10話目 「十字軍の007とロンギヌスの槍」
海を渡ってきた援助船。
それは、
十字軍にとっての神パッチだった。
食料、大量。
兵士たちのHP、満タン復活。
「うおおお!パンだ!」
「肉だ!」
歓喜。
さらに、船には――
大量の木材が積まれていた。
十字軍は木材を使い、
城攻め用の塔を三基、急ピッチで組み上げた。
この塔、
攻城塔 という。
「城壁よりちょっと高い、動く木の要塞」 だ。
中は階層構造。
下で兵士が押し、
上には弓兵、
最上階には
城壁に引っ掛けるための橋。
これを「ガコン」、と城壁に渡せば、
兵士がそのまま壁の上に流れ込める。
古代・中世の城攻めでは、必須装備。
(わからない人は、映画
「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」を見てね。)
兵士たちは思った。
「HPも回復した」
「道具も揃った」
「いよいよ本領発揮だ」
「さあ、ボスを倒しに行くぞ!」
だがこのタイミングで
新イベント、強制発生!
「報告ー!!
東より、トルコの大軍が接近中です!」
「……!?」
その場の空気が、一気に凍りついた。
来たのは、近隣都市アリッポの軍ではない。
さらに東――モスール。
その太守、ケルボガが、
モスールの大軍を率いてこちらへ進軍してきていたのだ。
諸侯たちがざわつく。
「やばい……」
「奴らが来たら、完全に不利だぞ」
「一刻も早く、アンティオキアを落とさないと……」
緊急会議、再開。
今まで出番がなかった
ブロア伯エティエンヌが、
耐えきれず叫んだ。
「うおお〜い!!
聞いたかよ!?
トルコの大軍が来てるんだって!?」
「……」
「もう帰ろうよ!」
「俺たち十分やったって!」
「やっと餓死から助かったんだぞ!?」
「今さら大軍とか、絶対ムリだって!!」
「……」
「オレ、帰るからな!?
いいな? いいな!?」
諸侯たち
「……ああ」
こうしてエティエンヌは、
ここでヨーロッパへ帰還。
諸侯達は止める素振りも見せなかった。
あまり役に立った人では無いらしい。
「……さて」
エティエンヌが去ったあと。
ボエモンドが、
静かに口を開いた。
「実は――もう一つ、手を打っている」
皆が顔を上げた。
実はボエモンド、
包囲戦が長引くと読んだ時点で、
「外からの攻略は厳しい」と判断していた。
そこで彼は、
アンティオキア内部に十字軍の007(スパイ)を送り込んでいた。
しかも。
城内の兵隊長クラスと、
「あと一息で交渉成立」
というところまで来ている。
交渉が成立すれば
内側から門が開く。
そうなれば
梯子も、塔も、血みどろの消耗戦もいらない。
城攻めフェーズ、チートで攻略。
諸侯たち
「門が開くのが先か」
「モスール軍が来るのが先か」
「……賭けだな」
一方その頃、エデッサ。
トルコ軍は、
すでにエデッサの前まで到達していた。
だがそこには、
今やエデッサ伯となった
ボードゥアンがいる。
兵力差は、数倍以上。
それでも彼は、
守りに徹した。
城の防御力を最大限に活かし、
ひたすら耐える。
この防衛戦が、約3週間続く。
この時間稼ぎが――
十字軍本軍にとって、
決定的な猶予となった。
ある夜。
スパイとの交渉が、
ついに成立。
城門が――
内側から開く。
静かに。
確実に。
十字軍の大軍が、
一気に流れ込む。
激戦。
そして――
一夜にして、アンティオキア陥落。
しかし、喜ぶ暇はなかった
この知らせを聞いたモスール軍。
「ここは後回しだ!」
エデッサを迂回して
アンティオキアへ進軍。
十字軍がまだ勝利に酔っているうちに、
自分たちが包囲される側になった。
「マジかよ……
もう来てるじゃん……」
「アンティオキアは難攻不落だし、
まあ大丈夫だろ?」
……と思った?
実は。
十字軍、
城内の食料を燃やしていた。
……え?
君たち、
数日前まで草と木の皮食べてなかった?
そう。
アンティオキアに雪崩れ込んだ兵士たち、
戦闘ハイの中、ノリで食糧庫、全焼…
外は敵だらけ。
中はまたもや空腹。
兵士の戦意、すっからかん。
そして、奇跡を求め始める。
「主よ助けてください!」
その時。
農民巡礼者の一人
ペテロ・バルトロマイ
(英語ではピーター・バーソロミュー)
が言い出す。
「僕は夢を見た!」
「この地に――
聖なる槍が埋まっていると告げられた」
ざわつく一同!
「あの、キリストを貫いた槍!?」
「それがあれば、勝てる!!」
「初号機《初号機》が使徒を倒すやつみたいに!?」
こうして十字軍は、
最強装備ロンギヌスの槍を探し回した。
つづく




