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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第60話 余白

 朝の火は、いつも少し弱い。


 夜の薪が灰になり、

 新しい枝を足す前の静かな時間。


 ユウトは火を見ていた。


 ロウが鍋を置く。


「今日も普通ですね」


「普通だ」


 エリナは畑に向かう。


「土は同じ」


 ミルナは森の縁に立つ。


「……道、静か」


 リオルは紙を見ている。


 そこには、これまで書かれた文字。


 ――生活を削るな

 ――止まれなくなるな

 ――囲うな


 その下に、セイの字。


 ――分けるは、削るではない


 さらに一行。


 ――余白の村は、選べる村である


 セイは焚き火のそばに座っている。


 昨日と同じ場所。


 だが、今日は少しだけ違う顔。


「ここさ」


 ぽつりと言う。


「何の村?」


 ロウが笑う。


「昨日も聞きましたよ」


「でも、もう一回」


 セイは火を見る。


 ユウトが答える。


「選べる村」


 セイは少し考える。


「じゃあ」


 一拍。


「出ていってもいい?」


「いい」


「残ってもいい?」


「いい」


「怒られない?」


 ロウが笑う。


「削れば怒られます」


 セイも少し笑う。


 火が揺れる。


「今日は」


 セイは言う。


「残る」


 ユウトは頷く。


「そうか」


「明日は?」


「明日決める」


 エリナが畑から言う。


「それでいい」


 ミルナが森を見る。


「……道、ある」


 リオルは紙を整える。


「書いておこうか」


「何を」


 リオルは少し考えて書く。


 ――余白は、空きではない


 一拍。


 さらに書く。


 ――選ぶために残された場所である


 ユウトは止めなかった。


 焚き火が静かに燃える。


 この村は大きくならない。


 壁も作らない。


 人を縛らない。


 ただ、ここにある。


 道の途中に。


 畑の隣に。


 焚き火のそばに。


 選ぶための場所として。


 風が余白の区画を通る。


 そこには何も植えられていない。


 だが、その空間があるから、


 この村は詰まらない。


 火は今日も燃えている。


 囲いではない光として。


 そしてその火のそばで、


 人は今日を選ぶ。


 明日は、また明日選ぶ。


 余白の村は、

 ただそこにあり続ける。


 選べる場所として。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。


この物語は、

「強い主人公が世界を変える話」ではありません。


村が大きくなるわけでも、

王国を作るわけでも、

戦争に勝つわけでもありません。


ただ一つの問いから始まりました。


「人はどこまで自由に生きられるのか」


この物語の村は、

守らない村です。

縛らない村です。

引き止めない村です。


その代わりに残したものが、

**“余白”**でした。


余白は、空きではありません。

余白は、無駄でもありません。


選ぶための場所です。


残ることも、

去ることも、

分けることも、

やめることも。


誰かに決められるのではなく、

自分で選べる。


そんな場所があったらいいな、という思いから

この物語は生まれました。


ユウトたちは特別な英雄ではありません。

でも、彼らは一つのことだけ守り続けました。


「削らない」

「止まれる」

「囲わない」


それだけです。


そして最後に残った言葉が


「選べる村」


でした。


この物語はここで終わりますが、

余白の村は終わりません。


セイはまた旅に出るかもしれません。

南の集まりも変わっていくでしょう。

また別の誰かが火を見つけるかもしれません。


でも、どこかで誰かが


「今日は残る」

「明日決める」


そう言える場所があったら、

それだけで少しだけ世界は軽くなる気がします。


もしこの物語を読んで


「こんな場所があったらいいな」


と思っていただけたなら、

作者としてこれ以上うれしいことはありません。


最後までお付き合いいただき、

本当にありがとうございました。


またどこかの物語でお会いできたらうれしいです。

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