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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第7話 形になる場所

 朝の光が、家の影を地面に落としていた。


 ユウトはその影をぼんやりと眺めてから、周囲を見渡す。

 畑は家の東側。

 井戸は少し離れた南寄り。

 焚き火跡は、その中間。


「……ちょっと、散らばってるな」


 生活そのものは成立している。

 だが、動くたびに無駄が多いことにも、気づき始めていた。


 水を汲んで、家に戻り、また畑へ。

 距離は大したことがないが、毎日となると違ってくる。


「暮らすってのは、こういうのを詰めていくことか」


 誰に言うでもなく、そう呟く。


 ユウトは地面に枝で線を引き、簡単な配置図を描き始めた。

 家。

 畑。

 井戸。

 そして、これから増えるであろうもの。


「倉庫は……ここだな」


 食料や道具を置く場所が必要になる。

 今は家の隅で済んでいるが、長くはもたない。


 さらに、目を細める。


「……人が増えたら」


 まだ、具体的な予定はない。

 だが、想像すること自体は、悪くなかった。


 家がもう一軒。

 畑が広がり、通り道ができる。

 焚き火が、みんなで囲める場所になる。


 その光景を思い浮かべてから、ユウトは小さく首を振った。


「いや、今はまだ早い」


 まずは、自分の動線を整える。


 午前中は、家と畑を結ぶ道を踏み固める作業に充てた。

 石を拾い、ぬかるみやすい場所を避ける。

 ほんの少しの工夫で、歩きやすさが段違いになる。


 昼前、畑に立ち、芽の様子を確認する。

 昨日より、ほんのわずかに伸びている気がした。


「……気のせいじゃない、な」


 土に触れ、状態を確かめる。

 水分は足りている。

 問題はない。


 午後は、倉庫予定地の整地を始めた。

 家の北側、風を防げる位置。

 能力で地面を軽く整え、石をどける。


「全部を一気には、やらない」


 作業量を抑えるのも、今の自分には大事だった。


 夕方、家の前に立ち、改めて周囲を見渡す。


 畑、井戸、家、そして倉庫予定地。

 それぞれが、意味を持ってそこにある。


 昨日までは、ただの作業の集合体だった。

 だが今は――


「……場所、だな」


 ここは、作業場でも、仮の野営地でもない。

 自分が戻り、動き、考えるための拠点だ。


 遠くの森に、ふと視線を向ける。

 風に揺れる木々の向こう。

 人が通ったような、気配。


「……気のせい、か?」


 しばらく見つめたが、何も動かない。

 獣かもしれないし、ただの錯覚かもしれない。


 だが、その存在は、頭の片隅に残った。


 夜。

 焚き火の前で、ユウトは今日描いた配置図を思い返す。


 ここに、家が増えたら。

 ここに、人が集まったら。


 それは、もう「一人の生活」ではない。


「……続けるなら、考えなきゃな」


 静かに、そう呟く。


 今は、まだ一人。

 だが、この場所は、確実に“増える余地”を持っていた。


 荒れ地は、少しずつ。

 だが確かに、「形になる場所」へと変わり始めていた。


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