確定。


……はい。


一度、誓ったら、もう後戻りできません。


天国行きか、破門か。


歴史的なキャンペーン、ここに始まりました。


しかし、この熱狂が最初に生んだのは、英雄ではなくただの『烏合の衆』でした。


つづく。



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