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追放された生活設計士、何もない辺境で村づくりを始めます 〜ひとりで始めたはずが、気づけば人が増えていた〜  作者: 結城ヒナ


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第59話 戻る足

 夕方だった。


 空が少し赤くなり、焚き火の火がよく見える時間。


 ミルナが森の縁で言った。


「……足」


 ロウが顔を上げる。


「通行者ですか?」


 ミルナは首を振る。


「……小さい」


 数秒後、道の向こうに影が見えた。


 走ってはいない。

 急いでもいない。


 ただ、まっすぐ歩いてくる。


 ロウが小さく笑う。


「早かったですね」


 セイだった。


 土のついた足で、焚き火の前まで来る。


「ただいま」


 ロウは答える。


「おかえり……でいいんですかね」


 セイは少し考えてから言う。


「うん」


 エリナが聞く。


「南は」


 セイは火を見つめる。


「残ってた」


「どうなってる」


「小さくなった」


 一拍。


「でも回ってた」


 ユウトは何も言わない。


 セイは続ける。


「来る人は少ない」


「でも」


「出ていく道がある」


 リオルが少し笑う。


「似てきた?」


 セイは頷く。


「うん」


 焚き火が小さく弾ける。


「でも違う」


 エリナが問う。


「何が」


 セイは少し考える。


「向こうは」


「守ろうとしてる」


「ここは?」


 セイは火を見る。


 一拍。


「選ばせてる」


 ロウが小さく笑う。


「いい違いですね」


 セイは水を飲む。


 そして言う。


「少し手伝ってきた」


「何を」


「分け方」


 リオルが驚く。


「教えた?」


 セイは首を振る。


「見せただけ」


 ユウトは初めて口を開く。


「それでいい」


 セイは焚き火のそばに座る。


 少し疲れている顔。


「今日は?」


 ロウが聞く。


 セイは答える。


「今日は残る」


 誰も驚かない。


 誰も喜びすぎない。


 ただ受け止める。


 ユウトが火に枝を足す。


「明日は?」


 セイは肩をすくめる。


「明日決める」


 ロウが笑う。


「この村らしい」


 夜風が余白の区画を通る。


 セイはその空間を見る。


「ここ、好き」


 エリナが言う。


「余地」


 ミルナが短く言う。


「……軽い」


 リオルは紙を見る。


 そこには書いてある。


 ――余白の村は、選べる村である


 セイは火に手をかざす。


 火は囲いではない。


 ただ、そこにある光だ。


 そして、その光のそばで、


 セイは今日は残ると決めた。

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